世界のB2C企業はカスタマーエンゲージメントにどのように取り組んでいるのでしょうか。Brazeの調査から見えてきた企業の課題と生成AIの活用といった市場の動向を紹介します。
カスタマーエンゲージメントプラットフォームを提供するBrazeは2024年5月、注目すべきカスタマーエンゲージメントのトレンドについての調査レポート「2024 グローバルカスタマーエンゲージメントレビュー」を発表しました。世界14カ国の大手B2C企業のマーケティングエグゼクティブ1900人を対象に実施した調査で、レポートでは最新のトレンドがもたらす課題と実行可能な改善策をまとめています。
同レポートの発表は4回目。今回の調査では、ブランドのマーケティング担当者が創造的で戦略的な動きを望むもののそれを妨げる幾つかの要因に悩まされていることが分かりました。具体的な課題は、「KPIの重視で創造力が妨げられる」(42%)、「日常業務に時間を浪費している」(42%)、「アイデアを具現化する技術力が不足している」(41%)、「創造力はROI測定しにくい」(40%)の4つです。
これらの課題解決のための手段としてはAI活用がトレンドとなっており、回答者の99%がすでにAIを活用していました。さらに回答者の79%は「AIは定型業務を自動化し、クリエイティブな思考に、より多くの時間を割くことができる」と回答しています。
こうした新しいテクノロジーによって多くのブランドでは、カスタマーエンゲージメントの機会を広げていますが、一方で、顧客理解の解像度は依然として低いままのようです。「顧客の行動とセンチメントをマッピングできている」と答えたのは23%、「製品やブランドのアプローチに顧客インサイトを適用している」と答えたのはわずか6%にすぎませんでした。
「メール」「WhatsApp」「LINE」「KakaoTalk(カカオトーク)」などメッセージチャネルが拡大する中で、一貫性ある顧客体験を創造することはブランドにできる重要な施策の一つです。ところが調査では、「一貫性を最優先事項としてリソースを投資している」という回答は37%でした。「複数のサイロ化されたポイントソリューション(CRMやMAといった各種マーケティングツール)に依存し、マルチチャネル体験を手作業で組み立てている」という回答が33%、「顧客とのエンゲージメントを主に単一のチャネルに依存している」という回答が17%となるなど、多くのブランドがクロスチャネルマーケティングの基盤を構築できていないようです。
今回の調査では、世界における回答と比べて日本で特徴的だったポイントを考察しています。質問「より創造的で戦略的なアプローチを実行する上で、障害になるものは?」に対する回答を世界と日本で比べると、「アイデアを具現化するための技術力」(日本で47%)が世界平均と比べて6ポイント多い結果に。さらに「KPI重視で創造力が阻害される」(同46%)は世界平均と比べて4ポイント多く、「リソースがない」(同31%)も3ポイント多い結果でした。
世界平均と日本で大きな差が出たのは「クリエイティブな時間創造のためにAIによる定型業務の自動化を支持する」という問いです。日本では60%の回答者が同意していましたが、世界平均と比べると19ポイント少ない結果に。世界主要4地域と比較しても低い結果となっています。
「どのマーケティング用途にAIを使用、または使用予定か?」という問いへの回答では、「キャンペーンメッセージのパーソナライズ」(44%、世界平均比+4ポイント)に興味を持つ割合が世界平均と比べて高い結果となりました。日本のマーケターの「顧客一人ひとりの属性や嗜好に合わせたコミュニケーション、パーソナライズされたキャンペーンを実施したい」という姿勢が明らかとなりました。
「あなたの顧客エンゲージメント戦略に適したものは?」という問いに対する回答も特徴がありました。世界では、「上流エンゲージメント指標(メッセージ開封率やクリックスルー率)と下流エンゲージメント指標(マネタイズやリテンション/ロイヤリティーなど)を組み合わせた改善」(世界平均54%、日本平均40%)が一般的でした。一方の日本は世界平均と比べると上流エンゲージメント指標に注目する傾向があるようです。
日本の場合、「新規顧客の獲得や認知向上を目的に実施する広告施策」を顧客とのエンゲージメントを高める活動と考える企業が依然として多いのかもしれません。
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