DXの進展でIT・テクノロジー領域の人材需要が拡大しているようです。
パーソルキャリアは、2023年に同社のIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」が受領した案件の平均月額単価を算出し、「ITフリーランスエンジニアの平均月額単価ランキング」を発表しました。
職種別に見ると、平均月額単価が最も高かったのは「ブロックチェーンエンジニア」の115万4000円でした。「DXコンサルタント」(115万3000円)や「ITコンサルタント」(114万4000円)など、DX(デジタルトランスフォーメーション)を主導できる職種の需要は高く、平均月額単価は軒並み100万円を超えました。
職種編ランキングは以下の通りです。
ブロックチェーンエンジニアは、Web3のコア技術であるブロックチェーンを扱うことができるITエンジニアです。スタートアップなどでは新サービス開発時にブロックチェーンを導入するケースが増えている一方、日本では対応できるITエンジニアが非常に少ないことから、圏外から急浮上しました。2〜5位には、DX推進などのプロジェクトをリードする職種がランクインし、いずれの職種も単価が100万円を超え、2022年から10万円以上アップしています。6位の「機械学習・AIエンジニア」(104万5000円)や8位の「データサイエンティスト」(95万1000円)も需要の高さに比例して上位にランクインしています。
前回から最も単価が増加したのは12位の「Webマーケター」(92万8000円)で、19万円アップしました。順位も前回の20位から大幅に上がっています。販売方法のオムニチャネル化が進む中、これまで主にデジタル広告の運用担当を求めていた企業が、事業戦略を踏まえてWebマーケティング戦略立案が可能な専門人材を求めるようになっていることなどが背景にあるようです。
業種別では「コンサルティング・専門事務所・監査法人・税理士法人・リサーチ」(98万9000円)が最も高く、前回から7万1000円アップしました。コンサルティング業はDXが広がる中で戦略設計のような最上流工程だけでなく、システム導入・運用といった実業務に近い領域にまで業務範囲を広げています。また、細分化する企業ニーズに応えるために、専門特化したコンサルティング業も増えています。
2位は「建設・プラント・不動産」(97.5万円)で、前回から順位を4つ、平均月額単価を14.0万円アップさせました。アナログ文化が根強い業種ですが、店舗に分散する顧客情報のデータベース化、CRM強化に向けたMAツール導入、IT技術の活用を通じて属人化する職人技の可視化など、DX化に踏み出す企業が増加しています。加えて、建設業では2024年問題(2019年4月施行の働き方改革関連法によって、時間外労働の上限が設けられ人手不足に陥ることが懸念される問題。建設業などでは5年間の猶予期間があったが、それが2024年3月で終わる)への対応が急務となっており、現場管理で必要な情報を一元管理できる施工アプリや、遠隔コミュニケーションツールの導入などが進んでいます。こうした背景から、DX戦略の立案、アプリやツール導入などに対できる人材のニーズが高まり、単価を押し上げたと想定されます。
前回の12位から最も順位が上がったのは、4位の「メーカー(機械・電気)」(91万9000円、前年比プラス16万円)でした。「メーカー(機械・電気)」では、コスト削減や業務効率化を目的に、運用・保守コストが高い既存システムのリプレイスを進める動きが見られ、上流の方針策定や要件定義などに対応できるアーキテクトやPMポジションを求める傾向が強まっています。また、ウクライナ情勢により仕入れ先の変更など、サプライチェーンを見直す動きもあり、事業リスクを踏まえ、IT技術活用を含めたBPRを行える人材の需要も増加。専門性の高い人材を求める企業が増加した結果、単価が上がったと言えそうです。
言語別では「Typescript」(1位、99万5000円)、「Go言語」(2位、95万9000円)、「Ruby」(4位、95万9000円)、「Python」(6位、94万7000円)といったモダンな言語が上位にランクイン。また、モバイルアプリ開発で使用される言語の「Kotlin」(3位、95万9000円)、「Swift」(5位、94万9000円)も上位にランクインしました。Kotlinは前回から14万3000円アップし、最も単価が上がってしています。メーカーや小売業などの事業会社が新規事業の一環で既存サービスをモバイルアプリ化する動きが高まっていることなどが要因となっているようです。
2023年の調査では、職種、業種、言語のいずれにおいても、前回から平均月額単価が上がる結果となりましたが、2024年はどうなるのでしょうか。プロフェッショナル人材活用支援サービス「HiPro」編集長の鏑木 陽二朗氏は「2024年は、今トレンドとなっている生成AIを搭載した新たなシステムの登場や、既存システムへの追加搭載がなされる可能性が高いと予想します。それに伴い企業は、最新のIT技術を使いこなすことができる、より専門性の高い人材が必要になるでしょう」とコメントし、DX人材のさらなる需要拡大を予測しています。
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