「政府」「メディア」への信頼度は日本が最低 どうしてこうなった?信頼度調査「2025 エデルマン・トラストバロメーター」

「信頼」に関する年次消費者意識調査の結果から、日本においても社会的な不満・憤りが大きくなっていることが明らかになった。

» 2025年03月31日 12時00分 公開
[ITmedia マーケティング]

 PR会社Edelman日本法人であるエデルマン・ジャパンは、「信頼」に関する年次消費者意識調査の結果をまとめた「2025 エデルマン・トラストバロメーター」を発表した。今回で25周年となるこの調査は、社会への信頼や不満の度合い、イノベーションに対する意識などを測ることを目的として、日本を含む世界28カ国3万3000人以上(各国1150人前後)を対象に実施している。

 社会を支える4つの主な組織機関(政府、メディア、NGO、企業)への信頼度の平均値である「信頼指数」は、世界全体で56(前年と同じ)、日本では37(前年比マイナス2ポイント)で最低レベルとなった。

2024年から2025年における信頼度の変化(出典:エデルマン・ジャパン「2025 エデルマン・トラストバロメーター」、以下同)

政府、企業のリーダー、ジャーナリストへの不信感が増大

 また、日本は世界第4位の経済大国であるにもかかわらず、「次世代の状況が現在よりも良くなる」という期待値において最下位から2番目(ドイツ、オランダと同順位)となるとともに、「次世代の状況が上向く」と回答したのは全体の14%にとどまった(世界平均は36%)。

次世代の状況は現在よりも良くなると考える人の割合

 日本では「リーダーたちが嘘や誇張を用いて意図的に人々を欺いている」という懸念が高まっている、政府、企業のリーダー、ジャーナリストやレポーターそれぞれ不安を抱える人の割合はそれぞれ前年比で大きく増大しており、過去最高に達した。

リーダーたちに不安を抱く人たちの割合が増大

今回のレポートからは、経済的不安が社会的な不満と憤りを招いていることが見えてきた。日本の回答者の65%が「中程度から高度の不満と憤り」を感じていると回答しているが、これは世界平均の61%よりも高かった。この根底には、政府や企業が一部の利益のために行動し富裕層は恩恵を受ける一方で一般市民が苦境に立たされているという認識がある。

不満と憤りを感じている人の割合

 募る不満は行動を引き起こす。日本では若年層(18〜34歳)の43%が「変革のためなら攻撃的な行動も是認する」と回答した。具体的な活動を容認している人の割合は「オンライン上の個人攻撃」(18%)、「意図的な虚偽情報の共有」(22%)、「暴力の行使」(18%)、「財産の破壊」(20%)だった。

攻撃的な活動が変化促すと考える人の割合

不満と憤りが大きいほどAIに対して懐疑的

 日本では、不満を持つ層ほど、技術革新や組織機関への信頼度が低いことも見えてきた。AIなどの新技術への信頼や活用意欲は低下傾向にあり、日本では前回調査から7ポイントの下落となった。

不満と憤りが大きいほどAIに対して懐疑的

 日本では、4つの組織機関がいずれも信頼を得られておらず、政府、メディア、NGOへの平均的な信頼度は最低レベルだが、企業への信頼は48%と、比較高い評価となった。「自分の雇用主」を信頼する割合は64%で全世界の中で2番目に低いが、前年比4ポイント増と上昇傾向にある。また、日本に本社を置く企業に対する世界の信頼度は前回から4ポイント増加。ドイツを上回り、カナダと並んで海外国のブランドとして信頼度が最も高い国となった。

雇用主を信頼する従業員の割合

 企業に期待される役割は高まっている。調査では、給与の適正化やリスキリング(再教育)、多様性のある職場づくり、気候変動や誤情報への対応など、社会課題への積極的な関与が企業に求められていることが明らかになった。また、人々はCEOのリーダーシップに対して「業績向上につながるなら、変革を推進する行動をとるべきだ」と肯定的に捉えていることも分かった。

 EdelmanのCEOを務めるリチャード・エデルマン氏は「信頼の再構築には、共感に基づいた行動と、社会課題への誠実な取り組みが不可欠だ」とコメントしている。

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