SEOは総合格闘技である――「SEOおたく」が語る普遍のマインド「SEOおたく」が語るこれからのSEO

SEOの最新情報を発信する「SEOおたく」の中の人として知られる著者が、SEO担当者が持つべき普遍のマインドについて語る。

» 2024年11月07日 08時00分 公開
[竹内渓太LANY]

新刊発売:「強いSEO “SEOおたく”が1000のサイトを検証してわかった成果を上げるルール」(MdN)

 「初めて会社のSEO担当になったが具体的に何をしたらいいのかが分からない」「自分のWebサイトをもっと改善したい」などの悩みを持つ方に向けて、正しいSEOの戦略や戦術の立て方を理解してもらい、読んだ後すぐに自分の担当サイトのSEO改善ができる実践的な内容を盛り込んだ本を書きました。

 SEOの最新情報を発信する「SEOおたく」の中の人として、SEOコンサルティングをはじめ、幅広いデジタルマーケティングを提供する株式会社LANYの代表として、これまで1000のサイトを検証した実績と経験から「確実に成果が上がるSEOの運用ルール」を余すことなく伝えています。


 私は2018年からSEOに携わり始めましたが、Googleのアルゴリズムは年々進化し続け、SEOに取り組む仲間(ライバル)のレベルも高くなり続けています。そのような状況の中で、SEOがますます「総合格闘技化」しているように常々感じます。

SEOは昔と今でどう変わったのか?

 昔のSEOは「職人技」と見られることが多かったかと思います。当時は「SEOに強い記事が書ける」「Googleが評価するHTML構造がわかる」「誰も知らない手法で被リンク獲得ができる」など、SEOという限られたフィールドで有効なスキルそのものが武器となり、成果が出せる人材の要件でもありました。

 しかしながら、現在はSEOに関する情報の非対称性がなくなり、過去に職人技とされていた内容も、Webに関わる人なら誰でも知っているような時代になりました。

昔と今でSEOはどう違うか(図版は筆者作成、以下同)

 誰もがある程度の情報を持つようになった結果、世の中のWebサイトのほとんどがSEOのベストプラクティスを実装するようになりました。その状況下でもSEOで成果を出していくためにはベストプラクティスの先にある世界、すなわち競合と同質化するだけにとどまらず競合優位性を構築する世界で戦う必要があります。

 私はこのSEOの競合優位性を構築する部分が「総合格闘技力」だと考えています。一般的に格闘技は打撃系の技同士で戦うなど、一定の制約の中で戦います。これに対して総合格闘技はパンチもキックも投げ技も固め技も、ほぼ何でもありです。SEOも総合格闘技として捉えなければ、勝つことができなくなっています。

総合格闘技力が競合優位性を生みだす

SEOに強いのは当たり前 幅広い知見を身につけよう

 つまり、いわゆるSEOと呼ばれる領域は強みとして当たり前のように突き抜けつつ、これからはその他周辺の横のスキルや知見も身につけた「T字型人材」でなければ、SEOで大きな成果を上げることはできません。

 具体的には次のような領域に関するスキルや知見も積極的に身につけましょう。

現在のSEO担当者に求められるスキルや知見

 例えば、当たり前の被リンク施策を競合と同様に完了させた後に、広報や営業も行いながら、さらなる被リンク獲得が実現できるのか、他にも、SEOだけではコンバージョンにつながらない場合、他の広告施策やMA、CRMと掛け合わせて事業全体としてのコンバージョン数を最大化するための施策を検討するなど、SEO以外の幅広い知見も活用して戦う必要があります。

SEOはチームスポーツ 社内全員で協力して取り組もう

 ただし、一人のSEO担当者が、パンチ(記事作成やHTML構造の把握)も、キック(データ分析、デジタルマーケティングの知見)も、組み技(デザインやプロダクト開発)も、全部できるなんてことは、まずありません。なんでもできるスーパースターはたまにしか見かけません。

 ここで重要なのが、SEOで大きな成果を出す上で、一人で戦う必要はないということです。SEOを「チームスポーツ」として捉え、各分野のスペシャリストを巻き込むことで、より大きな成果を出していきましょう。そのためには適切な体制を組む必要があります。

SEO担当者はチームにおける司令塔となるべし

 かつてのSEOが「職人技」だったころの名残りで、SEO担当者と聞くとパソコンの画面に向かって黙々と作業をする「孤高のスペシャリスト」を思い描く人は多くいます。

 しかし、現在のSEOはチームスポーツとして取り組む必要があるため、SEO担当者はむしろ「司令塔の役割を担うジェネラリスト」として多くの関係者を巻き込み、施策を推進する方がイメージとして正確だと思います。

