「(前編)パルコのオムニチャネル戦略『24時間パルコ』」 では、パルコ WEBコミュニケーション部 業務課長 島袋孝一氏と同 宣伝部 村上弥耶子氏に同社のオムニチャネル戦略のアウトラインを聞いた。後編では、戦略に基づく具体的な取り組みに踏み込む。
小川 (2014年)7月の夏のグランバザールでも、新しい取り組みにトライされますね。
村上弥耶子氏(以下、村上) 私たちは、お客さまをテナントへ送客するだけではなく、テンナントの売り上げにも貢献できる施策を求められています。そこで、この夏のグランバザール(*「ちゃっかりモテ×引きよせクーポン」)から、お客さまが楽しみながら来店、購入いただけるような企画とO2Oプラットフォームを採用し、O2O施策の強化に努めています。
例えば、「占い」をフックにテナントへ送客し、実際にテナントへ足を運んでくれた方のみが「占いの診断結果とその結果にもとづいた特典」がもらえる仕組みなどがあります。この仕組みにより、来店だけではなく、購買を促進することが可能です。
このような企画と仕組みを通して、「新規顧客の送客」と「既存顧客とのエンゲージメント強化」を同時に実施しようと考えています。その中でも特に、新規送客もさることながら、来店しているお客さまとオンライン上でコミュニケーションを行い、購入率を上げることがポイントとなります。今回のグランバザールを契機に、これを一過性ではなく、長期的なO2Oの仕組みとして育てていきたいと考えています。
昨年(2013年)は関東のTVCMをやめ、大きなデジタルシフトのトライアルをしましたが、多くの競合施設でセールが行われ、競争が激化する中、パルコでは入館103%を達成することができ、動員獲得に成功しました。これは、新しい人たちに確実に情報を届けることができ、人を呼ぶことができたという1つの証明だと思っています。デジタル軸で人が呼べるということが分かったので、本年度もこれを継続していきたいと思っています。
小川 その発見は、とても大きな成果ですね。
村上 また、昨年からデジタル施策を強化したことで、これまでTVだとフォローしきれていなかった、全国の各地域の人たちともコミュニケーションを行えるようになりました。
昨年の成功を受けて、デジタルシフトをいっそう強めていますが、ただ単にセールの情報を押し付けていても意味がありません。そこで、お客さまに主体的に参加いただけるような効果的な仕組みにするため、「セールに来て下さい、買ってください」という直接的なコミュニケーションから少し外れて、ゲーム性を取り入れて、その行き着く先に買い物がある、というようなO2Oをやりたいという想いがありました。
小川 ゲーミフィケーションを交えることで、エンゲージメントを高めながら消費を促すことができますね。
村上 また、担当である私の考えとして、今まで行っていた経費的に非効率な「抽選会」の企画をやめたいということもありました。館内にいるお客さまをキャッチするためには、商品やテナントの魅力によるところが大きいと思うのですが、私たちのミッションは、その前の段階で、パルコの魅力を伝えてお客さまをテナントや商品へ導くことです。
「抽選会」は商品購買後に参加いただくもので、集客に寄与するものではありませんし、当たるか当たらないか分からない抽選会に、お客さまの時間を使わせてしまっていることにも課題を感じていました。
とはいえ、抽選会の本来の目的は顧客サービスです。今回の企画であれば、その目的を維持しながら、店外からお客さまを誘導するということも実現できます。
小川 今までのO2Oの考え方は、”Online to Offline”と言われるように、オンラインからどうやってオフラインへ誘導するかという概念が主体でした。それゆえに、オフラインからオンラインへのアプローチに大きなポテンシャルがあるということはあまり意識されていませんでした。店頭には来たけれど、買わずに帰ってしまう人が多い。業態にもよりますが、来店した人の購入率がひと桁%というケースも少なくありません。せっかく店頭には来ているのに買うまでに至らない人に対して、オンライン上に、その場で気軽に参加できる仕組みを用意しておいて、買うきっかけ、もしくはその場では買わないけれど、再来店してもらえる機会を作る。少なくとも、そこへつながるログは残せる。そうすることで購買率、再来店率を上げることができます。
村上 そのようにオンラインに誘導した後、購買や再来店へはどのようにステップさせればよいのでしょうか。
小川 誰にどのようなアプローチをするか、例えば、インセンティブを提供すれば購入率や購入単価、または再来店率が上がるのか、ということを、データを蓄積し、PDCAを回しながら1年や2年のスパンで検証していくと、よい成果が出るはずです。短期的な成果も大事ですが、長期的な視点を持つ必要がありますね。まさにLTVにも帰結します。
島袋孝一氏(以下、島袋) その視点は大事ですね。長期的な視点ですと、この秋、増床により、福岡パルコ新館ができるのですが、ここではサイネージやアプリを活用して、複合的なマーケティングプランを組み立てようとしています。
これまでは、すでにある商業施設のビルをリニューアルすることで「パルコ」というカラーにしてきたのですが、今回はゼロから建物を立てているため、新しいチャレンジがしやすい環境なのです。これまで、なかなかそのような場がなかったのですが、今回の福岡パルコ新館をきっかけに、サイネージやアプリを使った中長期的な顧客育成を狙っています。
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