2024年夏のパリ五輪は、ここ数年のNikeにとって最もインパクトのあるマーケティングショーケースになりそうだ。
NikeのCEOジョン・ドナホー氏は、第3四半期決算に関するアナリスト向け説明会で、同社が再建を図るため、「より大胆で個性的な」ブランドマーケティングに取り組んでいることを明らかにした。
2024年にパリで開催される夏季オリンピックはこの戦略のショーケースになるだろう。CFO(最高財務責任者)のマシュー・フレンド氏は、詳細はほとんど明かさなかったが、「Olympics Air for Athletes」キャンペーンがNikeにとってここ数年で最も特徴的なブランド表現になるだろうと語った。
フレンド氏によれば、Nikeはマーケティング活動の数を大幅に削減し、より大きなリーチと影響力を持つものを優先してしている。同社は2024年1月に新しいCMO(最高マーケティング責任者)を任命し、卸売との関係にあらためて重点を置いている。
Nikeは横ばいの成長と消費者直販(DTC)事業に起因する販売不振に対処し、活力を取り戻そうとしている。2024年のNikeの最優先事項の一つが、より野心的なマーケティングだ。夏季オリンピックを、消費者を引き付けてスポーツウェアの巨人を新鮮に見せる機会と捉えている。
「今夏のオリンピックを皮切りに、ブランドのストーリーテリングは、アスリートとスポーツを活用し、より鋭く大胆なものになる」とドナホー氏はアナリスト向け説明会で語った。
年初に新CMO(最高マーケティング責任者)に任命されたニコール・ハバード・グラハム氏は、キャンペーン数を減らす代わりに、より大きく展開することが求められている。グラハム氏は、2018年からNikeのCMOを務めたディルクヤン“DJ”ファン・ハメレン氏の後任となる。大規模な幹部交代の一環として採用されたグラハム氏は、過去に約20年間Nikeに勤務し、NikeのグローバルマーケティングチームとDTC業務の管理に貢献してきた経験がある。
ヴァン・ハメレン氏は、人種問題を扱ったキャンペーンや、NFLのクォーターバックで活動家のコリン・キャパニック氏のような物議を醸すアンバサダーを起用したキャンペーンなど、近年のNikeにおける最も大胆なブランド構築のマーケティングの指揮を執っていた。
パーパスドリブンマーケティングと呼ばれることもある社会的・政治的問題に取り組むマーケティングの風潮は、このところ旗色が悪い。「Woke」(※)と見なされた企業は攻撃の標的となり、マーケターは難しい立場に置かれている。米大統領選の戦いが加熱する中、この領域で失策を犯したブランドに対する反発はさらに激しくなる可能性がある。それでもブランドはカルチャーに密接に関わり続け、Z世代のような消費者グループを取り込む必要がある。彼らは強い価値観を表現する企業を支持する傾向があるからだ。
※編注:「Woke」は「目覚め」を意味する俗語。差別や人権問題などに意識が高いリベラル派を揶揄(やゆ)する意図で使われる。
Nikeのマーケティング刷新は、4つの柱からなる再建戦略の一つに過ぎない。同社はまた、スポーツ分野でのポジショニングを強化し、より多くの製品イノベーションを推進し、卸売パートナーへの投資を拡大しようとしている。NikeのDTC部門は引き続き「重要な役割」を担うが、ドナホー氏は卸売りを、新製品のイノベーションを拡大してNikeのブランドと消費者を結びつける重要な手段だと位置付けている。
Nikeのデジタル部門の売り上げは、Nike Directの売り上げがわずかに増加して54億ドルに達した一方で、第3四半期は前年同期比で3%減少した。卸売りは3%増の66億ドルだった。
© Industry Dive. All rights reserved.