B2Bマーケターの多くが活用するホワイトペーパーですが、実際にはうまく使いこなせていない人が多いようです。ホワイトペーパーの役割と有効な3つの使い方を、資料作成代行のエキスパートが紹介します。
B2B企業のマーケティング施策としては定番のホワイトペーパーですが、「とりあえず制作してみたものの、どう活用すれば効果が出るか、実は分かっていない」というマーケティング担当者も多いのではないでしょうか。
著者が経営するConeは資料作成代行サービス「c-slide」を運営しています。これまでに累計850社以上の資料作成に携わっており、事前の調査から構成、文章作成、分析、活用まで、幅広く支援してきました。中でも7、8割がB2Bセールス・マーケティング関連の資料となっています。
ホワイトペーパー作成に関しては、支援実績数以上に数多くのご相談にも対応してきました。もちろん、弊社自身もホワイトペーパーを活用しています。自社と顧客、その他の会社のホワイトペーパーに数多く触れてきた経験から、うまくワークする使い方とそうでない使い方を分類することができたため、ここで読者の皆さんにホワイトペーパーの有効な使い方を共有したいと思います。
ホワイトペーパーはマーケティング担当にとって有効な手段の一つです。しかし、使い方を間違えれば、ただ制作コストがかかっただけの無用の長物ということになりかねません。そこでまずは、ホワイトペーパーの役割を明確にしておきましょう。
一般的な認識では、ホワイトペーパーは以下のような手段で活用されることが多いでしょう。
マーケティング担当者の多くは、ホワイトペーパーをどれだけ多くの人にダウンロードしてもらうか(リード獲得)、どのようにして商談につなげるか(商談獲得)、試行錯誤していると思います。しかし、おそらくそれはうまくいかないことが多いはずです。
なぜなら、ホワイトペーパーをダウンロードする人は「購買意思」がないからです。実際、弊社がWebサイトに設置しているホワイトペーパーリードの直接的なコンタクト率(ダウンロードして連絡が取れる割合)は0.2%にすぎません。一方、サービスサイトに設置しているサービス紹介資料リードの直接的なコンタクト率は35%前後となっています。その差は175倍。つまり、ホワイトペーパーはサービス紹介資料よりもはるかに効率が悪い手段であると言わざるを得ません。
では、リードや商談獲得の手段でないならホワイトペーパーの役割とは一体何なのか。それは「特定領域で、自社が【信頼できる会社】だと認知されるためのもの」です。リード獲得や商談獲得ではなく、「信頼獲得」こそがホワイトペーパーの役割なのです。
目的をリードや商談に置くのではなく信頼獲得に置くことで、「役に立つ情報を提供し、業務に詰まったときに再度コンテンツが閲覧され、結果的に第一想起を獲得する」ことができるようになります。つまり、
ホワイトペーパーDL → ナーチャリング → 商談化
ではなく
ホワイトペーパーDL → 第一想起獲得 →→→→→→→→→ 商談化
という流れで商談化するのがホワイトペーパー施策です。ホワイトペーパーの役割はサービスに興味を持つ少数の人を短期的に商談化することではなく、今のところサービスに興味はないものの課題はある多数の人を、中長期的に商談化することにあるのです。
では、どのように活用すれば信頼され、第一想起が獲得できるのか。ホワイトペーパー施策で成果を挙げるための使い方は以下の3つです。
1つ目の使い方は、オウンドメディア記事のCTA(コールツーアクション)としてホワイトペーパーを設置すること。ポイントは、記事内容に応じて設置するホワイトペーパーを変えることです。営業管理をテーマに執筆された記事ならホワイトペーパーは「営業管理シートと使い方」に、マーケティング戦略をテーマに執筆された記事ならホワイトペーパーは「マーケティング施策集」に文脈を合わせる必要があります。
ここで、サービス紹介資料などの直接的な自社の紹介系のホワイトペーパーを設置してしまうと、先述の「信頼できる会社」には該当せず、第一想起も獲得することができません。あくまでも読者(ターゲット顧客)にとって「有益な情報」である必要があります。
c-slideを運営する中で分かった、CVRが高くなるホワイトペーパーの傾向は次の2つです。
つまり「業務のタイミングが来た際に、再度参考にしながら使えるコンテンツ」であることが、CVRを高くするための要素と言えます。例えば、以下のようなコンテンツが該当します。
