もう1つトピックに挙がったのはYahoo! JAPANとGoogleの提携についてだ。これまで日本の検索エンジンシェアは、GoogleとYahoo! JAPANが大きく二分する形の競争型市場となっていたが、Yahoo! JAPANがGoogleの検索エンジンを採用したことにより、一気に寡占状態に突入している。すでにヨーロッパでは、Googleの検索エンジンシェアが90%以上、場合によっては95%以上の地域もあるが、この不健全な状態では“オンライン広告の不透明性”が最大化されるとエデルマン氏は警告する。
同氏は「単一の検索エンジンがあまりにも力を持つと何が起こるのか。1つ起こりうる問題として、広告主はこれまでよりもたくさんの費用を払わなくてはいけなくなるかもしれません。通常は例えば、クリック数と商品の販売数を見て広告の価値を判断します。しかし、あるトリックを使うことで、広告主から余分な費用を払わせることができるのです」と続け、検索連動広告を利用した2つの例を示した。
1つは検索時のタイプミスに対する結果として広告を表示し、ユーザーがそれをクリックするケースだ。例えば、あるユーザーが老舗デパート「Saks Fifth Avenue」のWebサイトを見るためにアドレスバーに「www.saksfifthaveune.com」(スペルミスしている)と打ち込むと、その上位には本来ユーザーが見たいと思っていた「www.saksfifthavenue.com」のリスティング広告が表示される。そして、ユーザーがここをクリックすれば、それに応じた費用をSaks Fifth Avenueが負担することになる。
もう1つの例は、サードパーティが提供するツールバーを使って検索連動広告を経由させるというもの。「例えばこのSmiley Centralのツールバーをインストールすると、Webブラウザがこのような形になります。本来アドレスバーがあった位置に妙なボックスが配置されているのに気付くでしょう。このMy Web Searchに、楽天のWebサイトへ行きたいと思ったユーザーがrakuten.co.jpと入力したとします。先ほどの例とは違い、URLを正しく入力していますね。(ユーザーが期待する)本来の挙動ではここから直接、楽天のWebサイトに飛ぶはずです。しかし実際は、Googleのリスティング広告に誘導されています。もしユーザーがこの広告をクリックすれば、楽天はGoogleに広告費を支払わなければなりません。これらの事例は、広告主の弁護士が申し立てをして返金交渉をしてしかるべき状況ですが、Googleは一切応じていません」。
実際エデルマン氏は、こういったケースで自分の顧客から依頼され、不当に広告費を請求されているとして法的な書類をGoogleに提出した。しかし、Googleはこれに応じず、代わりに契約内容へ左の文言を追加したという。
「Googleが広告を掲載する場所にGoogleは広告を載せることができる? まったく訳が分からない文章で、具体性がありません。Googleは広告に対してどんなことでもできるということを明示しているかのようです」とエデルマン氏。
「また、Googleが9割のシェアを握るオーストラリアでは、これよりもさらに“意地悪な条件”が付加されています。例えば、もし苦情がある場合には、なぜかカリフォルニア(Google本社がある)よりも遠いGoogleアイルランドに通知する必要があり、必ず2回申し立てを行い、1つは“確認付きファックス”を……これはどういう意味なのか私も分かりませんが、そしてその写しを1晩で到着するクーリエ便で送らなくてはなりません。しかしもちろん、(Googleからの)回答はEメールで送られてきます」。
Googleへ苦情を申し立てる際に、Googleアイルランドにクーリエ便で書類を送る妥当な理由がどんなものかを想像するとほとんど笑い話のようだが、もし笑ってしまった人は日本の利用規約(9.雑則)がどうなっているかを確認してみるといい。
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