LGBTQ+当事者層の割合は9.7%、非当事者層のインクルージョン意識は約8割――電通調査今日のリサーチ

LGBTQ+に関する当事者および非当事者の意識を調査した結果です。LGBTQ+支援を表明する企業のイメージや同性カップルを広告などに起用する商品、ブランド、サービスに対する利用意向についても聞いています。

» 2023年10月23日 18時00分 公開
[ITmedia マーケティング]

 電通グループの国内事業を統括するdentsu Japan内の組織であるdJサステナビリティ推進オフィスは、2023年6月に全国20〜59歳の計5万7500人を対象として「LGBTQ+調査2023」を実施しました(調査協力:電通ダイバーシティ・ラボ)。

インクルージョン意識は高いが意識と行動にギャップも

 同調査はもともと電通グループ傘下の電通が2012年、2015年、2018年、2020年と4回にわたり実施してきましたが、第5回となる今回は、dentsu Japan(電通グループの国内事業の統括組織)主導で行いました。調査ではLGBTQ+当事者層の意識や経験に加え、LGBTQ+非当事者層の意識や知識、行動についても分析しています。

 調査は全国の20〜59歳の5万7500人を対象にしたスクリーニング調査と本調査の2段階で実施。スクリーニング調査を通過した「LGBTQ+当事者層」600人と「LGBTQ+非当事者層」5640人の計6240人が本調査に進んでいます。同調査では性の在り方を「性自認」「生まれたときに割り当てられた性」「性的指向(恋愛・性愛感情を抱く相手の性)」の3つの組み合わせで分類しており、異性愛者(ヘテロセクシュアル)であり生まれた時に割り当てられた性と性自認が一致する(シスジェンダー)回答者以外をLGBTQ+当事者層と定義しています。

 スクリーニング調査の全回答者に占めるLGBTQ+層の割合は9.7%で、2020年調査の8.9%から微増となりました。「性自認×生まれた時に割り当てられた性」と「性自認×性的指向」のそれぞれの組み合わせによって分類した内訳は以下の通りです。L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)以外にも多様な性の在り方が確認され、「ノンバイナリー/Xジェンダー(男性か女性か変わることがある、一定ではない、男性・女性のどちらでもあると感じる、男性・女性のどちらでもないと感じる)」が1.38%、「性自認のクエスチョニング(男性か女性かどちらかわからない)」が0.26%、「アロマンティック(性別に関係なく、他者に恋愛感情を抱かない)」が1.43%、「アセクシュアル(性別に関係なく、他者に性的に惹かれない)」が1.56%、「性的指向のクエスチョニング(好きになる相手・性的に惹かれる相手の性別が分からない)」が0.58%となりました。

LGBTQ+当事者層の内訳(出典:電通、以下同)

 LGBTQ+非当事者層のインクルージョン意識について聞くと、「職場や学校などの仲間から性的マイノリティーであることをカミングアウトされたら、ありのまま受け入れたいと思う」が84.6%、「LGBTQ+などの性的マイノリティーの職場や学校の仲間にも、自分らしくいてほしいと思う」が84.5%、「LGBTQ+の当事者に相談されたときはできるだけ協力したい」が77.3%と、いずれも高い結果になりました。一方、行動面では「『彼氏、彼女』ではなくて、『パートナー』や『恋人』など性別を特定しない言葉を使うようにしている」が17.1%、「目の前で誰かが差別的な言動をとった時は、話題を変えたり、注意をする」が36.7%、「LBGTQ+について正しく理解できるよう、情報収集や、当事者の声をしっかり聴くようにしている」が31.1%と、全体的に低い結果となっています。LGBTQ+に対するインクルージョン意識は浸透してきているものの、インクルージョンにつながる行動を実際に取っている人は限定的と言えそうです。

LGBTQ+へのインクルージョン意識と実際の行動にはギャップがある

LGBTQ+と広告

 「LGBTQ+支援を表明する企業」へのイメージを尋ねたところ、「社会の変化に対応できる」「ハラスメントが少ない」「社員が働きやすい」が上位に入り、LGBTQ+の当事者だけでなく、非当事者のあいだでもポジティブなイメージが持たれていることが分かりました。

 LGBTQ+の考えが広まっていく中で、広告表現にも変化が出始めているようです。「同性カップルを広告などに起用する商品、ブランド、サービスに対する利用意向」について聞いたところ、LGBTQ+当事者層と非当事者層いずれも約6割が「利用したい」または「まあ利用したい」と回答しています。最も利用意向が高いのは20代でした。

 今回の調査結果についてプレス向けに解説したオンラインセミナー「LGBTQ+の現状-電通の取り組みと2023年調査による紐解き」の中で、電通ダイバーシティ・ラボ リサーチャーの中川紗佑里氏は、「広告表現をインクルーシブにしていくことは、今後ますます求められるようになると考えている。一方で、テレビCMやポスターなどの広告表現において、LGBTQ+の出演者や登場人物が適切に扱われている、描かれていると感じるかを聞くと、LGBTQ+当事者層、非当事者層ともに約6割が『そう思わない』『あまりそう思わない』と回答しており、広告を含めたメディアにおけるLGBTQ+の描かれ方にはまだ改善の余地があることが同時に確認されている」とコメントしています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.