電通メディアイノベーションラボが類型化する30の「メディアライフスタイル」。これにより何が見えてくるのか。担当者に聞いた。
電通のメディア部門におけるシンクタンクチームである電通メディアイノベーションラボは、ビデオリサーチと共同で、生活者のメディア視・聴・読習慣を可視化した30の「メディアライフスタイル(メディア接触習慣)」を発表した(関連記事:現代人の30のメディアライフスタイルとは?――電通調査)。
昨今、スマートフォンなどのデバイスとそれを活用したさまざまな新興メディアが台頭したのに伴い、生活者の行動が多様化したといわれる。そのこと自体に異論はないだろうが、具体的にどう多様化しているのか、確かな根拠を持って説明できる人は少ないのではないだろうか。
「多様化の中身を理解しようと思ったら、それを立証するためのデータと手法の両方がなければいけない」(電通メディアイノベーションラボ メディアイノベーション研究部 部長 美和 晃氏)という課題意識から、この分類は生まれた。
世の中にはどのようなメディアライフスタイルがあり、そこに当てはまる人がそれぞれどのくらいいるのか。それを把握するために、美和氏がたどり着いたのが「ソーシャル・シークエンス分析」と呼ばれる統計解析手法だった。
これは1980年代にシカゴ大の研究グループが生物化学から社会科学に応用した手法であり、生物の細胞内にあるDNAの塩基配列、いわゆるゲノム解析に用いるシークエンス分析を、社会科学に応用したものだ。欧米では2010年頃からシークエンス分析に関する国際カンファレンスが開かれ始め、盛り上がりを見せているが、日本では現状ほとんど研究が進んでいないと美和氏は語る。
分析に活用するデータは、ビデオリサーチの生活者行動調査データベース「MCR/ex」から持ってくることにした。MCR/exは特定の1週間の基本的な生活行動とメディア接触行動について、日記形式で記録したもの。この調査は1997年から毎年行われている。全国7都市(東京、大阪、名古屋、札幌、仙台、広島、福岡)において合計1万人以上のサンプルがあるが、今回の分類で利用したのは2017年度の東京50キロ圏に住む12〜69歳の男女4971サンプルだ。
シークエンスとは、連なったデータを意味する。MCR/exに記録される情報は100近くの項目の中から選択され、時間軸に沿って15分単位で蓄積されている。これを基に、生活者一人一人のシークエンスデータを作成することによって、メディア接触の多様性の中身が明らかになるというのだ。
「もともとゲノム解析に用いられるものですから、非常に精度が高い。精度が高いということは、データを細かく分類したとしても、ちゃんとしたライフスタイルが描けるということです。よく用いられるクラスター分析であれば7グループくらいにしか分類できませんが、今回はソーシャル・シークエンス分析の精度を生かし、30のメディアライフスタイルにまで分類が可能になりました」(美和氏)
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