X(旧Twitter)がついに有料化実験を開始 8割のユーザーはROM専だから投稿に課金しても影響は限定的?Social Media Today

Xがニュージーランドとフィリピンで新しい実験プログラムを開始。未認証の新規アカウントは、投稿したり他のアカウントと交流したりするために、年間1ドルを支払う必要がある。

» 2023年10月19日 07時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
Social Media Today

 どうやらイーロン・マスク氏は、最終的にXの全てのユーザーに課金することを本当に計画しているようだ。

 マスク氏は2023年9月にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とのインタビューで、botの大軍と戦うために、全てのユーザーに「少額の月払い制」を課す可能性についてほのめかした。作成するプロファイルごとに料金を支払わなければならなくすることで、botを売りさばく業者を市場から駆逐するのがその狙いだ。

 現在、Xはこのモデルを実地テストに移行しつつある。最終的には全ての新規ユーザーがXでアカウントを作成するのに1ドル課金されることになるだろう。

1ドル課金が本当にbot対策になるの?

 Xはサポート用の公式アカウント(外部リンク/英語)で次のように述べている。

本日より、ニュージーランドとフィリピンで新しいプログラム(Not A Bot)をテストしています。新規の未認証アカウントは、投稿や他の投稿とのやりとりを行うために、年間1ドルのサブスクリプションにサインアップする必要があります。このテストでは、既存のユーザーは影響を受けません。

 新しいアカウントでも引き続き投稿を読むことはできるが、自分で投稿したり、いいねや返信をしたりすることはできなくなる。Xユーザーの80%は何も投稿しないと言われていることを考えると、有料化はそれほど大きな問題ではないのかもしれない。それでも、これからXアカウントを開設しようとする多くの人々が二の足を踏む可能性はある。一方で、Xのレコメンデーションのアルゴリズムにも影響を与えるだろう。というのも、非有料ユーザー(フォローしているアカウント以外)のエンゲージメントデータが事実上システムには残らないことになるからだ。

 Xを使うことは可能だが、それは面白くも何ともない最悪のバージョンということだ。もちろん、お金を払えば別だが。

 「Not a Bot」と名付けられたこのプログラム(外部リンク/英語)により、Xは「botやスパマーに対抗するための強力な手段を持つ」ことが可能になる。

この新しいテストは、プラットフォームへのアクセスのしやすさと少額の手数料のバランスを取りつつ、スパムやプラットフォームの操作、botを減らすための、すでに成功している取り組みを強化するために開発されました。利益のためではありません。これまでのところ、サブスクリプションという選択は、大規模に機能する主力ソリューションとなりつつあることが証明されています。

 実際には、使用料を支払っているのはXユーザーのごく一部にすぎない。それでもなお定額制オプションがbotとの戦いに役立っていると評価できるのだろうか。

 有料ユーザーの投稿は、返信欄やメインの「おすすめ」フィード内でより上位に表示されるようになり、逆に非有料ユーザーのやりとりは全て下位に押しやられる。結果的に、目に見えるところにbotが出現する確率は下がることになると思われる。だが、Xのユーザーの0.5%未満しかXプレミアムに登録していない現段階では、これがbot売買の抑止力としてどのように作用するかは不明である。Xプレミアムを契約するbotプロバイダーはほとんどいないだろうが、そもそも99.5%のユーザーも契約していないのだから……。

 いずれにせよXは、利用者に課金することこそが、この点で実行可能な、可能性のある道筋であると確信している。Xが言うように、それは収益のドライバーではない。実際に収入をもたらすものであったとしてもだ。

 理論的には、課金が全ユーザーに展開されれば、アプリ内のbotを排除するか、少なくともbotをより高コストなものにすることができる。故に、とりわけ多くのbotが発生する発展途上地域においては、少額の有料課金は抑止力として機能するだろう(金額はUS1ドルまたは現地の相当額)。

 しかしそれでも、ネットで悪名高い2大勢力であるロシアの「Internet Research Agency(IRA)」と中国の「Dragonbridge」のような、しばしば政府関係者によって資金提供を受けているとされる集団による、より大規模で組織的な誤報キャンペーンを止めることはできないだろう。

 また、最近では党派的なプロパガンダのために既存のXアカウントを利用する動きもあり、今回の取り組みではそれらに影響を与えることはできない。ただし、これらのプロファイルが取り除かれた場合は理論的上、再び同じようなネットワークを開始するために1プロファイル当たり1ドル支払う必要が生じる。

 つまり、時間が経てば、より大きな影響を与える可能性はあるということだ。そして、ユーザーにとっての相対的な価値はかなり限定的ではあるが、年間1ドルを支払う方が月8ドルよりもましなのは間違いない。

 前述したように、Xユーザーの大多数は投稿しない。投稿するつもりがない人はお金を払わないだろう。最適な体験を得るためにお金を払わなければならないというなら、悩むこともないはずだ。その意味で私は、Xがサードパーティープロバイダー経由でプロフィール認証のための手数料をユーザーに課すなど、提案をより良いものにしていってほしいと思っている。

 Xは最近、ID認証サービスを提供するAu10tixと提携して自主的なID確認に関する新しいパイロットプログラムを開始した。これにより、ID確認に関する手作業の一部をサードパーティーに委託できるようになる。Xはより広範なID確認をシステムに導入することが可能になるが、Au10tixをはじめとするパートナーには作業を進めるために報酬を支払う必要がある。そのため、Xにコストが発生する可能性もある。2ドルほどの手数料を徴収して一度限りの認証をカバーし、そのプロファイルに別の色のチェックマークを付ける。そうすれば、少なくとも寄付に対する見返りを提供することはできる。

 全体として、核となる取り組みとその原則は理に適っている。しかし、有料化がXに本当に影響を与えることがあるとすれば、Metaに付け入るすきを与え、Threadsの注目度を高めてしまうことだろう。Metaのbot検知プロセスはより洗練されており、今のところThreadsはbotやスパムに蹂躙されていないようだ。Threadsが新たな居場所となり、Xの潜在的な新規ユーザーが支払いを拒否してMetaのプラットフォームに流れることで、もしかしたらXは実際に損をすることになるかもしれない。

 繰り返しになるが、1ドル課金はXプレミアムよりもはるかに優れた提案だ。特に発展途上の市場では、新規ユーザーが少額であれば喜んで支払うことがテストによって示され、Xのbot撲滅計画の新たなバックボーンとなるだろう。

 Xは、このテストの結果について、近日中に詳細を発表するとしている。

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