 各専門家に何を目的に、どのように動いてもらうのかを明確に指示し続けることで、一人では創出できないインパクトのある成果を挙げることが可能になります。

チームの士気を高めるためにできる工夫

 一緒に働く仲間と良い関係性を築き、司令塔として連携をとるために、下記のような取り組みから始めましょう。

  • SEOプロジェクトに関わる人々と定期的に話す(ランチなどもおすすめ)
  • 社内向けに「SEOとは何か」を伝えるための勉強会を開催する
  • SEOで少しでも成果が出たら全体に共有してモメンタム(勢い)をつける

 小さなことの積み重ねにはなりますが、取り組みを通して社内のSEO理解度が高まることが重要です。SEO担当者には、頭ではやるべきと分かっていても、普段の業務からは遠く、なかなか手が付かない施策もあるものです。SEOにチームで取り組むことができるようになれば、こうした施策も取りこぼすことなく、より大きな成果を追い求めることができます。

チーム全体でSEOを理解を深めると、取り組みが自発的に推進される

 特に小〜中規模組織であれば、組織の全員がSEOへの理解を深めておくことで、下記のように、勝手にSEOが強くなっていくような状態も作れます。

  • エンジニアが検索エンジンに読み解きやすいコードを書いてくれる
  • ライターが検索意図を捉えたSEOに強い文章を書いてくれる
  • 広報担当者が権威性のあるメディア露出の機会を獲得し、質の高い被リンクにつながる
  • 営業担当者がお客様の一次情報を多数収集してサイトに反映し、サイトの独自性が高まる

 組織全体でSEOの重要性を理解・浸透させることで、全てのメンバーが各々の業務領域において、SEOの成長を前提とした最善のアクションを自発的に行えるようになります。

SEOをRPGと捉えて「ゲーム感覚」で楽しめる人が一番強い

 最後に伝えたいのが「結局はSEOを楽しんでる人が強い」という点です。SEOに限らず、あくまでも仕事として割り切っている人が熱狂的に楽しんでいる人に勝つのは難しいものです。

 SEOに強いT字型人材になり、周りを巻き込んでチームを動かせる能力があれば、それだけでSEOプレイヤーの中でトップ20%には入れると思います。ただし、トップ3%に入っていくには「SEOをゲーム感覚で楽しむこと」が、重要な要素になっているように私の目には映ります。

SEOは目的達成のために仲間と協力してクリアを目指すRPG

 SEOは「RPG(ロールプレイングゲーム)」のカテゴリーに分類されるゲームだと私は考えています。RPGの定義は、次のように捉えています。

  • ゲームにストーリー性があること
  • プレイヤーや仲間が成長を遂げる要素があること
  • 特定の目的達成を目指すこと

 SEOの目的は多くの場合、検索エンジン経由の集客数の最大化に置かれます。その目的を達成するために仲間(SEO担当者、デザイナー/エンジニア、ライター/ディレクターなど)と一緒にWebサイトを成長させていきます。ストーリーの途中には、同じ目的を持ったライバル(競合サイト)が立ちはだかったり、時に革命(Googleコアアルゴリズムアップデートなどゲームルールの変更)が起きたりもします。

 先述の通り、今のSEOで成果を出すためはやるべきことが多いため、それぞれの領域を得意とするメンバーを巻き込む必要があります。そのため、「ゲームクリアに向けて、パーティーを組んでワイワイ協力できるプレイスタイルの方が好き」なタイプの方が、今のSEOをより楽しむ適性があると言えるでしょう。

SEOは攻略法も全クリもないため、一生楽しめる

 またSEOというRPGゲームには、全クリ(全ステージクリア)もなければ、攻略本もありません。何をすればその目的達成に近づくのかは、手探りで探し続ける必要があります。

 一度検索エンジン経由の集客数が増えたとしても、Googleのアルゴリズムアップデートや新たな競合プレイヤーの参入などで、常にクリア率は変動します。つまり、検索エンジンがある限り楽しみ続けることのできる名RPGであると私は考えています。

 SEOを全クリのないRPGであると捉え、目的達成に向けて、仲間と一緒にWebサイトを育てながら、楽しくプレイし続けましょう。同じゲームを楽しむ仲間として、時に検索結果上で戦う日が来るかもしれませんが、そのときには私も負けないように努力します。楽しむことが大きな成長につながりやすいと思いますので、まずはSEOを楽しんでいきましょう。

寄稿者紹介

竹内渓太

竹内さん

たけうち・けいた LANY代表取締役。1994年愛知県生まれ。山梨県立韮崎高校ではサッカー部に所属しインターハイ山梨県予選準優勝、インターハイ山梨県予選優秀選手賞受賞。愛知県立大学外国語学部英米学科を卒業後、2018年にリクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やB2Bマーケティングなど多種多様な業務を経験。2020年、26歳でLANYを創業。Webメディア、サービスサイト、データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでいる。「SEOおたく」の名前で2018年からSNSでノウハウを発信。現在Xのフォロワーは約2万人。


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