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» 2012年07月17日 08時00分 UPDATE

【連載】戦略リーダーとしてのマーケティング組織、CMO機能:第1回 CMOが日本の組織に馴染まない理由 (1/2)

CMOとは何者か? マーケティングドリブン型組織が持ち得る力とは? マーケティングを軸に組織再編を考える松風里栄子氏の新連載。第1回はマーケティング部門が見直される背景および企業の構造再編を阻む要因を整理する。

[松風里栄子,博報堂コンサルティング]

CMOとは何者か

 マーケティング最高責任者(Chief Marketing Officer:CMO)なるポジションがグローバル企業を中心に生まれ、重要視され始めてから約10年。昨年、今年と日本でもCMOサミットが開催され、また公益社団法人日本マーケティング協会(JMA)では“デジタル時代に要請される「新しいCMO機能とは」”研究会を立ち上げ、オープニングセミナーを開催するなど、日本においてもCMOとその機能、役割についての議論が広がりつつある。

 CMOとは何か、については神岡太郎氏著「CMOマーケティング最高責任者」から引用させていただく。

 (CMOとは)企業において、一層高いレベルでのマーケティング活動を実践するために、従来、部門で分かれて行われていたマーケティング業務(店舗、商品、サービスなど事業部単位のマーケティング、地域毎のマーケティングなど)を、機能的に連携し統括するマーケティング最高責任者であり、主な役割は以下の3点である。

  1. マーケティング活動の最適化と効率化(マーケティングROIの最大化)を図り、そのための機能統合を進める
  2. 経営とマーケティングの融合を進める(各単位のマーケティング業務と経営戦略、IT業務とを有機的に連動させる)
  3. 企業マーケティングのアカウンタビリティを担う

 このように定義されているCMOであるが、日本においてはまだなじみが薄く、それゆえ、導入企業においても、企業内で役割が不明確な場合が多いことも事実である。CMOの導入については、企業によって温度差があるのだ。一方で、マーケティング機能と組織を見直す動きは、実際にさまざまな企業で検討され始めている。

マーケティング組織見直しの動き

 見直しの例としては、

  1. 中央コントロール力の強化
  2. 分散しているマーケティング機能の統合化
  3. 組織ごとの機能ミッションの明確化

などがあるが、企業側の課題感として私がよく耳にするのは、「今はマーケティングドリブン型の組織になっていない」という声である。「マーケティング部長と言っても、実際に事業を動かす現場部門の調整機能がほとんどである。ただ、現場部門間で組織目標や想いが違うため、実際には統合マーケティングが仕掛けられない」とも。

 ここで、念のため、マーケティング組織がどのように発展してきたのかを振り返っておきたい。

 フィリップ・コトラー著「マーケティング・マネジメント」によると、マーケティング組織は企業の成長過程の中で、一般的には下記5つの段階を経て発展していく。

  • 段階1. 単純販売部門
  • 段階2. マーケティング機能を付随させた販売部門
  • 段階3. マーケティング部門の分離
  • 段階4. 現代的マーケティング部門:マーケティング(長期志向) V.S. 販売(短期志向)のコンフリクト回避策として、両社を統括するSVPを置く、もしくはマーケティング配下に販売、あるいは販売配下にマーケティングを置く
  • 段階5. 現代的マーケティング企業:企業がマーケティングをどのように見ているかによる。すべての部門が顧客のために活動しており、マーケティングは企業理念であると考えたとき現代的なマーケティング企業となる

 このように、マーケティングは販売を強化する機能として発展してきた。

 しかしながら、昨今のマーケティング組織の見直しは、マーケティングが担う領域が経営の根幹からバリューチェーンの最終段階まで、その活動領域を大きく拡大していることにあると、捉えるべきだろう。

 具体的、直接的なきっかけとして、ソーシャルメディアの影響力拡大やビッグデータの扱い、Webやデジタルアプリケーションを介した企業と顧客の関係構築方法の変化など、マーケティング活動のインプットとアウトプット双方の環境変化によるスキルセットおよびマーケティングアプローチの再考が求められていることが挙げられる。

 ちなみに、本年6月に開催された、CMO Japan Summit(marcus evans 主催/運営)というイベントでは、さまざまな企業のマーケティング担当者が集まり、自社の取組みが紹介された。

 中でもトピックスとして目立ったのは、“オンライン・オフラインマーケティング”、“ネットとリアルを融合させたマーケティングシステム”、また、“多様化するマーケティングへの対応と社内連携強化”といったテーマである。

 よりよい効果を発揮するマーケティング活動を実施するため、直接、顧客と接する部門だけではなく生産やITなど他部署との緊密な連携や新たな体制作りは、どの企業にとっても検討されるべき重要イシューである。

 次ページでは、マーケティング責任者の方々が感じておられる具体的な課題を紹介する。

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