新連載では、デジタル化が進むマーケティングコミュニケーションにおけるデータ活用について重要となる考え方を、具体的な事例を交えて示していきます。
スマートフォン、タブレット端末やソーシャルメディアの普及に代表される、生活者のコミュニケーションチャネルのデジタル化と情報量の増加、そして、取得した大容量のデータ(ビッグデータ)の蓄積から処理、分析を可能にする情報通信分野の技術革新によって、企業が経営や事業の意思決定にデータを活用していこうという動きが急速に広まっています。
米IBMが全世界3000人のCIO(最高情報責任者)を対象とした調査(IBM Global CIO Study 2011)では、83%のCIOが、今後3〜5年の成長戦略における最重要分野は「分析とビジネス・インテリジェンス」と回答しており、今後企業においてデータ活用がますます重要になっていくことがうかがえます。
そのような中、マーケティングの領域においてもデータを活用した新しい動きが盛んに起こっています。
例えば商品開発では、企業がソーシャルメディアで自社および競合他社の評判をモニタリングして新しいアイデアを収集したり(ソーシャルリスニング)、自社のファンが集まるプラットフォームをつくり、そこで対話や投票などを行いながらともに商品をつくり上げていく(Co-Creation)というような動きが活発化しています。
広告や販促においては、Webサイトの閲覧・行動履歴などから、個人の嗜好に合わせた広告を配信していく「行動ターゲティング」や、スマートフォンに組み込まれた位置情報システムを利用し、ユーザーの現在位置に基づき近くの店舗のクーポンを配信していくようなLBS(ロケーション・ベース・サービス)と呼ばれるサービスが注目されています。
当然これらの広告販促活動については、クリック率やクーポン利用率のような“消費者の反応”に関するデータも取得可能であるため、それらのデータに基づいてプロモーション活動のROI(費用対効果)を最適化していく、という取り組みも非常に重要です。
そもそもデジタルの本質は、あらゆる情報が定量的に分析可能なデータとして取得できる点にあります。これを企業のプロモーション活動、つまり「マーケティングコミュニケーション」の視点に置き換えると、生活者の消費に関する意識や行動が、定量的に測定できる情報として抽出できることである、ととらえられるでしょう。
今まで属人的な「経験」や「感性」に頼ることの大きかった部分が、定量的なファクトに基づいて考えられるようになったことにより、「アート」と「サイエンス」をうまく融合してコミュニケーションを展開していくようなスキルが必要になってくるのではないでしょうか。
この連載では、デジタル化が進むマーケティングコミュニケーションにおけるデータ活用について重要となる考え方を、事例を交えてお話したいと思います。第1回は、「マーケティングPDCA」についてお伝えします。
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