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» 2017年05月09日 07時00分 公開

コンテクストマーケティングにおける3つの課題【連載】コンテクストマーケティング序論 第4回(2/2 ページ)

[原水真一,サイトコア]
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「技術」「洞察」「コンテンツ」

 過去の行動履歴や現在のニーズを総合的に把握、理解しながら、適切な瞬間に適切な場所で、適切な顧客へ適切なコンテンツを提供することで体験(エクスペリエンスそのもの)を演出すること――「コンテクストマーケティング」に関して、当社サイトコアではこのように紹介しています。

 これを実現するためには、Webサイトのアナリティクスツールからユーザーの履歴を残す仕組みを構築(Cookieベースで行動履歴を管理)し、コンバージョンをひも付ける仕組みを持った基盤を用意する必要があります。つまり、Webプラットフォームです。このWebプラットフォームにはこれ以外にも、メールとの連携やCRM連携(顧客データのマスターとして運用)など、さまざまなニーズに応えることが求められます。

 コンテクストマーケティングを実践できる環境を構築する上では、主に3つの課題が出てきます。「技術的な課題」と「洞察の課題」、そして「コンテンツの課題」です。

 まず、「技術的な課題」とはどのようなものでしょうか。ほとんどのWebサイトでは、アナリティクスツールを入れてどれくらいの訪問者がどのページをどれくらい見ているのかを分析していると思います。しかし、この方法では全体の傾向を分析することはできても、個別のセグメントを追いかけるのは難しいはずです。

 ここで、コンビニエンスストアのことを想像してみてください。ご存じの方も多いと思いますが、コンビニのレジでは1つ1つの買い物行動について、店員の手入力でお客さまの性別や見た目の年齢などの項目を取得しています。これにより、どの世代の人が何を買っているのかを分析することができるからです。しかし、もっと精度の高い分析、例えば実年齢や居住地域、過去に買ったものや訪れた日時などを把握したいとなると、ポイントカードなどを利用してもらい、そこからユーザーの個別の履歴を取らなければなりません。

 これをWebサイトに置き換えると、ポイントカードに当たるのがユーザーのアカウント(登録情報)であり、店員が手入力で推定する匿名のお客さま情報がCookieということになります。これらを利用して訪問者の行動履歴を取得するための仕組み作り、そして、先述したようにメールシステムやCRMなどとの連携が必要となってきます。つまり、散在するデジタルマーケティングのさまざまなシステムを統合して1つのプロファイルを作るところに「技術的な課題」があるのです。

 続いて「洞察の課題」です。Webサイト訪問者の行動履歴を取得する仕組みを作ったら、その訪問者がどういうコンテンツを見る傾向があるのか、どういう行動がコンバージョンに結び付くのか、データを蓄積していきます。

 先ほどのコンビニの例であれば、誰が何を買ったのかという履歴を蓄積していくことで非常に分かりやすいデータを組み上げることができますが、Webサイトにおける行動は、ECサイト以外では購入と直結するものではないので、何らかの指標を作ってコンバージョンを定義する必要があります。

 コンテクストマーケティングでポイントとなるのは訪問者の360度ビュー、つまり統合された個別のユーザー情報です。これが得られなければ、コンテクスト(文脈)が失われることになってしまい、洞察が得られません。この洞察の課題においては、A/Bテストを繰り返してコンバージョンの高い結果を採用していくなどの試行錯誤が大事になってきます。

 最後に「コンテンツの課題」です。コンテクストを無視したコンテンツの発信は無意味な情報を届けるだけになってしまいます。このため、訪問者のペルソナや過去のコンバージョンに合わせたパーソナライズを実践することで、訪問者に必要な情報を的確に提示することが可能となります。よく “Content is King” という言葉を耳にするかと思いますが、これには“Context is Queen”という言葉が続くことがあります。つまり、コンテンツは王様、コンテクストは女王様ということで、この2つが機能的に動けば、Webサイトでのマーケティングが最大限の結果を出すことができます。

3つの課題を解決してサイト運営の効率化を実現するために

 3つの課題を克服して、オンラインの売り上げを大幅に増加させ、さらには顧客のロイヤリティ向上につなげているのが、以前この連載でもご紹介した、仏ダノングループ傘下で乳幼児栄養食品を取り扱っているDanone Nutricia(ダノン・ニュートリシア)です。

 Nutriciaでは、Nutrilonの調製粉乳、Bambixの離乳食、Olvaritの乳幼児向け食品など、子どもの成長ごとにそれぞれ異なるブランドを展開しています。親の状況や子どもの成長に合わせて次のブランドにうまく引き渡したいと考えていたNutriciaは、顧客である親の状況を4つのステージ、「妊活中」「妊婦」「乳児」「幼児」と定義して、各ステージのニーズを検証し、それぞれのステージに合わせた適切なコンテンツを、適切なタイミングで提供することを徹底しました。

 コンテクストマーケティングにおける3つの課題を解決するためには、ツールの助けを借りて解決していくことが得策です。訪問者だけでなく購入者の情報も合わせたデータを蓄積する仕組みを構築し、そのデータを参照しながら、各ステージの顧客が求める関連性の高い情報を適時提供していくのです。

画像 Danone NutriciaのWebサイト《クリックで拡大》

 コンテクストマーケティングを実践するためのツール導入に関して最初に検討すべき課題は、コンテンツ管理システム(CMS)をどのように運用をしていくのかです。現在のCMSが単にHTMLファイルを生成するだけしかできなければ、パーソナライズを実践するためにはJavaScriptを活用するツールと組み合わせなければならなくなり、日々の運用に負担をかけてしまう状況は目に見えています。それで費用対効果が十分にあるというならまだよいのですが、長期的な視点で考えると、やはりこの負荷を最小限にする必要が出てきます(Nutriciaは「Sitecore Experience Platform」を採用しています)。

 続いてアナリティクスに関して、コンテクストマーケティングでは「プロファイル作成の支援」の仕組みが必要となります。プロファイルの情報は「Salesforce」や「Microsoft Dynamics 365」などCRMと連携し、プロファイルとひも付いたキャンペーンのトラッキングを簡単にできる必要があります。また、分析から仮説を生み、試行錯誤してよりよいサイトのエクスペリエンスを実現するために、簡単に利用できるA/Bテストのツールも欲しいところです。

 本連載でこれまでも紹介してきたように、複数のツールを組み合わせた運用は複雑化して長期的な活動に支障をきたします。故に、目先のコストだけにとらわれて安価なツールを採用するのではなく、しっかり連携できるツールを検討する必要があります。コンテクストマーケティングを実践するためには、根本的なインフラから検討をする必要があると言えます。

 次回は、コンテクストマーケティングを実践する上で重要な「カスタマージャーニー」に関して取り上げます。

執筆者紹介

原水真一

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サイトコア セールスグループ プリセールスマネージャー。2000年1月にマイクロソフトに入社、Microsoft.com/japan の担当を7年、Microsoft MVP Program のプログラムマネージャーなどを担当。2010年7月からデジタルマーケティングプラットフォームのパッケージを提供しているサイトコアに入社、営業、マーケティング支援、プリセールス、パートナープログラムなどの業務を担当。2015年10月〜2016年3月まではFIXERでマーケティングなどを担当したのち、2016年4月にサイトコアに復帰。プリセールスを中心としつつ、日本でのビジネスをより大きくするために、さまざまな業務を担当しています。


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