「Threads」が広告表示テスト開始 企業アカウント運用のポイントとは?知っておきたいソーシャルメディア運用TIPS

Metaのテキスト共有アプリ「Threads」で広告表示のテストが開始され、新たな顧客接点として企業からの注目が高まっています。このThreadsで企業アカウント(公式アカウント)を運用するなら何に気を付けるべきか、エキスパートが解説します。

» 2025年03月31日 11時00分 公開
[安東実里ホットリンク]

 2025年1月末、Metaのテキスト共有アプリ「Threads」で広告表示のテストが始まりました。これは、広告機能の拡大方針を決定する目的で、米国と日本の一部の広告主と利用者を対象に実施されています。

 広告機能が実装されることで、企業のThreads活用が進むことが予想されます。競合他社に先駆けて今から準備しておくことで、実装後に慌てることなく、先行者利益を得られる可能性も高まるでしょう。

 そこで本記事では、「Threadsで企業アカウント(公式アカウント)を運用するなら」をテーマに、ホットリンクのSNSコンサルタント安東実里が解説します。

企業がThreadsを活用するべきか否か、どう判断する?

 企業がSNSを活用する目的は、売り上げの向上やブランド認知の拡大など、ビジネスの成果につなげることです。新しいプラットフォームでのアカウント開設を考える際も同様に、「自社のビジネスの成果や、課題の解決につながるか」という視点が欠かせません。

 では、どのような企業がThreadsの活用を検討すべきか、3つの観点で整理します。

1. ユーザーとの対話を重視している企業

 Threadsは「コミュニケーションを重視したメディア」と言われています。アルゴリズム上、一方的な情報発信よりも、ユーザーとの交流を促す投稿のほうが「おすすめ」フィードに表示されやすい傾向があります。

 例えば、アンケートを実施したり、ユーザーの意見を募ったりする投稿は、エンゲージメントを高めるだけでなく、ブランドの親近感を高める効果も期待できます。こうした特徴を生かせる企業とは、特に相性が良いと言えます。

2. 単一のSNSに依存している企業

 近年、SNSを取り巻く環境は急速に変化しており、突然の仕様変更や機能廃止が起こることも珍しくありません。例えば、X(旧Twitter)では、アルゴリズムの影響などから、企業アカウントのリーチが減少するケースも見られます。

 こうした背景から、1つのSNSに依存せず、複数のチャネルを組み合わせた運用が重要です。Threadsは、Xと同じくテキストベースのプラットフォームであるため、Xを主力にしている企業にとっては、リスク分散のためのサブチャネルとして活用できます。また、Instagramと異なり、ビジュアル素材が少ない企業でも運用しやすい点が特徴です。

3. 直近のSNS施策で手応えを感じていない企業

 既存のSNSで目標としていたフォロワー数を達成し、リーチやエンゲージメントも順調に伸びているものの、頭打ちを感じている企業も少なくありません。特に、広告費の高騰により、投資対効果が以前ほど得られないと感じるケースが増えています。

 こうした企業にとって、Threadsは競争が少なく、オーガニック投稿でもリーチを獲得しやすい特性があるため、新たな接点を広げる手段として活用しやすいでしょう。

Threads運用のポイント

 Threadsの運用を決めて、アカウントを開設したら、まずはUIや操作に慣れていきましょう。日々どのような投稿がされているのか、自身でも使いながら特徴をつかむことが大切です。

 Threadsのタイムラインは、「おすすめ」と「フォロー中」で構成されています。また、昨年10月からは自身の興味関心に合わせて「カスタムフィード」を作成することも可能になりました。

 「おすすめ」に表示されることで、フォロワー以外のユーザーにも投稿が届きやすくなり、エンゲージメント向上につながります。表示されやすくなる工夫も含めて、まずはフィードの仕組みを理解しておくと良いでしょう。

 私たちホットリンクが支援した企業アカウントのデータを分析したところ、通常の商品紹介やキャンペーン告知のような一方的な情報発信よりも、ユーザーとの対話を促す投稿の方がエンゲージメント率が高く、「おすすめ」に表示されやすい傾向が見られました。商材やサービスに関する投稿も、ユーザーの参加を促す要素を取り入れるのがお薦めです。

 例えば、クイズや間違い探しなどゲーム要素のある投稿や、「あなたの好きな○○は?」「この中から選ぶならどれ?」といった問いかけ形式の投稿が効果的です。また、「共感したら”いいね”で教えてね」のような投稿も、ユーザーの参加ハードルを下げると同時にエンゲージメントの向上につながります。

 こうした投稿は、Threadsのアンケート機能を活用することで、より手軽に日々の運用に取り入れられます。

画像内の赤枠部分をクリックすると「アンケート」が表示される(画像提供:ホットリンク、以下同)

 また、投稿頻度や投稿形式によってパフォーマンスに差が出ることもあります。

 私たちが支援してきた企業アカウントの実績を踏まえると、お薦めの頻度は、通常の投稿が週3〜4回、引用ポストが週1〜2回です。動画や画像が1投稿に20点まで添付できますが、6〜7枚ほどのクリエイティブを掲載するのが効果的です。一方で、テキストのみの投稿も十分に成果が期待できるため、投稿内容や目的に応じて柔軟に選びましょう。

