今すぐにでも動画広告を始めたいと思っても、担当者にとって常に悩みの種になるのは、肝心の予算をどうするかというところ。今回は「予算アロケーション(配分)の考え方」について解説したいと思います。
これまでの2回の連載で、Web動画広告市場の概況からKPI設計の考え方まで解説しました。Web動画広告が成長市場であることは既にお伝えした通りですが、一方で広告全体の話となると、こちらはほぼ成熟した市場です。企業の広告宣伝予算全体が増えているわけではないので、Web動画広告に挑戦するためには、どこか他のところから予算を持ってこなければいけません。
そこで今回は、予算アロケーション(配分)について具体的にどうしたらいいのか、参考になりそうな例を紹介しながら考えていきたいと思います。
テレビCMの基本的なメリットは、「短期間に」「大量のリーチを」届けられることです。重要な新商品の発表時や短期間の販促キャンペーン時には、テレビCMを使わない手はないと思います。「テレビ離れ」といわれて久しいですが、コスト効率的にもテレビCMを超える広告商品はなさそうです(接触1回当たりのコスト効率はテレビCMの方が割安であることは第1回「大手広告主の4割が既に開始、今すぐ動画広告を始めるべき理由」でもお伝えした通りです)。
しかし、コスト効率は今なおテレビが最強と思いますが、一方で人口カバー率を考えると、いささか心もとなくなってきました。一番の問題は「短時間視聴者」「録画視聴者」の増加です。CMを通して商品を認知させるためには、ある程度のフリークエンシー(複数回接触)が必要なのに「CMが何回も当たるほどにはテレビを見てない人」の割合が増えているのです。われわれの調査によると、テレビCMにほとんど接触しない層(ローテレ:Low TVCM Reach Group)は全体の4割弱いるだろうと推計されています。(下図参照)
全体の3、4割程度がテレビCMだけでは訴求しきれない人たちであるならば、例えばテレビCMで70%、Web動画で30%などというように、視聴人口ベースで配分を考えるという手もあると思います。また、プロモーションのターゲットとなる年代によって、予算アロケーションの割合も変わってきます。特に20代については「テレビを持っていない人(ノンテレ)」だけでも15%を超えているので、より多くの予算をWeb動画に割いた方が効果的だと思われます(下図参照)。
さて、予算配分の際に大事なことは「Web動画予算の“天井”を見極めること」です。そもそも単価という観点でいえばテレビCMよりもWeb動画の方が割高なわけですから、湯水のごとく予算を使える広告主は別として、一般的には「無駄撃ち」はしたくないと考えるのは当然でしょう。
メディア内の「天井予算」については、下図のような計算で類推できます。
Web動画枠はテレビCMと違ってフリークエンシーキャップ(上限)が設定できるため、かなり精緻な「無駄撃ち防止」が可能です。そもそもの上限回数については、ぜいたくをいえば素材別の検証が必要ですが、これまでの調査結果からすると一般的には週2〜4回くらいが妥当と思われます。ターゲット別の人口は、各メディアや代理店が推計していますので、参考にしてください(われわれも独自データを持っています)。
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