140年の歴史を持つ炭酸飲料ブランドのDr Pepperは、いかにして米国でナンバー2のソフトドリンクとなったのか。
昔のCMソングで歌われ続けてきた通り、Dr Pepperの時代がやってきた(※)。この炭酸飲料ブランドは2024年6月、Coca-Colaに次いで米国で第2位の炭酸ソフトドリンクとなり、長い間その地位を保持していたPepsiを抜いたというニュースで注目を浴びた。 米炭酸飲料業界紙「Beverage Digest」が報じたこのデータは、消費者のブランド認識と一致している。Dr Pepperは、ブランドコンサルティング会社のFutureBrandの最新の消費者指数レポートにおいて、Pepsiよりも2つ上の41位にランクされていた。
※編注:"It's Dr Pepper Time!"はかつてDr Pepperの広告キャンペーンで使われていたフレーズ。
FutureBrandの戦略担当リーダーであるリン・フィールド氏は「消費者はPepsiと比較して、Dr Pepperの将来性をより有望視しており、時代の流れに乗った製品であり、そして重要なことに、Pepsiよりもはっきりとした個性を持っていると見ている」と述べている。
2018年にKeurig Green Mountainとthe Dr Pepper Snapple Groupを経営統合して誕生した親会社Keurig Dr Pepperは、全社のマーケティング費用が2桁増になる中でもこのブランドへの投資を続けてきた。「Dr Pepperの成功は投資と忍耐力の組み合わせによるもの」と、同社ブランドマーケティングシニアディレクターであるブラッド・レイクス氏は語る。
「それはコンテンツやメディアのようなものだけでなく、本当に全面的なコミットメントだ。投資を優先させ、Dr Pepperが組織にとって主力ブランドであり続けるようにしてきたのだ」(レイクス氏)
コーラ戦争の主役であるCoca-ColaとPepsiとの差別化を模索してきたDr Pepperは、独自の味わいで消費者に楽しみを提供し、彼らの間につながりを生むという破壊者のアイデンティティーを築きつつ歩んできた。マーケティングにおいてもここ数年、一貫性と掟破りの間のギリギリのラインを綱渡りしてきている。
「140歳のブランドが140年前と同じことをやっていても成長にはつながらない」とレイクスは言う。
過去数年間、Dr Pepperのマーケティングはカレッジフットボールを中心に展開されてきた。同ブランドは2014年にカレッジフットボールプレーオフ初の公式スポンサーとなり、2021年には長年続けられてきた「ファンズビル」キャンペーンの一環としてクォーターバックのDJウイアガレレイ選手と契約し、NIL契約(※)の分野で先駆者となった。
※編注:NILは名前(Name)、画像(Image)、肖像(Likeness)の略。学生アスリートが自身の肖像権を使ってスポンサー契約を結ぶこと。
ファンズビルは「Friday Night Lights」のような高校スポーツドラマのパロディーで、架空の町でアメリカンフットボールに熱狂するファンの物語が続く。2018年に始まり、広告ブランドと選手とのパートナーシップのプラットフォームとして定着している。レイクス氏がMarketing Diveに明かしたところによると、このキャンペーンは広告会社Deutsch LAと共に創出され、2024年に第7シーズンに突入する。
「ここにはまだ成長の余地がある。広告に対する消費者の関心度も高く、これまでDr Pepperが展開してきた広告の中でも最もスコアが高く、パフォーマンスも良い」(レイクス氏)
カレッジフットボールは引き続き、Dr Pepperがスポーツの話題の中でファンとつながるための創造的な空間を提供している。2023年は、ハイズマン賞を受賞したクォーターバックのケイレブ・ウィリアムズ選手とタッグを組んで「FANicures」というネイルポリッシュキット(マニキュア)をリリースした。これはネイリストの母親を持つウィリアムズ選手が爪にペイントをして試合に望む習慣にちなんだものだ。
「ネイルペイントは彼自身のブランドの一部であり、彼のブランディングの一部を私たちの世界に持ち込み、それを演出する素晴らしい方法だった。ファンズビルの成功の秘密は、オーセンティックであること、そしてその分野に対する私たちの理解を示すことだ」とレイクス氏は語る。
© Industry Dive. All rights reserved.