NTTデータ経営研究所がNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションと共同で実施した「Diversity, Equity and Inclusion(DE&I)に関する実態調査」の結果です。
DE&I(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包摂性)の推進は企業が持続可能な成長を実現するための鍵であるという考え方がグローバル企業の間で広まっています。また、DE&Iの指標に関連したETF(上場投資信託)が創設されるなど、投資家からも注目されています。日本においても2023年3月期決算から上場企業を対象に人的資本の開示が義務化されており、今後DE&Iの重要性は一層高まると考えられます。しかし、DE&I推進の取り組みには課題もあるようです。
NTTデータ経営研究所は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供すNTTコム リサーチ登録モニターおよび協力企業を対象に、DE&Iに関する実態調査を実施しました。
DE&Iに関する用語・概念の認知度は、「身体障がい」が66%、「精神障がい」が64%、「発達障がい」が62%、「知的障がい」が63%と、障がいについての認識、理解は進んでいることが分かりました。DE&Iに関してはDiversityが52%、Inclusionが31%でした。Equityに関してはEquality(平等性)との違いを理解している人は17%にとどまりました、また、「アンコンシャスバイアス(無意識に持つ偏見や思い込み)」が24%、「心理的安全性(自分の考えや意見などを組織のメンバーの誰とでも安心して言い合える状態)」が25%など、DE&Iの上位の概念については認識、理解が進んでいないことが明らかになりました。
DE&Iに関する用語・概念の認知度を年代別、職階別で算出した結果、年代が若いほど認知度が高く、一般社員よりも係長・主任級以上の認知度が高いことが明らかになりました。
DE&Iの用語に関する認知度、職場での障がい者との接触が人的資本指標やパフォーマンスに与える影響を調べました。その結果、Diversityの認知度が高いほどワークエンゲージメント(活力、熱意、没頭の度合い)が高い傾向が見られました。さらにDE&Iの上位概念を認知していると、ワークエンゲージメントがより高くなることが確認されました。Diversityについて「全く知らない」「ほとんど知らない」人で組織文化およびリーダーへ満足しているのは1割以下。一方で「非常によく知っている」人で組織文化およびリーダーへ満足している割合は7割以上であり、DE&Iの用語に関する認知度が組織文化およびリーダーへの満足度とも関連していることが分かりました。その他、障がい者との接触回数が多いほど心理的安全性が高いことも明らかになりました。
DE&Iの推進は人的資本指標の向上を媒介し、パフォーマンスや幸福度、組織の生産性を改善し得ることが示されました。今後は、DE&Iの実践と理解を深め、社員のエンゲージメント向上、企業の成長につながる方法論の体系化が必要となりそうです。
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