 効率的な運用という観点では、FacebookやInstagramからThreadsへのクロスポストも活用できます。例えばInstagramの場合は、シェアボタン(紙飛行機のマーク)を使って簡単にThreadsに転用が可能です。

Instagramではシェアボタンを使って簡単にThreadsに転用が可能

 前述した企業アカウントでは、Instagramの投稿をそのままThreadsに流用しても十分なインプレッションを獲得できました。また、Instagramでは伸び悩んだ投稿がThreadsでは意外と反応が良いケースもありました。XとThreadsはどちらもテキスト主体のSNSのため、投稿内容を相互転用しやすいです。

 この他にも、日々の運用をスムーズにしたり、Threads内のクチコミ(UGC)を増やすTIPSをご紹介します。

「注目コンテンツ」と「トレンド」を活用

 Threads内の虫眼鏡マークをクリックすると、アプリ版では「注目のコンテンツ」が、ブラウザ版では「トレンドランキング」が表示されます。

 どちらも「今、Threads内で多く言及されているトピックス」を知れる機能です。自社に関連した話題を見つけたら、投稿に取り入れることで、普段よりも多くのユーザーにリーチできる可能性があります。

ユニークなキーワードを作る

 ThreadsにはXのようなハッシュタグ機能がないため、検索されやすいユニークなキーワードを設定することが効果的です。例えば「SNSマーケティングならホットリンク」のようにブランドと結びついたワードを決め、継続的に使用しましょう。

ユーザーに「感想は〇〇をつけて投稿してください」のように呼びかけることで、UGCの検索にも活用できます。ユニークキーワードの投稿数が増えれば、トレンドに掲載される可能性も上がります。

最新のアップデートを活用する

 Threadsはまだ発展途中のプラットフォームで、機能のアップデートも頻繁に行われています。最新のアップデートを把握し、活用することで、運用工数を軽減できる場合もあります。直近では、以下のような機能が追加されています。

  • インサイト機能の変更:フォロワー100人以上のアカウントでは1週間ごとのデータをまとめて確認できるようになり、投稿のパフォーマンスをより詳しく分析できるようになりました。
  • 下書きの保存数が増加:事前に作成した投稿を保存しておき、適切なタイミングで投稿できるようになりました。
  • 予約投稿が可能に:サードパーティーツールを使うことで、Threadsの予約投稿が可能になり、企業のSNS運用において計画的なコンテンツ管理がしやすくなりました。特に企業アカウントでは適切な投稿スケジュールを設定することで、より安定した運用が可能になります。

Threads広告の本格導入に向けて

 最後に、現在表示テストが行われているThreads広告について触れていきます。本格導入された際は、「先行者利益」とも呼べるメリットを享受できる可能性が高いため、早めにテスト出稿を検討することをお薦めします。その理由を5つの視点で解説します。

1. コストを抑えながら効果につなげやすい

 広告配信はオークション形式で行われるため、競争が激しくなるとCPM(インプレッション単価)やCPC(クリック単価)が上昇します。競合する企業よりも早期に出稿すれば、より低コストでリーチを獲得できる可能性が高いです。競合が少ないと、ターゲット層のオークションに独占的に入札できるため、高い費用対効果が期待できます。

2. プラットフォームの優遇措置を受けられる可能性がある

 広告プラットフォームは、新しいフォーマットや機能を積極的に使ってもらうために、早期導入者に対してリーチを広げる傾向があります。Meta社のプラットフォームでは、Instagramのリール広告を導入初期に活用した広告主が、アルゴリズムの最適化を受けやすかった例があります。Threads広告でも、早期に出稿することで配信面でのアドバンテージを得られる可能性があります。

3. 機械学習の最適化が進みやすい

 広告のパフォーマンスを最大化するには、機械学習の精度を高めることが重要です。早い段階で出稿することで、データの蓄積が進み、コンバージョン最適化が競合よりも早く進む可能性があります。

 また、競合が参入した時点で、すでに「広告アカウントの品質スコア」や「オーディエンスリスト(リターゲティング)」を蓄積できていれば、後発の企業よりも低コストで成果を出せます。

まとめ

 Threadsでの広告表示テストが始まったことで、今後、企業の活用が本格化する可能性が高まっています。先行者利益も期待できるため、広告機能の本格導入に備えて、今からThreadsの運用戦略を検討しておくことが大切です。

 特にInstagram広告やFacebook広告を利用している企業は、一括して管理できる可能性が高く、広告運用の効率化やデータ活用の幅が広がることも期待されます。また、広告の費用対効果を重視する企業にとっては、初期フェーズでの出稿が有益な選択肢となり得るため、テスト的な出稿も検討してみると良いでしょう。

寄稿者紹介

北原一輝氏

安東実里

あんどう・みさと ホットリンク ソーシャルメディアコンサルティング本部。新卒で輸入卸会社に入社し、海外ブランドの日本代理店としてPR・販促業務に従事。主にSNSを活用したオンラインマーケティングを担当。2024年5月にホットリンクへ転職し、コンサルティング部にて、通信・化粧品業界のSNSアカウントの運用代行を担当。


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