日本の法人営業担当者は顧客と接する時間を「1日にあと25分」増やしたいと考えています。
HubSpot Japanは「日本の営業に関する意識・実態調査2024」の結果を発表しました。同調査は日本企業の法人営業の現状と課題を明らかにして「日本の営業組織の次のステップを考察する」ことを目的に2019年から毎年実施しているものです。今回の調査結果からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の5類移行や生成AIの台頭の影響がうかがえます。
今回の調査はB2Bのビジネスにおける日本全国の「売り手」計1545人(従業員数51〜5000人規模の企業の経営者・役員515人、法人営業組織の責任者515人、法人営業担当者515人)と「買い手」515人(経営者、役員、会社員)を対象に実施しています。
営業担当者に「1日の業務時間を100%とした場合に費やした時間の割合」を質問したところ、「顧客との商談、電話、メールなどコミュニケーション」や「顧客との商談の準備または終了後のフォローアップ」など、コア業務である顧客とのやりとりに使っている時間は平均して業務時間の54%程度にとどまりました。
同じ営業でも業務の内容や組織の体制、商材の特性など前提が異なるため、54%という時間配分が多いのか少ないのか一概には言えません。それでも回答者全員に「理想とする業務の時間配分(割合)」を尋ねたところ、社内報告業務や見積書作成などの業務を減らし、平均で「1日にあと25分」顧客とのやりとりに使う時間を増やしたいと考えていることが分かりました。
営業の業務の中で無駄と感じる時間の割合は約22%で、これは過去4回の調査とも同じです。無駄な業務として挙がったのは「社内会議」(54.5%)や「社内報告業務」(38.4%)、「日々の商談の移動時間」(25.7%)などでした。社内会議は5回連続で無駄な業務のトップになりました。
一方、営業に関する業務の中で「時間があったらやりたいこと・今よりも時間を割きたい業務」を選択式で集計すると、1位が「顧客との商談」(35.3%)、2位が「商談後のフォローアップ」(31.4%)、3位が「営業戦略の振り返り・戦略再検討」(30%)と、顧客とのやりとりに関するものが上位にランクインしました。
業務効率化の切り札となりそうな生成AIはどの程度期待されているのでしょうか。売り手である営業責任者・営業担当者に聞いたところ、認知率は78.8%と、8割近くになりました。しかし、実際に業務に活用したことがある人は21.1%にすぎません。活用経験者の内訳は、営業責任者が30.1%、営業担当者は12%と2倍以上の差があり、現場よりもマネジメント層での利用が進んでいることも分かりました。なお、生成AIを実際に利用したことがある営業責任者と営業担当者217人を対象に聞いた「生成AIによって減らせた『無駄と感じる時間』の割合」は、平均約33%でした。無駄と感じる時間が一切減らなかったと回答した人は6.5%にとどまりました。
生成AIの活用目的や活用理由(利用したことがない人は、活用する場面を想像して回答)の1位は「業務効率を上げるため」(50.1%)、2位は「仕事の質を上げるため」(34.4%)でした。より具体的な用途としては「プレゼン資料の作成」(37.2%)や「データ分析」(31.2%)、「見積書や請求書作成」(29.2%)などが挙がりました。
売り手と買い手の双方に営業組織における生成AIの活用について尋ねると、いずれも最も多かった回答は「生成AIの積極的な活用には肯定できないが、部分的な活用には肯定的である」(売り手:36.4%、買い手:32%)でした。
営業組織での生成AIの活用について、売り手と買い手に「営業活動の中で生成AIを活用することが、自分の立場(売り手または買い手)に良い影響をもたらすか悪い影響をもたらすか」を聞いたところ、「売り手に良い影響をもたらす」と答えた売り手が52.4%だったのに対し、「買い手に良い影響をもたらす」と答えた買い手は33.4%にとどまりました。また「売り手に悪い影響をもたらす」と答えた売り手は10.6%、「買い手に悪い影響をもたらす」と答えた買い手は14.8%という結果になりました。
生成AIの活用が売り手に良い影響をもたらすとする理由としては「人間の能力の限界を超えることができる」「生成AIが導き出す回答が考えるきっかけになる」「作業効率が上がり顧客とのコミュニケーションに時間を割ける」「定型的な業務から開放され提案の質が高まる」などが挙がりました。
一方で生成AIの活用が売り手に悪い影響をもたらすとする理由としては「営業が自ら考えることをしなくなる」「AIが作成したものが正しいか分からない。真偽を見分ける能力のない社員が増える」「提案内容が似通ってしまう」「機械では信頼は得られない」「企業情報漏えいのリスクがある」などが挙がりました。
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