「推す」行動の裏にある心理や社会的価値について考察した調査の結果です。
博報堂と博報堂DYグループのSIGNINGはこのほど、近年拡大している「推し活」に関する経済行動の実態や心理を把握することを目的に調査した結果をまとめた「オシノミクスレポート」を発表しました。同レポートは人々が「推す」という現象の裏にある心理や行動を「オシノミクス」と名付け、研究することで組織運営やマーケティングなどさまざまな領域へ拡張し、これからのビジネスのヒントを見いだすことを目的としています。
まず全国の10代から60代の男女5万人を対象に「推し」の有無について聞いたところ、「推しがいる」または「いると思う」と回答した人は34.6%でした。性年代別では10代女性が最も推しがいる比率が高く、83.3%の人が推しの存在を自認しています。
10〜69歳男女1380人(推し活支出のある1200人と推し活支出がない180人)を対象に「推し」と「好きなもの」についてそれぞれのイメージを違いを聞くと、「応援したくなる」という感情を持つ人の割合は「推し」が42.4%であるのに対して「好き」は24.6%、「崇拝したくなる」は「推し」の23.9%に対し、「好き」はわずか3.6%でした。「お金をかけたいと思える」は「推し」が30.8%で「好き」は18.6%。このように、両者の間には積極性の違いが見て取れます。
推しがいる人にとって「推し活」はもはや生活の一部になっていることも分かりました。推しがいる人は、自由に使える時間のうち平均38.8%、自由に使えるお金のうち平均37.4%を「推し活」に費やしています。
一口に推し活と言っても、ライブなどのイベントに積極的に通って推しとの距離を縮めたい層から、自宅でテレビ番組や配信コンテンツを楽しみ、推しを遠くから眺めていたい層など、推し方も多様化しています。同レポートでは推し活をする人びとを6つのクラスターに分類し、推し活に関する価値観や行動を分析しています。
推しがいることでどの程度幸せになれるのか。推しがいる人(推し活支出がある人)と推しがいない人それぞれに今どの程度幸せか聞いたところ、推しがいる人は73.2%が「とても幸せである」または「やや幸せである」と回答したのに対し、推しがいない人は52.2%にとどまり、20ポイント以上の差がつきました。推しの存在は、どのクラスターにおいてもポジティブな感情や積極的な行動を生み出す機会になっており、幸せを感じる一因になっているようです。
「推し活」の裏側には「応援」「紐帯」「探求」「所有」「共有」「憧憬」という6つのコア心理があることも見えてきました。全78ページのレポートでは、調査結果や有識者へのインタビューを通じて、「推し」が人々にとってどんな存在なのか、「推し活」という能動的な行動を生み出す源泉は何かについても解説し、オシノミクスを生み出すためのヒントや具体的なアクションについても紹介しています。
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