「非常時にピザ1枚無料」のデータがドミノ・ピザのマーケティングに生む好循環とは? CMOに聞くMarketing Dive

2024年10月にDomino'sのチーフブランドオフィサーからエグゼクティブバイスプレジデント兼グローバルCMOに昇進したケイト・トランブル氏。数々のユニークなキャンペーンを主導してきたマーケターにMarketing Diveが2025年の戦略を聞いた。

» 2025年01月13日 08時00分 公開
[Chris KellyMarketing Dive]
Marketing Dive

 Domino'sが米国で展開した「エマージェンシーピザ」キャンペーンは、同チェーンのリワード会員が7.99ドル以上のオンライン注文をすると、30日以内に限り、ミディアムサイズのピザを1枚無料で受け取れるというものだった。多忙であったりアクシデントがあったりして食事の準備が難しいとき、ピザを手軽に注文することで非常時を乗り越えてもらうことを意図していた。また、Domino'sはこのキャンペーンのプロモーションに当たり、ファンタジーフットボールやNetflixの人気コンテンツとのコラボなど、ユニークな施策をたびたび展開した。

ケイト・トランブル氏(画像はDomino'sのプレスリリースより)

 本稿は、Marketing Diveが同キャンペーンを主導したDomino'sのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼グローバルCMOであるケイト・トランブル氏とDomino'sの指定代理店WorkInProgress共同設立者兼最高クリエイティブ責任者のマット・タルボット氏に行ったインタビューの後編(※)だ。

 なお、インタビューは内容を明確かつ簡潔に伝えるため、編集を施している。

※前編:「ドミノ・ピザのCMOが語る『イカゲーム2』タイアップ秘話

ドミノ・ピザがデータから学んでいること

Domino'sはNFL選手のステフォン・ディッグスと提携し、ファンタジーフットボール参加者向けに100万ドル相当のエマージェンシーピザを無料提供するキャンペーンを実施した(画像はDomino'sのプレスリリースより)

――エマージェンシーピザから得られるロイヤルティーデータは、他のマーケティング施策にどう活用されていますか。

トランブル これは良い循環を生み出します。当社の戦略「Hungry for MORE」は、消費者に「もっと」提供すれば、彼らは「もっと」返してくれるという考え方に基づいています。2015年に最初のロイヤルティープログラムを開始しましたが、このときは特典を得るために6回注文する必要がありました。これはさすがにハードルが高過ぎました。現在のプログラムでは、注文は2回だけで済み、支払い額も10ドルから5ドルに引き下げました。この結果、新規顧客やライトユーザーへのリーチが拡大しました。さらに、新商品の投入にもロイヤルティー特典を活用し、消費者に新たな価値を提供する手段となっています。もはや当社の戦略の一部のなっているわけで、非常に喜ばしいことです。

――2024年の飲食業界では、消費者にとっての価値が最優先事項となりました。これについて、どうお考えですか。

トランブル 価値とは、単に支払った金額のことではなく、得られるものです。消費者は当然のことながら、その全てを求めています。消費者は、温かくておいしい商品を求めています。正確さを求めています。品質を求めています。この点は私たちの年間計画に大きく影響し、フランチャイズオーナーの意欲を引き出す動機にもなりました。しかし、これはバランスが求められることでもあります。

――ケイトさん、あなたは昨年、Domino'sのグローバルCMOに就任されました。2025年のアジェンダを教えてください。

トランブル 「Hungry for MORE」戦略を、米国だけでなく世界規模で展開する方法を模索しています。私たちは世界90以上の市場に進出しています。この規模を生かして、各市場でさらなるイノベーション、おいしい料理、優れた価値を提供していきたいと考えています。私にとって、グローバルな側面は極めて重要です。

 私たちは基盤となる多くの賢明な取り組みを行ってきましたが、特にイノベーションをさらに加速させることに非常に期待しています。イノベーションは常に投資すべき分野だと考えています。エキサイティングなニュースを伴う製品面のイノベーションだけでなく、技術面のイノベーションもそうです。私たちの売り上げの85%以上はEコマースによるものであり、私たちは常にそこに投資してきました。この分野においても、さらにエキサイティングなイノベーションをお届けできるでしょう。

――マットさん、2024年はOmnicomによるInterpublic Groupの買収という大きなニュースで幕を閉じました(関連記事:「Omnicomが Interpublic Groupを買収 世界最大級の広告会社が誕生へ」)。これは独立系エージェンシーとしての御社の立ち位置にどのような影響を与えますか。

タルボット 大手では難しい「意図的な対応」「専任スタッフの確保」「知識の蓄積」など、独立系ならではの利点を提供できます。

 もちろん、この影響を受ける人たちには同情しますし、統合が進むことは避けられないでしょう。その点を喜ぶつもりは全くありませんが、これにより、小規模で独立したエージェンシーの利点がさらに明確になると感じています。つまり、クライアントのビジネスを本当に大切に考え、目の前のクライアントにより集中する姿勢です。公開企業である大きな持株会社が成長の圧力を受け続ける状況とは一線を画しているのです。

 私たちにはそのようなプレッシャーはありません。なぜなら、私たちはただ集中して着実に成長し、大手クライアントから目を離さず、可能な限り最高の人材を揃えたいと決めたからです。広告はオープンな市場で取引されるものなので、一貫性を保つために枠にはめられてきました。しかし、それは必ずしも仕事や人々にとって最善とは限りません。広告は、そのように機能するようには作られていないのです。

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