博報堂プロダクツは「企業のサステナビリティコミュニケーションに関する調査2024」を発表。サステナビリティコミュニケーションの課題や各種施策の実施状況などをまとめました。
サステナビリティが企業にとって欠かせない取り組みとなっている中、その取り組みを社内外に向けて発信する「サステナビリティコミュニケーション」の重要性がますます高まっています。
博報堂プロダクツは2024年5月、「企業のサステナビリティコミュニケーションに関する調査2024」を発表しました。2回目となる今回の調査は2024年3月に実施。調査対象は全国の20〜65歳の男女で企業のサステナビリティ関連業務経験者427人です。
SDGsを企業が推進する際の行動指針「SDG Compass」が提唱する5ステップごとにサステナビリティ推進の実施率をまとめた結果、ステップ1の「認識・理解」が81.3%、ステップ2の「優先課題の特定」が62.3%、ステップ3の「目標設定」が45.9%、ステップ4の「経営への統合」が48.5%、ステップ5の「報告とコミュニケーション」が60.0%でした。8割以上の企業が「認識・理解」はできている一方で、ステップ3の「目標設定」やステップ4の「経営への統合」よりも、ステップ5の「報告とコミュニケーション」を積極的に実施しようという傾向が見えてきました。
直近3年間のサステナビリティ関連予算について、62.5%が「増えた」と回答。企業属性別では上場企業が67.6%、非上場企業が57.5%が「増えた」と回答しました。上場企業と非上場企業で約10ポイントの差がついており、上場企業のほうが積極的に予算を増やしている様子がうかがえます。
予算が増えているにもかかわらず、多くの企業が未解決の課題を抱えています。サステナビリティコミュニケーションにおける社内の課題(内部課題)を聞いたところ、最も多い回答は「社内のノウハウが不足」(34.7%)。それに「取り組みが事業成長につながらない」(30.0%)、「取り組みの効果測定が不十分」(28.3%)が続きました。「社内のノウハウが不足」という回答は、2023年に実施した調査と比べて4.4ポイント増加しています。
社外の課題(外部課題)で最も多い回答は、「コミュニケーション施策がバラバラで統合できていない」(32.3%)。次いで多いのが「人材確保につながらない」(29.0%)、「顧客を巻き込んだアクションへの賛同が得られない」(28.8%)でした。社内の部署を横断して推進することが求められるサステナビリティ活動において、個別の施策同士の連携が取りづらい傾向が見えてきます。
社外向けコミュニケーションを魅力的で効果的なものにするために重視したいこととして、最も多かった回答は、「これからの社会における自社の存在意義を明確にして伝える」(41.1%)で、パーパスへの意識が強まっていると言えそうです。また「SDGsウォッシュ(企業がSDGsの目標達成に向けて取り組んでいると見せかけて、実際には貢献していない状態のこと)などの炎上リスクに配慮して伝える」(38.8%)や「Z世代などの若手社員発のプロジェクト推進を通じてコミュニケーションを図る」(37.0%)といった施策も重視しています。
重視するステークホルダーは「顧客(クライアント企業)」が22.5%、「投資家」が21.8%、「顧客(消費者)」が15.2%、「従業員(一般社員)」が12.6%でした。2023年と比べると「従業員(一般社員)」が微増し、一方で「顧客(クライアント企業)」がやや減少しています。
今後注力したい施策としては半数以上の54.8%が「総合的なサステナビリティコミュニケーション計画の策定」と回答してはいるものの、次いで「社内研修」が28.3%と多く、「社内イベント」(24.6%)、「社内コミュニティー形成」(23.4%)と続きました。社内施策へのニーズが高まっていることが分かります。
まずは組織内部から変革を進め、生活者として、社員として、多様なステークホルダーの顔を持って企業を応援してくれる人を増やすことが重要ということでしょうか。
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