食品メーカーの商品開発やマーケティング支援などを行う味香り戦略研究所は、2024年の食品・飲料の市場商品の味覚データを分析し、味のトレンドを調査した。
食品メーカーの商品開発やマーケティング支援などを行う味香り戦略研究所は、2024年の食品・飲料市場の商品の味覚データを分析し、味のトレンドを調査しました。
味香り戦略研究所は人の舌をモデル化した「味覚センサ」を用いて食品の味を分析し、その味わいを見える化しています。具体的には、「おいしさ」の重要な構成要素となる基本的な味覚(旨味、苦味、塩味、酸味、甘味、渋味)と先味(人が口に入れたときに感じる味わい)、後味(飲み込んだ後も感じる味わい)を数値化。今回のレポートでは「うま味の余韻」は後味、それ以外は先味の項目を採用しています。各グラフの縦軸が後味である「うま味の余韻」、横軸が先味の項目です。
今回の調査から、特に緑茶飲料、即席麺(カップ)、鍋つゆの3カテゴリーにおいて、日本人が好む味わいである「うま味」が強められている傾向が明らかになりました。
緑茶飲料市場では2024年春にメーカー各社が一斉にスタンダード商品のリニューアルを発表。リニューアル後は総じてうま味の余韻が強くなり、消費者に対して余韻の満足感を提案していることがうかがえます。中でもサントリー「伊右衛門」はうま味の余韻に加えて味の濃さも増強され、価格に敏感な消費者に訴える高コスパな味を提供しています。
もともとうま味・塩味の強い商品が多い即席麺(カップ)のカテゴリーですが、減塩を意識しながらおいしさを確保するために「うま味」が注目されています。各社リニューアル前後の味データを比較すると、うま味の余韻とコク・厚みが強まり、満足感が高まる味バランスに変化しています。特に日清食品「日清麺職人」はうま味の余韻が大幅に強化され、コク・厚みも強くなっています。
鍋つゆは近年、味の多様化が進み、一人分から量を選べる小分け商品は一人暮らしでも手に取りやすく、通年のメニューへと変化しています。リニューアル商品の味については、うま味の余韻が非常に強化されています。特に味の素「鍋キューブ」濃厚白湯はうま味の余韻が強く、刺激の強過ぎない安心感のある味にまとまっています。
2020年のコロナ禍以降、強いストレスが味覚に与える影響や解放感を求める心理から、インパクト重視の刺激的な味わいがトレンドとなっていましたが、2024年上半期は、物価高から安心感や満足感が求められるようになり、「うま濃い余韻」の人気が高まっていると考えられます。
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