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» 2012年12月25日 11時29分 UPDATE

ソーシャル×商品開発:“遊ぶ心”のある企画設計が生活者の積極的な参画を促す

従来の生活者参加型商品開発は、あくまでも企業が主体であり、生活者は企業の求めに応じて情報を提供するというかたちが一般的であった。しかし、“ソーシャル時代”においては、企業と生活者が同じ地平に立って、“一緒に商品を創り上げる”取り組みが加速している。生活者の積極的な参加を促す仕組みづくりが、成功のカギとなると言えるだろう。

[アイ・エム・プレス]
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新たなステージを迎えつつある生活者参加型の商品開発

 商品開発に生活者の知見や感性を活用することは、決して新しい手法ではない。消費財の商品開発の過程で生活者を対象としたグループインタビューを実施して、開発を進めている商品分野の使用実態や生活者の不満、ニーズなどを聞き出して参考にしたり、いくつかの試作品が完成した段階で会場テストなどを実施して、生活者の好みやニーズに合致するものを見極めたりといった取り組みは、これまでも盛んに行われてきた。また、インターネットが普及してからは、ネット上でこのような作業を進める商品開発サイトなども登場し、実際にそこから多くの商品が生まれた。

 しかし、これらの取り組みの主体はあくまでも企業であり、生活者は企業の求めに応じて情報を提供するサポート役に過ぎなかった。企業と生活者が商品の“売り手”と“買い手”として明確に線引きされていた時代には、それも当然のことだったと言えるだろう。

 だが、近年では企業と生活者の関係性は大きく変わろうとしており、特にソーシャルメディアの普及がその動きを加速させている。ソーシャルメディア上で企業と交流する生活者は、企業を特別な存在としてではなく、自らと同じ地平に立つ“社会の一員”として認識しつつあるのだ。従って、そのコミュニケーションの内容は、従来中心であった企業から生活者への情報発信、生活者から企業への問い合わせやクレームなどだけにとどまらず、多彩なものとなっている。もちろん、特に企業側が一定の節度を保つことが前提になっているものの、その関係性は従来と比較して大幅にフランクでフラットになってきたと言えるだろう。

 このような変化の中で、生活者参加型の商品開発も新たなステージを迎えつつあるように思われる。今回の特集では、生活者参加型商品開発に積極的に取り組む企業のケーススタディを中心に、“ソーシャル時代”に適合した生活者参加のあり方を探った。

幅広い業種業態で多様な取り組みが展開

 「au」ブランドで移動体通信事業/固定通信事業を展開するKDDIでは、2011年8月からau公式Facebookページ上で、ユーザー参加型のアプリ開発プロジェクト「もっとFacebook」を展開。2012年3月にその成果として、無料で利用できるFacebookアプリ「vottie」の提供を開始した。その開発過程においては、ユーザーのau公式Facebookページへの関与度を高めることを主目的として、企画会議の内容をFacebookページ上で公開し、ユーザーのコメントや投票を受け付けて、それを企画に反映させていくという方法を採用。企業としての専門性を保ちながら、ユーザー視点を取り入れたアプリ開発を実現している。

 130年以上の歴史を誇る醤油メーカーである正田醤油では、2011年10月から生活者参加型の商品企画プロジェクトをスタートした。Webサイト「みんなの醤油スタジアム」を開設して、性や年齢を問わず、幅広い層を対象に新しい醤油のアイデアを募集。集まったアイデアをもとに試作を行い、10種類の候補を同サイトで公開して人気投票を実施し、3品を商品化、2012年5月からオンラインショッピングサイトでの販売を開始している。さらに第2弾の企画もスタートさせる意向だという。

 バンダイのグループ会社としてフィギュアなどの企画/開発および製造/販売を手掛けるメガハウスでは、2012年2月〜4月、バンダイの公式オンラインショッピングサイト「プレミアムバンダイ」を舞台に「G.E.M. 銀魂商品化総選挙」を実施。「あなたの1票が商品化を決める」というキャッチフレーズの下、人気アニメ作品「銀魂」に登場する56名のキャラクターを候補として挙げ、ユーザーからの投票の得票数で上位になったキャラクターをフィギュアとして商品化するという企画で、Twitterなどを有効活用することにより、当初の想定を大幅に上回る投票数を獲得した。

 ファミリーレストランを運営するロイヤルホストでは、2012年3月29日〜 4月8日、「夏のカレーフェア人気投票」を実施した。同社の夏の定番キャンペーンである「夏のカレーフェア」が第30回を迎えることを記念して行われたこの企画では、これまでの29回のフェアで提供してきた131品目にも及ぶカレーメニューの中から人気の高かったものを中心に、候補となる30品目を選定。「“カレー仲間”あなたの出番です! 」をキャッチフレーズに投票を募り、7542人から2万1189票の投票を獲得すると同時に、“家族や友人とのカレーフェアの思い出”など、お客さまのカレーフェアへの思い入れを示すコメントも数多く得ることができた。

生活者の主体性を最大限尊重できる仕組みを構築することが求められる

 今後、生活者参加型商品開発の主舞台がインターネット上、特にソーシャルメディア上となることは想像に難くない。企業と生活者の距離が近いソーシャルメディアは、両者が闊達なやりとりを通じて“一緒に商品を創り上げていく”には最適なプラットフォームであり、今後、ソーシャルメディアを活用した生活者参加型商品開発はますます盛んになるであろう。

 電通コンサルティングのディレクター兼代表取締役社長の及川直彦氏は、「企業を疑似人格的なものとして見て、感情移入したり話をしたいと感じている、今までなかった生活者像が生まれていて、それに対して企業にも今までとは違う戦い方が求められているのかもしれません」と指摘している。そのような生活者の積極的な参画を得ながら、質の高い商品を開発するためには、それなりの仕掛けも求められる。その仕掛けを構築する中で最も留意すべきは、生活者に開発の当事者としての自覚をいかに持ってもらうかということであろう。

 通常、企業の商品開発においては、開発期限を設け、そこから逆算してさまざまなプロセスを設定することが多い。従来の生活者参加型商品開発では、そのプロセスの中に生活者を巻き込むというかたちが主流であったが、このスタイルでは生活者が歯車の1つとして企業活動に組み込まれているという感が拭えず、開発に参加しているという実感や充実感を持ってもらうことは難しかった。

 “ソーシャル時代”の生活者参加型商品開発においては、企業は一定のイニシアチブを握りながらも、生活者の主体性を最大限に尊重する仕組みを構築し、さらにゲーム性を加味することなどで、生活者に“遊び心”を持って参加してもらうことが肝要である。そして、それが実現できれば、単に生活者の感性やニーズを生かした商品を開発できるというだけでなく、開発の過程で生活者の親近感や仲間意識を醸成し、企業を身近な存在として感じてもらうことで、長期的なファンづくりにつなげていくことも可能となるであろう。

※この記事は月刊アイ・エム・プレス2012年6月号の総論「“遊び心”のある企画設計が生活者の積極的な参画を促す」の原稿を一部修正して転載しています。


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