最後になりますが、データを分析する際に求められるのは、「データありき」ではなく、「目的ありき」の視点です。ここで目的とは、「消費者の購買行動のどこに作用することを意図しているのか」ということです。Twitterプロモーションを実施したり、Facebookページを開設したからといって、「ツイート数」や「いいね!数」が目的になるわけではないのです。
以下に示したのは、一般的な消費者の購買行動プロセスごとの指標例です。
例えば、商品のニーズを喚起することを当初の目的に設定するのであれば、その商品カテゴリへの興味関心率や購入意向率の向上が指標(評価するべきデータ)として設定されるべきでしょう。
ただ、これら「認知率」「好意率」のような最終的なKGI(key goal indicator:重要目標達成指標)は、直接コントロールできるものではなく、それらを高める“手段”として、広告を投下したり、ブランド名をツイートしてもらったり、Facebookページのファンになってもらったり、という施策を行っています。そこで「サイト訪問数」や「ツイート数」「ファン数」などといった中間指標となるKPIを調整・管理していくことになるのです。「目的」と「手段」の区別が曖昧なままで安易に分かりやすいデータを見てしまうと、誤った判断や解釈をしてしまうリスクにつながります。
そのようなリスクを回避するための1つの考え方が、指標を構造化してとらえることです。あくまで一例ですが、下記の図で示したような指標の構造化があります。
「リーチ指標」は、施策がどのくらいの人に届いたのかを示します。
「行動指標」は、リーチした結果、ユーザーにどのくらいの行動が起こったのかを示します。
「態度変容指標」は、人々が行動を起こした結果、どのくらいの態度変容が起こったのかを示します。
「ビジネス指標」とは、消費者の間で態度変容が起きた結果、どのくらいのビジネスインパクトがあったのかを表します。商品の売上高などがこれにあたります。
ただし、ビジネス指標は商品の価格や販売チャネル、環境要因などマーケティングコミュニケーション以外の要素が大きく影響します。そのためコミュニケーションでカバーできる領域で指標の管理を行っていくことが現実的な方法だと思います。
これらの指標は、「取得元」別にも構造化ができます。取得元として挙げられるのは、マス媒体を中心とした第3者メディア、コーポレートサイトやキャンペーンサイトなどの自社メディア、ソーシャルメディア、そしてWebリサーチなどです。
各取得元における指標は、下記の図で示したように、それぞれ「リーチ指標」「行動指標」「態度変容指標」が存在します。指標を設定する際には、複数の取得元を横断して情報を取得し、複合的な観点で分析を行っていく必要があります。
今回は、マーケティングコミュニケーションにおけるデータ活用の概念をお伝えしました。次回は、具体事例として協和発酵キリンの「THUNDERBIRDS LAB.」プロジェクトを取り上げ、実際の現場では、個々のデータをどのように活用して、施策のチューニングを行っているのかをご説明したいと思います。
折舘 洋志
ビルコム株式会社 Research & Analytics Div. マネージャー
大学卒業後、コンサルティング会社にて、数多くの企業のブランド戦略立案に携わる。2010年ビルコム株式会社に入社。Research&Analytics Div.にて、国内外大手クライアントのマーケティング戦略におけるKPI設定から、デジタル領域の定量・定性データの分析までを担っている。
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