当社のオウンドメディア(外部リンク)でも「営業資料 作り方」をテーマに執筆した記事内で、営業資料のテンプレートを設置しています。
ここから直接問い合わせにつながるわけではありませんが、「このテンプレートを活用して営業資料を作成したが結局プロに構成から相談したい」という依頼が毎月来ています。この現象こそが「信頼できる会社だと認知され、第一想起が獲得できている」ということです。
「ホワイトペーパーでは個人情報を入力させるかどうか」という問いをよく受けますが、弊社は信頼度を最大化するためには誰でもストレスなくダウンロードできる状態にするため、基本的には不要だと考えています。
次に、特定のターゲットに対して作成したホワイトペーパーをメルマガで配信するという普遍的な使い方について紹介します。
「ホワイトペーパーをメルマガで配信する」と聞いて当たり前のことと思う方も多いかもしれません。そういう方が思い浮かべるのは以下のようなプロセスではないでしょうか。
このプロセスで商談化することは難しく、インサイドセールスの工数が無駄になってしまうだけです。営業資料を送りつけてこちらから架電するのではなく、“お役立ち”資料を提供してお客さまからの相談を待つのがホワイトペーパー施策です(もちろんMAツールでのスコアリングがホットリード基準に達していたら営業アプローチをしても良いでしょう)。
お役立ち情報を定常的に提供して第一想起を獲得し、相談に備えるには、テーマと頻度が重要になります。
お役立ち情報になるテーマは大きく分けて以下の4タイプです。
実際に弊社がクライアントから依頼を受けて作成し、CVRが高かったホワイトペーパーのタイトル例を挙げておきますので参考にしてみてください。
頻度は月1〜2本を目標に取り組むことをお薦めします。この頻度を継続するためには「ネタ切れ」と「コンテンツ制作リソース不足」が課題になります。
コンテンツ制作リソースは外注や採用で対応するしかありませんが、ネタ切れについては、以下のようなトリガーを設定することで解決できます。
例えばセミナー開催後にセミナー内容を整理したホワイトペーパーを制作したり、営業チームとの定例会議で「既存・見込み客からの質問・疑問」を回収し、その回答をホワイトペーパー化したりといった具合です。
最後は、インサイドセールスが対1顧客に送付するというもの。一対多数への情報提供によるリード獲得以上に、個々の顧客にとって役に立つ情報を提供することで商談の重要性をあらためて説明します(このホワイトペーパーを提案資料・営業資料と呼ぶ場合もあります)。
ホワイトペーパーを公開したりメルマガで送付したりしても成果が出ないときは、既存リード向けにカスタマイズしたホワイトペーパーを制作・送付しましょう。
繰り返しますが、ホワイトペーパーの役割は「【信頼できる会社】だと認知され、第一想起を獲得し、中長期での大量の商談化を目指すもの」です。信頼できる会社として認知される最も有効な手段は「あなたが一番欲している情報を届ける」ということです。
過去獲得したリードの中で、相談内容に質問が記載されているものがいくつかあるはずです。その相談内容に答える形でホワイトペーパーを制作し、送付します。例えば「内製か外注で迷っているので料金が知りたい」といった相談内容で商談に至っていないリードには「内製の場合と外注の場合のコスト・期待効果シミュレーション」をまとめた資料を制作・送付します。
このように、知りたいことに100%合致する“あなた向け”の情報を提供することで、信頼を得ることができ、商談化の可能性が生まれます。
見込み客が知りたい内容が想定できない場合は、とりあえず以下のテーマで作成します。
以下は実際に弊社が「インサイドセールスが送付する資料」としてクライアントに作成した資料フォーマットです。
ここまで、3つのホワイトペーパーの使い方を紹介してきました。
最初に取り組む際は3→2→1の順をお薦めします。理由は「潜在顧客のニーズを捉えるのは難しいから」です。1や2は見えない多数の潜在層のニーズを想像しないといけないのに対して、3は目の前の一人の顕在層のニーズを聞けば良いだけです。
顧客向けに作成したホワイトペーパーを同じような状況にある他の見込み客に送付すれば、ニーズを満たせる可能性があります。
評価が高い、あるいは成果につながったホワイトペーパーをメルマガで送付したり、オウンドメディアのテーマが合致する記事に設置したりすることで、無駄のない施策実行を実現できます。
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