アパレル大手TSIのマーケターが語る「ユーザーコミュニティー」でなければ学べなかったこと「Treasure Data Rockstars」が目指すもの

トレジャーデータのユーザーコミュニティーである「Champ」のリーダーに、コミュニティーを通じて得た学びを語ってもらいました。

» 2025年02月10日 07時00分 公開
[伊藤かすみトレジャーデータ]

 2024年末に前後編で寄稿した「トレジャーデータ流ユーザーコミュニティーの作り方」では、当社トレジャーデータにおけるユーザーコミュニティーの歴史と、2024年3月に発足した「Treasure Data Rockstars」の活動、そこで活躍するコミュニティーリーダー「Champ」の役割について紹介しました。

 今回は、Champの一人であるTSIの竹山健司さん(プラットフォーム本部 デジタルマーケティング部 データマネジメント課 課長)が語るコミュニティーへの思いと、2024年6月のユーザー会での講演内容を紹介します。

Champが語るコミュニティーへの思い

TSIの竹山健司さん

 TSIは「ナノ・ユニバース」「パーリーゲイツ」「ジルスチュアート」「ニューバランスゴルフ」など、50以上のブランドを展開しており、デジタル領域においても多数のWebサイトやECサイトを運営しています。

 竹山さんは、製品選定の段階から活用推進まで、4年にわたってTreasure Data CDPと関わってきました。現在ではアパレル業界における顧客データ活用の第一人者として、業界内外から注目を集めています。

 竹山さんはTreasure Data Rockstarsについて、「同じTreasure Data CDPを使っているという共通項があるコミュニティーの中で、クローズドならではの情報交換ができるのが魅力の一つです」と語ります。

 「私自身、SQLには疎かったのですが、独学で学んでいくうちにデータ抽出のスピードや柔軟さに感動を覚えました。学ぶにつれ、施策への反映のスピードが加速しただけでなく、自動化などもできるようになり、トレジャーデータで世界が変わったと実感しています」

 そうした経験から、竹山さんはコミュニティーの価値を強く実感していると言います。

 「データ活用の世界では、理論だけでなく実践から学ぶことが非常に多いんです。特に失敗から学ぶことは大きい。でも、なかなかそういった経験は外部に共有されにません。だからこそ、このコミュニティーでは失敗談も含めて率直な意見交換ができる場にしたいと考えています」

 そして、コミュニティーへの期待をこう語ります。

 「ユーザー同士がお互いに、有益な情報を提供し合える場となることを期待しています。具体的なTreasure Data CDPの活用のヒントを得て、実際の業務に役立てられれば良いですね。私は2020年からのユーザーですし、他にも猛者たちが参加していますので、ノウハウを伝えてお互い成長していくことを目指したいです」

 竹山さんが繰り返し強調していたのは「共に学び、共に成長する」という姿勢です。

 「私たちが直面している課題は、多くの企業でも同じように存在するはずです。だからこそ、お互いの経験や知見を共有し、業界全体のデータ活用レベルを高めていきたい。それが結果として、日本のデジタルマーケティングの発展にも貢献できるはずです」

 このように、単なる情報交換の場を超えて、業界全体の発展を見据えた竹山さんの言葉からは、Champとしての責任感と共に、データ活用の未来への期待が強く伝わってきました。

TSIの4年にわたるTreasure Data CDP活用の歴史

第1回Rockstars会で講演する竹山さん(画像提供:トレジャーデータ、以下同)

 2024年6月に開催されたユーザー会で竹山さんは、2020年10月の「Treasure Data CDP」導入以降、10以上のECサイトでデータ連携を実現し、Web広告からワンツーワンコミュニケーション領域まで、幅広い顧客データ活用を実現したTSIの歩みを語りました。

 「導入のきっかけは、既存のデータ基盤では施策への反映スピードに課題があったことです」と竹山さんは振り返ります。「2018年にGoogle BigQueryというDWHを導入してデータ基盤は構築していましたが、広告メディア、MAツール、CXツールといった各チャネルへの連携部分の構築に一部開発が必要など手間がかかり、施策への反映スピードに課題を感じていました」

 また、運用フェーズにおいても課題があったといいます。

 「セグメント抽出作業と外部メディア・ツールへのリスト配信作業の工数が掛かっていたこと、データがサイロ化していたため、ユーザーIDを一意に捉え、チャネル横断で効率的なアプローチを行うことが難しかったのです」

 竹山さんが思い描いていたチャネル横断のアプローチを実践できるツールがTreasure Data CDPでした。

 「例えば、既存会員に向けて新商品Aの広告配信を一定期間行って反応がない場合は、(興味がないと判断して)メールで新商品Bの案内を行うといったアプローチを行いたいと考えていました。それらに対応できるツールを探していたところ、コネクターの豊富さ、MAへの対応などからTreasure Data CDPに魅力を感じ、導入に至りました」

 TSIにおけるTreasure Data CDPの活用は、段階的な発展を遂げてきました。導入初年度の2020年は、竹山さんが一人でコネクターを活用したターゲティング配信を手掛けることからスタートしました。着実な成果を積み重ねながら、各サイトの情報をTreasure Data CDP上に収集・蓄積していきました。2年目の2021年には活用の幅を大きく広げ、蓄積したデータを用いてTreasure Data CDPの機械学習モデルを構築。これを活用した広告配信など、より高度な施策を展開していきました。この頃には取り組みの成果が認められ、チームの人数も大幅に増強されました。

 同社のデジタルマーケティングは新たな段階へと進化しています。ワンツーワンマーケティングを重要施策として掲げ、体制をさらに強化。2023年から一部のサイトで導入していたTreasure Data CDPのJourney Orchestration機能を本格的に活用し始め、統合されたマルチチャネルのシナリオに基づく、一貫性のある顧客体験の提供を実現しました。

 「活用に際しては、スピード感とセキュリティの担保が必要不可欠でした。そのため内製化に舵を切り、トレジャーデータとパートナー企業のご支援を受けながら、データ活用未経験のメンバーも含めてスキルを向上させてきました。その結果、現在では社内でTreasure Data CDPが広く浸透し、さまざまな施策への活用が進んでいます」

ワンツーワンマーケティングのシナリオ例1
ワンツーワンマーケティングのシナリオ例2

 質疑応答では、「多くのサイトを運営していてWebログも相当なレコード数になると思うが、全て蓄積して活用しているのか?」「データ活用未経験のメンバーのトレーニング方法は?」「Cookie規制にどう対応していくのか?」など、実務的な質問が相次ぎました。竹山さんは一つ一つ丁寧に回答し、時には具体的な数値やツールの使い方まで踏み込んで説明しました。同じ課題を抱えている人たちが集い、すぐに試してみたくなるノウハウを熱気と共に共有できるのは、オフラインのユーザー会ならではの醍醐味と言えます。


 次回は、竹山さんと同じChampの一人であるSUBARU小川秀樹さんの取り組みについてご紹介します。

寄稿者紹介

伊藤かすみ

いとう・かすみ トレジャーデータ Customer Marketing Manager。デジタルエージェンシーやDMPベンダーで営業を経験後、2019年にトレジャーデータに入社。ユーザー向けトレーニングサービス「Treasure Academy」、ユーザー向けメディア「TreasureData User Engagement」、そしてユーザーコミュニティー「Treasure Data Rockstars」の運営に携わる。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

関連メディア