2024年ホリデーシーズン、米企業はどう挑む? マーケターが直面する課題とはMarketing Dive

消費者の記録的な消費意欲を背景に、2024年のホリデーマーケティングキャンペーンは、メディアミックスの多様化やAI技術の活用実験を反映している。

» 2024年11月15日 08時00分 公開
[Jessica DeyoITmedia マーケティング]
Marketing Dive

 感謝祭やブラックフライデーが目の前に迫っている。2024年のホリデーシーズンは消費者の消費意欲が高まり、記録的な支出が予想されている。この野心的な支出予測に合わせ、ホリデーマーケティングキャンペーンにおいて話題のテクノロジーや多様なメディア戦略に注目するブランドが増えている。

意外と買う気満々な消費者をどう攻略する?

 2024年第4四半期は消費者が財布のひもを大きく緩める意向があることが調査で示唆されており、ブランドにとって近年よりも明るい時期になる可能性が高い。一方で、消費者の行動や嗜好は変化し続けており、マーケターは依然として課題に直面している。ブランドは最新のトレンドや新しいチャネルに対応しつつ、ホリデーキャンペーンで適切な方向を打ち出す必要がある。また、消費者がよりお得な商品を求めてブランドに対するロイヤルティーを失っていることも課題である。そうした中、販売を成功させるために喜びと価値を両立させたメッセージを発信しようと試みるブランドもあれば、人工知能(AI)の力を借りてこのチャンスをつかもうとするブランドもある。

 「全体として、明るい見通しです。経済への信頼感が高まり、ホリデーシーズンに向けて消費者の支出意欲が増しており、記録的な支出が見込まれています」とDeloitte Consultingの主任であるブライアン・マッカーシー氏は語る。

 Deloitteの2024年ホリデーリテール調査(外部リンク/英語)によると、2024年の消費者の平均支出額は1778ドルで、前年より8%の増加が予想されている。Deloitteが引用した米国国勢調査局のデータによると、2023年11月から2024年1月のリテール売上高は1兆5400億ドルに達し、前年比4.3%の成長を遂げた。支出額の増加は、経済見通しの明るさと物価上昇の認識に一部起因しており、経済的な懸念が完全に解消されたわけではないにもかかわらず、消費者が財布のひもを緩める心構えができていることを示す兆候となっている。

ホリデーシーズンの見通しは水晶玉をのぞくようなもの

 TvScientificとRockerboxの調査結果によると、経済の楽観的な見通しを反映して、このシーズンのマーケターの3分の1以上が前年よりも多くのホリデー広告予算を確保している。しかし、賭け金の増加には代償も伴う。同調査で、マーケターの60%が、測定可能な成果と投資収益率を達成するためのプレッシャーが増していると感じていると回答している。

 消費者行動の変化が進む近年、ホリデーシーズンの成果に対する自信には不確実性が漂っていると、広告代理店BBH USAの戦略ディレクターであるハリー・ギルド氏は語る。

 「10年ほど前のホリデーシーズンは毎年決まった形式で親しみやすいものでしたが、今では毎年水晶玉をのぞき込むような状態です」とギルド氏は語る。

 Deloitteによると、今年の優先事項のうち、贈り物への支出は昨年と比べてほぼ横ばいになると予想されているが、衣類やアクセサリーは引き続きトップとなっている。その代わりに、多くの消費者は、イベントの主催などの体験に重点を置く傾向が強まっており、この分野の支出は前年比16%増加すると予測されている。主な購買先はオンライン小売業者(71%)と量販店(55%)となっている。

 TvScientificによると、買い物客にリーチするため、広告主の41%がコネクテッドTV(CTV)への支出を増やす予定だ。このチャンネルは2023年のホリデーキャンペーンで最も成果を上げているチャンネルとされ、ソーシャルメディアが次点であった。広告主の大半(54%)がホリデー向けキャンペーンを第3四半期に開始する計画を立てており、前年の51%からわずかに増加している。

 ホリデー広告において広告のタイミングやチャネルのミックスを考慮するのは基本中の基本だが、2024年は大統領選挙があったことを忘れてはならない。TVScientificのレポートによると、広告主の半数(50%)は、政治的対立が季節限定キャンペーンの認知度に影響を与えると考えており、選挙によりホリデーシーズンが短縮される可能性があると見ている。

マルチチャネルが「必須」である理由

 Deloitteによれば、広告主が今シーズンで目立つためには、マルチチャネルでの存在感が「必須」となる見込みだ。消費者が幅広いチャネルで買い物をする傾向は強まっている。同時に、オンラインと実店舗で一貫性のある体験を提供する小売店に対して、より高いロイヤルティーを持つという。

 True Religionは2024年、新規顧客の獲得を目指して、広範なメディア戦略を採用している。スーパースターのミーガン・ジー・スタリオンやラッパーのハンクソーとのタイアップを含む同社のキャンペーンは、店舗内とオンラインで展開され、CTV、YouTube、TikTok、インスタグラム、Facebookなどの編集、インフルエンサー、有料チャンネルを横断した屋外広告やコンテンツが含まれる。このキャンペーンには、同ブランド初の音声広告も含まれ、PinterestやRedditでのテストも実施される予定だ。

 True ReligionのCMOであるクリステン・ダーシー氏は、「ブランドが活用する各チャネル全体に一貫した方向性を持たせること、例えばブランドの一貫性を維持するためには、特定の色やメッセージの繰り返しが鍵となる」と語る。一方で、各プラットフォームに合わせたネイティブコンテンツ戦略も同様に重要であり、各チャネルで自然に見えることが求められるとも述べた。

 「おそろいの荷物のようなものだと思っていますが、もちろんサイズは異なります」とダーシー氏は説明する。「私たちと接する場所に応じて、声のトーンやビジュアルを通じてブランドの一貫性を感じることはできます。しかし、コンテンツはチャネルに応じて異なる形で計画し、それぞれのプラットフォームに根付いたものにする必要があります」

 ロイヤルティーが脅かされている今、複数のチャネルを横断するマーケティングもまた、消費者に支持される鍵となるかもしれない、Deloitteによると、消費者の62%が低価格ブランドに乗り換える意向があり、25%は「デュープ(※)」を探していると回答している。また、消費者の38%が10月の販促イベントで買い物をする予定だが、支出の大半は11月下旬になると予測されており、タイミングも重要かもしれない。

※編注:安価な模造品。

(続く)

© Industry Dive. All rights reserved.

関連メディア