Xが公開した2024年版開発ロードマップの現実味は?Social Media Today

2024年、Xは旧Twitterからの脱皮を継続し、独自の全く新しいアプリのカテゴリーに移行するための重点開発分野を明らかにした。

» 2024年01月18日 07時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
Social Media Today

 Xは現在、自らを“ビデオファーストプラットフォーム”と呼んでいる。フィードが動画で占められているわけでもなければ専用のビデオタブもなく、ビデオクリップのストリームを簡単に見つけることさえできないにもかかわらずだ。

2024年のXの開発ロードマップ

 2024年に向けたXのロードマップの概要(外部リンク/英語)が発表された。ここにはプラットフォーム開発、そしてイーロン・マスク氏が「全部乗せアプリ」計画を次の段階に向けてどう準備しているかについてのさまざまなメモが含まれている。

 収益が減少している一方で手元にある開発リソースが不足している現状、マスク氏の計画を実現するのはますます困難なチャレンジとなりそうだ。しかし、それでもXは、現在のパフォーマンスに関して以下のようなさまざまな統計情報を共有している。

  • ユーザーセッションの8割に動画視聴が含まれるようになっており、毎日1億人以上がXでフルスクリーンの縦型動画を視聴している
  • 2023年12月単月で、ユーザーは(Xいわく)“30分以上の動画を130年相当分”視聴している。
  • コミュニティノートは1日平均5000万回以上閲覧されている
  • Xには現在35万以上のコミュニティーがあり、毎日約65万件のコミュニティー投稿が作成されている。
  • Xは広告収入共有プログラムを通じて、これまでに8万人以上のクリエイターに報酬を支払ってきた。

 Xはまた、総広告エンゲージメントが22%増加したとしている。マスク氏の問題発言やさまざまな変更によって広告収入の50%を失ったことを考えれば、これはある意味偉業だろう。

 ただし、これはあくまでもXがそう主張しているということにすぎない。マスク氏にせよCEOのリンダ・ヤッカリーノ氏にせよ、過去に疑わしい主張をしてきた経緯もある。

 ともあれ、これがXの現在の位置である。2024年、Xは旧Twitterからの脱皮を継続し、独自の全く新しいアプリのカテゴリーに移行するための重点開発分野も明らかにしている。今後の予定は以下の通りだ。

  • 決済サービス
  • AIによる改善
  • オリジナルコンテンツ
  • 広告の改善

2024年中にP2P決済開始の意向だが……

 マスク氏の計画の根幹にあるのは決済であり、アプリ間で少額の資金移動を促進することである。これは、マスクがPayPalに在籍していた初期の頃に由来するもので、そこで彼は初めて“全部乗せアプリ”計画を思いついた。

 この点に関して、Xは2024年中にP2P決済を開始し、「より多くのユーザーの利便性と商取引の新たな機会を解き放ち、1つの場所でより多くの生活を送る力を示す」と述べている。

 これがうまくいくかどうかは誰にも分からないが、X社は現在、米国の各州で資金移動業に必要な送金ライセンスを申請し、最初のハードルをクリアしているところだ。

 Xは現在、14の州で送金ライセンスを取得しているが、より広範な金融や取引の要素を促進するために必要な全ての承認に到達するには、まだ長い道のりがある。その一部は、マスク氏が過去に公に批判してきた規制当局からの承認を必要とする。そのため、目的完遂は簡単ではないだろう。何年も前から決済を促進しようとしているMetaでさえ、ほとんどの地域で完全な決済を促進するために必要な承認やライセンスを全て確保できているわけではない。

 しかしマスク氏は、自分にはこれを実現する経験とビジョンがあると信じており、Xが2024年に決済の次のステージに進めるかどうかが注目される。

 これに関連して、XはShopifyとの新たな契約を発表し、Shopifyの加盟店がアプリで商品を紹介できるようになることを明らかにしてもいる。

 これは、マスク氏の広範なビジョンへの新たな一歩となるものだ。

AIによる機能強化に意欲、自慢の「Grok」で「ChatGPT」対抗も

 Xはまた、広告や検索ツールなどを強化するため、より多くのAIソリューションの導入を検討しているという。

 XはすでにAIチャットbot「Grok」で生成AI競争に飛び込んでいるが、他にもユーザーエクスペリエンス向上のためのさまざまな要素を洗練させるために、AIに基づいて業界をリードする体系的な改善を行おうとしている。

 例えば、こんなことを言っている。

私たちは、xAIを活用した革新的な「類似の投稿を見る」機能を強化することで、より関連性の高い重要なコンテンツを継続的に表示する。今後の「似て非なる投稿を見る」機能の強化により、ユーザーは過去のアクティビティーに基づいて、自分の興味に沿った、または自分の視点に挑戦するコンテンツを探索できるようになり、それにより受け取る情報の質とバランスが向上する。

 もちろん、言うほどうまくいくかどうかは分からない。XはGrokがXのリアルタイムデータを活用し、“ユーモアのセンス”がある優れたチャットbotだと主張しているが、それがXの体験の主要な要素になるとも思えない。

 しかしマスク氏は、かつて自分が数百万ドルを寄付し、その後経営トップに就任しようとしたこともあるOpenAIに不満を持っている。だからこそGrok開発のを推進しているのだと思われるが、Xがうまくやれば、バックエンドのAI要素はユーザー体験に有意義な変化をもたらす可能性がある。

 基本的に、マスク氏は自分がAIで一番になると確信している。そして、もしそれが真実だと証明されれば、Xは大きな利益を得ることができるかもしれない。

(続く)

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