第5回 コミュニケーションデザイン――ユーザー視点でコミュニケーションのシナリオを考える【連載】オウンドメディアコミュニケーション 成功の法則21(1/2 ページ)

オウンドメディアの果たすべき役割を考え、コミュニケーションゴールを達成するためには、ユーザーの視点に立ったシナリオ(カスタマージャーニー)のデザインが必要。認知から購入、そして自社のファンになってもらうために何が必要か? 今回はコミュニケーションデザインについて考える。

» 2012年11月14日 08時11分 公開
[後藤洋(トライベック・ストラテジー)/福山一樹(電通),ITmedia]
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本連載は「オウンドメディアコミュニケーション 成功の法則21」(ソフトバンククリエイティブ)をコンパクトに再編集したものです。


第4回の振り返り

 第4回はオウンドメディアを通じて消費者とコミュニケーションを行うことの重要性を改めて指摘した。今回はどのようにコミュニケーションを「デザイン」するのか、その方法に踏み込む。

法則7. コミュニケーションをデザインする

コミュニケーションによってどんな成果をもたらしたいのか

 コミュニケーションをデザインする際に必要な最初のステップは、コミュニケーションのゴールを明確にすることです。そして同時に、オウンドメディアをさまざまなメディアの中でどのように位置づけるか、その果たす役割、成果についても検討しておくことが必要です。このコミュニケーションゴールは極力具体的にしてください。なぜなら、ゴール設定が曖昧なままだと、コミュニケーションデザインの作業過程で、目的や成果に対するオウンドメディアの役割や活用の方向性がぶれてしまい、結果的に成果の上がらないコミュニケーションという事態に陥りかねません。実際、このコミュニケーションゴールが曖昧な状態でプロジェクトを進めた結果、成果が上がらなかったケースをよく目にします。

 それではなぜコミュニケーションゴールは曖昧になってしまうのでしょうか。第一に言えるのは、企業が数あるメディアの中でも、オウンドメディア(企業のオフィシャルサイト)への期待が希薄なことが考えられます。たかがホームページ、たかがカタログ。このような位置づけになっている実態があるのです。

 オウンドメディアの役割がカタログの延長線上としか認識されず、企業や製品/サービスに関する基本情報を掲載する「とりあえずメディア」という扱いを受けている状況でコミュニケーションゴールの設定といっても、ページビューを中心とした数字ばかりを指標としてしまい、伝統的なメディアと同じように、どれだけ露出があったのかといったことにしか関心が向きません。つまりどんなコミュニケーションが発生し、どんなプロセスを経て結果となっているのかを正しく把握できない状態に陥っている可能性があります。

コミュニケーションゴールを明確にする

 ページビューなどの表面的な数値を中心としたゴール設定は危険です。どれだけの人の目に触れたかどうかというのは確かに1つの指標ではありますが、オウンドメディアはペイドメディア(TVCMや新聞広告など)のように、広くブランドを知ってもらうための認知ツールとは役割が異なります。特にオウンドメディアの場合は、コミュニケーションによって構築される関係性(企業とユーザーの絆)の深さが重要なゴール指標の1つになります。

コミュニケーションゴールを設定する2つの視点

 コミュニケーションゴールを設定する際には、2つの視点で考えると良いでしょう。それは定量的/定性的の2つの視点です。

 オウンドメディアはインターネット上のメディアという特性上、数値による評価がしやすいため、ログ解析のデータを活用することによって、ゴールが具体的に設定しやすいメディアと言えます。

 ただし、前述のようなページビューであるとか、訪問者数のように、いわゆるTVCMの視聴率のような表面的なものだけをゴール指標にしてはいけません。定量的な指標を用いてゴール設定をする場合は、ユーザーの行動プロセス(サイト内での動き)においていくつかのシナリオを作り、意味のあるデータ解析につなげる必要があります。

 例えば、ユーザーを実店舗に誘導することをゴールとしている場合、店舗の紹介ページのページビューをゴール設定にするのではなく、具体的な行動プロセス自体をゴールにすべきです。店舗検索のプロセスで、どれくらい離脱が抑えられたかや、店舗ページに表示されている地図を印刷したり、モバイル端末に送信したり、そこから実際に店舗への行動が生まれていると推察されるポイントを見極め、ゴール設定をしていくと具体的になります。重要なのは、最終目的に対して、オウンドメディアがどのようなコミュニケーションプロセスに影響を与えているのかを把握することです。

 次に後者の定性的な視点からのゴール設定ですが、これはデータだけでは把握できないようなユーザー心理を把握するための指標と言ってもよいでしょう。

 企業はユーザーとオウンドメディアを通じてコミュニケーションした結果として、売上貢献のみならずブランドイメージを向上させたり、ロイヤリティを向上させたりすることを求めている場合もあります。企業のオウンドメディアに来訪したユーザーが、どんな目的を持ってそこにアクセスしたのか、その企業にどんな印象を持っていたのか、コンテンツへの満足度はどうかといった定性的な情報は、ログ解析などのデータだけでは読み取れません。またブランド受容やデザインイメージ、他の競合他社サイトとの比較といった評価についても、定量的ではない別の指標が必要になってきます。

 定性的なゴール設定にも、先ほどと同様にユーザーの行動プロセスからシナリオを作ることが重要です。

コミュニケーションゴールを考える2つの視点

 コミュニケーションゴールの設定は、結果だけに捉われてはいけません。特にインターネットにおいては、ユーザーがオウンドメディアに来訪して離脱するまでの行動がある程度可視化できることもあり、ユーザーの行動プロセスを注視しておく必要があります。行動した結果としてのゴールは何かというシナリオを再考し、あなたの会社にとっての、オウンドメディアコミュニケーションにおける具体的なゴールを設定してください。

オウンドメディアにおけるコミュニケーションゴールの考え方
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