日本広告審査機構(JARO)は、広告に関する統計データを年2回公表している。今回は、2024年度上半期の統計を発表した。
広告に対する苦情を受付・審査している日本広告審査機構(JARO)は、広告に関する統計データを年2回公表している。2025年1月7日、2024年度上半期の統計(対象範囲は4〜9月)が発表された。
2024年上半期の総受付件数は5311件で、苦情は4095件だった。苦情件数は2020年度をピークに年々減っている。
苦情4095件を業種別に見ると、上位は医薬部外品、健康食品(保健機能食品以外)、オンラインゲームとなった。医薬部外品の苦情例として、「1回限り、解約不要、追加料金一切なし」とうたいながら実際には購入画面で定期購入契約となることが分かりにくく表示されている、解約に追加料金がかかるといった事例が挙げられた。シミを表現した加工画像への不快感も多かった。
健康食品(保健機能食品以外)や保健機能食品では精力増強をうたう広告への苦情が急増した。健康食品は前年同期9件に対し80件、保健機能食品は同0件に対し27件。多くが性的なビジュアルを使用しており、卑わいである、広告を非表示にすることができない、一般的なサイトを閲覧していて表示されるなどの苦情が多数寄せられた。
オンラインゲームについては、卑わいまたは残虐な表現に対するもの、広告とゲーム内容が異なるものに対しての苦情が目立った。
苦情の媒体別上位はインターネット、テレビ、ラジオの順で前年同期と同様だった。インターネットは微増で、他の媒体は減少した。
インターネットの苦情2000件の内訳は、医薬部外品195件(前年同期189件)、オンラインゲーム139件(同104件)、「電子書籍・ビデオ・音楽配信」136件(同108件)が上位だった。
一方、テレビへの苦情1652件の内訳は、医薬品58件(同77件)、自動車57件(同65件)、加工食品53件(同57件)でいずれも減少した。内容別では「音・映像」の不快感849件(同1031件)、社会規範78件(同165件)と、いずれも減少した。これは前年度にオンラインゲームのCMに対し、アニメで描かれる少女の服装などが不快、児童買春を想起させるといった苦情が多かったためとJAROは説明している。
苦情の内容別では、「表示」「表現」が減少する一方で「手法」が若干増加した。表示では「価格・取引条件等」が196件減少し、「品質・規格等」は前年同期並みだった。表現では健康食品の露骨な性表現に関する苦情が増加し、「音・映像」「差別・ジェンダー」「社会規範」の件数も増えた。手法では、カメラのフラッシュや攻撃的な内容、閉じられない広告などへの苦情があった。表示案件の広告主数は2019年度上半期の1469事業者から2024年度上半期は1156事業者に減少したが、苦情件数はそれほど減少していないため、少数の事業者が多数の不適切広告を行っていると考えられる。
2024年度上半期は11件を審議し、見解を発信した。内訳は厳重警告8件、警告2件、要望1件、助言0件。委員会での審議を経ずに事務局が広告主に改善を促す事務局文書発信は8件だった。見解発信事例は、2011年度からインターネットが最多媒体で、年度によっては9割以上を占める。消費者の誤認を誘って契約させようとする著しく不適切な事例は、医薬部外品、化粧品、健康食品に多く、それらに共通してよく見られるのは下記のような表示だ。
上記のような表現が複数含まれているものが典型例だが、その表現にも変化が見られる。かつては医薬品のような効果をうたった明らかに違法なディスプレイ広告が多かったが、最近では生理的不快感を覚えるビジュアルのものが増え、さらに2024年度上半期はは、精力増強をうたった性的な表現のものが急増している。
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