勘違いマーケター戦慄 消費者の約半数は「広告主に無視されている」と感じている件Marketing Dive

「データに基づく顧客理解」「ハイパーパーソナライゼーション」などマーケティングかいわいでは威勢のいいキーワードが飛び交うが、現実には広告主に無視されていると感じる人も少なくないようだ。

» 2024年12月30日 08時00分 公開
[Marketing Dive]
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 iHeartMedia と Pushkin Industries の最近のデータによると、より正確なターゲティングとパーソナライゼーションが進む時代においても、米国の消費者の44%は「ほとんどの広告主に無視されている」と感じている。特にこの傾向が強いのは、白人で郊外に住む世帯収入10万ドル以上の消費者だ。これは、一部のマーケティング担当者の想定には反するかもしれない。

 「これらの消費者は都市部、郊外、農村に広がっており、白人の比率が高く、やや高所得層に偏っています。ブランドが自分たちの消費するメディアに登場せず、彼らの価値観や優先順位を理解も反映もしていないと感じている消費者層はさらに大きくなります」とメールでコメントを寄せたのは、iHeartMediaのCMOであるゲイル・トロバーマン氏だ。

消費者とマーケターの意識のズレ 何が問題?

 AudioCon 2024で発表されたこの調査(外部リンク/英語)は、いくつかのアンケートの結果を基にしている。Morning Consultによるオンライン調査は2024年5月3日から5日に実施され、2202人の消費者から回答を得た。また、Critical Mass Mediaによる調査は2024年5月30日から6月2日に行われ、1651人が回答した。一方、マーケティング担当者を対象としたAdvertiser Perceptionsの調査は2024年5月7日から13日に実施され、年間1000万ドル以上の広告予算を持つ237人が回答した。

 「無視される消費者」カテゴリーに属する人々は、圧倒的に白人である(全体の63%)。次いで多いのがヒスパニック系(17%)、黒人(15%)、アジア系(6%)である。一方、「無視されていない」と感じる消費者の内訳は、白人が58%、黒人が22%、ヒスパニック系が13%、アジア系が4%であった。

 居住地別に見ると、「無視される消費者」の40%が郊外に住み、32%が都市部、27%が農村部に住んでいる。「無視されていない」消費者についても同様の傾向が見られ、郊外が40%、都市部が38%、農村部が22%である。

 無視されていると感じる消費者にアプローチできるマーケターには、大きなリターンの可能性がある。75%の「無視される消費者」が、自身の価値観と一致する店舗で買い物をしたいと回答し、同じ割合が、価値観を共有するブランドを支援するために追加で費用を払う意思があると答えている。また、72%が「自分を無視するブランドからは購入したくない」としている。

 iHeartMediaのゲイル・トロバーマンCMOは、「マーケターは若者への執着が強い傾向がありますが、次世代顧客の構築は重要であるものの、多くのブランドにとっては、幅広いオーディエンスにリーチすることが増収の鍵となります。最もシンプルなアプローチは、手頃なマスリーチメディアをメディアミックスに加え、それがどの層に響くかを見極めることかもしれません」と述べている。

「私」から「あなた」へ

 マーケターはターゲティングや個別化が「無視される消費者」にリーチする方法になると考えがちだが、実際の数字はその意図通りに機能していない可能性を示唆している。消費者の68%がターゲティング広告に追いかけられることを嫌い、AIを使った個別化に関しては2倍以上嫌悪感を示している。それにもかかわらず、今年はパーソナライズやハイパーターゲティングに95億ドルが費やされる見込みだ。

 また、マーケターと消費者の価値観の間には大きな隔たりがある。例えば、宗教を優先事項に挙げる消費者はマーケターの2倍であり、法と秩序を重視する消費者もマーケターより1.75倍多い。

 「全員が家族、安全、健康を重要視している一方で、平均的な消費者は法と秩序、宗教、言論の自由をより重視しています。しかし、こうした価値観が、私たちのメディアやクリエイティブの選択に反映されていないと感じているのです」と、トロバーマン氏は述べている。

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