知名度を上げたい、自社サービスや製品への注目を集めたい、メディアでの露出を増やしたい――。そのようなことを期待して、PR会社のノウハウを活用したいと考える企業は多いが、一方で、いざPR会社と契約をしても、期待した効果があまり上がらないといった不満もよく耳にする。自社に合ったPR会社を選ぶには、どのようなことに注意すればよいのだろうか?
外資系文具メーカーのA社は、メディアでの露出強化を目的にPR会社を活用することに決め、実績の豊富さと大手という安心感で、大手の総合PR会社と月額50万円のリテイナー契約を結んだ。しかし、付いてくれることになった担当者は入社2年目の新人で、何かを相談しても曖昧な回答しか返ってこないなど、あまり要領を得ていない様子。上司にあたるもう1名の担当者は複数案件を担当していて、打ち合わせにも度々欠席するなどA社の優先順位は低いようだ。PR会社への不満は募る一方である……。
どうだろうか。企業の担当者の中には「うちも同じようなことがあった!」と感じる人がいるだろう。なぜこのようなことが起こるのだろうか?
大手で実績も多いから総合PR会社を選んだというA社の判断は一見理にかなっているが、それがA社にとって最適な選択だったかどうかは別問題である。
日本には200〜300のPR会社があると言われている。その多くは数人から数十人規模のスタッフで回している中小零細規模の会社がほとんどだ。そういった規模の会社は、総合的なサービス展開をするのではなく、得意分野をはっきりさせている場合が多い。例えば業種なら「コスメやファッションに強い」「ITに強い」「金融に強い」「メディカルに強い」といった得意分野があり、業務分野では「マーケティングや販促PRに強い」「危機管理に強い」「リリース配信代行に特化」といった特徴の会社がある。また、「女性誌に強い」「TVに強い」というように得意な媒体のカラーをはっきりさせている会社もある。
一方で、総合PR会社というのは、そういったブティック型のPR会社が提供しているさまざまな分野を1社で網羅しているというのが強みの1つである。しかし、それは会社全体の話で、個々の担当者レベルになると話は別である。というのも、PR会社の業務は非常に属人的な部分があり、担当者によって当たり外れが非常に大きいのだ。一部のPR会社では、メディアの人脈や業務ノウハウを全社で共有して、担当者によってバラツキが出ないような努力をしているところもあるが、結局は、知識や経験、実績、メディア別の得手(不得手)、クライアントに代わって事業戦略などをメディアに説明する能力、さまざまな場面での機転、企画力などは個人の能力に左右される。
もちろん、大手の総合PR会社には優秀な人が多く在籍しているのだが、A社のように月額50万円単位のリテイナー契約だと、トップクラスの人材をアサインしてもらえる可能性はそれほど高くないのが現実だ(当然、彼らもビジネスなので、多額のフィーを支払ってくれるクライアントの方によい人材をアサインする傾向が強い)。
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