2013年3月6日に開催された「CMO+CIO Leadership Forum」。全世界のCMOやCIOが「マーケティング環境は激変している」との見解を示す中、マーケティングに携わるエグゼクティブが一堂に会し、企業や立場の垣根を越えて「今後のマーケティング戦略において何が必要なのか」を探求するイベントだ。現状の課題や今後のマーケティングの方向性を検証する中、IBMが今後マーケティング分野へ本腰を入れて取り組んでいくことが明らかとなった。
2013年3月6日、日本アイ・ビー・エム(IBM)は、六本木のグランドハイアット東京にて、企業エグゼクティブを対象にしたイベント「CMO+CIO Leadership Forum」を開催した。このフォーラムの狙いは、CIOやCMO、CEOなどがそれぞれの立場から、マーケティングの潮流や目的を語り合い、企業戦略において特に重要度が増しているマーケティングの未来を探っていくというものだ。
なぜIBMがマーケティングをテーマにしたフォーラムを開催するのか。
日本IBM 代表取締役社長のマーティン・イェッター氏はオープニングスピーチの中で、「IBMがマーケティング分野にフォーカスする理由」として、次の2つを挙げた。第1に、カスタマーリレーションの質が変化したこと。デバイスが進化し、ITに長けた消費者が増える中、企業と顧客のリレーションシップは、10年前のそれとはまったく異なっている。第2に、ITそのものが、今やフロントエンドにおいて重要な顧客接点となっていることだ。ソーシャルメディアの台頭もその一因で、こうした顧客接点の多様性が、まさに企業と顧客とのコミュニケーションを変えつつある。実際、同社が2011年に全世界のCMO1700名(日本のCMOは70名)を対象に実施した調査『2011 CMO Study 』によると、「ITにより、新たなマーケティング環境が構築されつつある」とのコンセンサスがあったという。
その一方で、こうした変化に対し、「企業側で十分な用意ができていない」という危機感もあったそうだ。ITによる新たなマーケティング環境の前に、国や業種を問わず、世界中の企業は今まさに「変革しなければならない」時期に来ている。イェッター氏の講演から、「この課題に対し、ITソリューションのトップベンダであるIBMが応えていく」という姿勢が見える。
一方、CEOは、同じ課題をどのように見ているのだろう。IBMは、2011年にCEO1700名にも同様の調査を実施しており、そこでは「テクノロジーが最も重要な差別化要因になる」という意見が多く寄せられたのこと。その背景にあるのは、Eコマースの市場成長や、データの増大だ。現在、国内Eコマース市場は2桁成長を続けており、CVS(コンビニ)業界に迫る8兆9000億円もの規模がある。また、インターネットのデータ量はこの10年で700倍にも増えているという。単に購買活動がデジタル化されているだけでなく、商品の画像や感想など、購入後の消費者行動もデータとして蓄積されており、これを活用していくITが、今後の競争優位につながるわけだ。実際、国内大手通信会社のマーケティング担当者も、「現在のマーケティング手法は、過去のデータを使い、過去の状況を分析するもの。未来を見据えるマーケティング確立が必要なのだ」と危機感を抱いているという。
こうした状況に対し、IBMが提示する答えは何か。イェッター氏はこれに対し、具体的なシステムアーキテクチャや製品名でなく、3つの方向性を示した。まず「パーソナル化」、次に「エンゲージメントシステム」、最後に「企業文化とブランド確立の透明性」だ。
パーソナル化とは、「顧客」というあいまいな単位ではなく、1人ひとりの「個客」を理解するということ。その個客に対し、真摯な対応をする仕組みがエンゲージメントシステムであり、こうした企業文化とブランドを両立させることが重要なのだという。
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