アマプラは「広告付きがデフォ」でCTVの覇権を握る、他――「Marketing Dive」の8つの予言【5】【6】Maketing Dive

今回は「Marketing Dive」の8つの予言から「破壊的ブランドがより大きな脅威をもたらす」「広告サポート型ストリーミングに真打ちが登場する」について詳しく紹介する。

» 2024年02月03日 11時00分 公開
Marketing Dive

 マーケターはますますデジタルへの傾斜を強めている。テレビなど伝統的なチャネルに頼らずデジタルで顧客とのつながりを深めるのは、これまでは新興ブランドの戦い方だった。しかし、レガシーブランドも黙って指を加えて見ている必要はない。

 チャネルの選択肢も広がっている。中でも有望視されるのがコネクテッドTV(CTV)だ。米国ではNetflixやDisneyに続いて大本命Amazonも広告付きプランの競争に参入している。これらの動向をマーケターはどう読み、自社の戦略に生かしていくべきか。

 「Maketing Dive」は、2024年のトレンドとして以下の8つを予言している。

  1. 特定層にウケてこそ大ヒットにつながる
  2. 代理店のアイデンティティーの流動化が進む
  3. リテールメディアのゴールドラッシュは終わる
  4. ソーシャルコマースがついに本格化する
  5. 破壊的ブランドがより大きな脅威をもたらす
  6. 広告サポート型ストリーミングに真打ちが登場する
  7. 透明性へのアプローチが変わる
  8. AIに対する目はますます厳しくなる

 本稿では、このうち5と6について紹介する。

予言5. 破壊的ブランドがより大きな脅威をもたらす

 ブランドは、従来のメディア戦術にとらわれず、機敏に行動することが求められている。機敏さへの要求は、従来のブランドとの親和性を欠きながらも消費力を増している若い世代で特に高い。ソーシャルメディアマーケティングエージェンシーMovement StrategyのCEOジェイソン・ミッチェル氏によると、行動の早い新興の破壊的ブランド(ディスラプター)が脚光を浴びており、2024年に彼らはレガシーブランドのマーケターにとってますます大きな脅威となると予想される。

 「ディスラプターはより迅速に行動し、より多くのリスクを冒して注目を集める。それによって、確立されたブランドから市場シェアを奪うことができる。この流れは今後も続くだろう」とミッチェル氏はメールでコメントを寄せた。

 ミッチェル氏は、McDonald'sや Heinzのバイラルキャンペーンの成功(※)に見られるように、2024年はレガシーマーケターもィスラプターのような考え方をより多く取り入れるようになるだろうと予想している。TikTokはディスラプターの成長を支える基盤となっているが、真空タンブラーで有名なStanleyのような老舗の復活もサポートしてきた。

McDonald'sはブランドマスコット「グリマス」の誕生日を中心としたプロモーションの一環で発売した限定版の紫色のマックシェイクに関する口コミ動画が大流行し、TikTokで30億以上の再生回数を記録。Heintzは、歌手のテイラー・スウィフトが交際中のプロフットボール選手トラビス・ケルシーの試合を観戦している様子が報道された際、テイラーがケチャップとランチドレッシングに見えるもの(Seemingly Ranch)を付けていたとXに投稿され話題となったあるファンのポストにインスパイアされて「Ketchup and Seemingly Ranch」という新しい調味料を考案した。

 一方、エナジードリンクのCelsiusやキム・カーダシアンが手掛けるインナーウェア(下着)のSkimsのような新興ブランドは、それぞれサッカーのMLSやバスケットボールのNBAといったスポーツ団体との契約を結ぶなど、伝統的な手法を取り入れている。ミッチェル氏によると、この種の取引は2024年も継続されるという。広告代理店のMischief @ No Fixed Addressで戦略ディレクターを務めるジミー・ジョージ氏は、広告業界が財政難からの回復の兆しを見せる中、ディスラプターがリスクを取る意欲を失うことはないだろうと見ている。

 「ディスラプターは幅広さを求め、レガシーブランドは最小限で最大かつより良い方向で意思決定を行う傾向がある」とジョージ氏は語る。

予言6. 広告サポート型ストリーミングに真打が登場する

 ここ数年。大規模合併や広告付きプランの導入、測定値を巡る争いなどがストリーミングビデオの状況を大きく揺るがしてきた。ゲームを変えるような大きな変化は2024年も続きそうだ。しかし、不透明な状況は続くものの、結局のところ主要プレーヤーはその地位をますます向上させるだろう。

 その筆頭がAmazonだ。同社は2024年1月29日に「Prime Video」で広告の展開を開始した(この動きは2023年秋に発表されたにもかかわらず、年末年始に多くの消費者を驚かせ、一部の反発を招いた)。バンク・オブ・アメリカの試算によると、このサービスによりAmazonは50億ドル近くの収益を生み出す可能性がある。動画広告による30億ドルと、加入者が広告を回避するために支払う追加料金による18億ドルが、その内訳だ。

 Magnaが最新の世界的な広告予測で「ゲームチェンジャー」と表現したAmazon Prime Videoへの広告の導入は、NetflixやDisney+が広告付きプランの立ち上げで行ったのとは逆に、サービス開始時に広告付きオプションをデフォルトにしている点が特徴だ。

 「これにより、ストリーミングのスケールとリーチが大幅に拡大し、広告主にとっての魅力が大幅に拡大する」と、Magnaでグローバルマーケットインテリジェンス担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるビンセント・レタン氏はメールでコメントしている。

 一方、Warner Bros. Discoveryは、旧「HBO Max」と「Discovery+」を統合した「Max」を開始してからまだ1年も経っていないが、「Paramount+」を保有するParamountとの合併を検討していると噂されている。このような統合は、価格を重視する消費者と結果を重視する広告主を結び付けるための魅力的な選択肢となる可能性がある。

 「広告主はメディアパートナーに対し、投資したキャンペーンの成果を証明するよう求める傾向が強まっている。データが明らかにするように、プレミアムコンテンツはより多くのブランド成果、行動成果、ビジネス成果を促進する」と、広告分析プラットフォーム企業UpwaveのCEOクリス・ケリー氏はメールでコメントした。

 「昨年、低品質の(MFA:広告目的で作られた)コンテンツが業界の注目を集めるようになり、プレミアム動画への回帰が進んでいる。従って、プレミアム動画アセットの規模が拡大すればするほど、広告主は笑顔になれる」

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