生成AIは顧客サービスをどう変えるのか? Genesysの事業戦略コンタクトセンターソリューションから「Experience as a Service」へ

Genesys Cloud Servicesが戦略説明会を開催。AIを活用した顧客体験やSalesforceとの連携強化、日本における投資の進捗などについて、幹部が語った。

» 2023年10月12日 04時00分 公開
[織茂洋介ITmedia マーケティング]

 Genesys Cloud Services(以下、Genesys)は2023年10月5日に記者向けの説明会を開催。同社CEOのトニー・ベイツ氏と最高製品責任者のオリヴィエ・ジューヴ氏が登壇し、AIを活用した顧客体験やSalesforceとの連携強化、日本における投資の進捗など、最新の事業戦略について語った。

「Experience as a Service」とは?

トニー・ベイツ氏

 長年にわたりコンタクトセンター向けのソフトウェアを開発・販売してきたGenesysだが、ベイツ氏は同社の提供価値がそこにとどまるものではないと述べ、「Experience as a Service」であることの重要性を強調する。

 「顧客サポートを提供するだけではなく、エンドツーエンドでの顧客体験が重要だ」(ベイツ氏)

 これまで、コンタクトセンターの課題は主に効率性の追求だった。しかし、パーソナルな顧客体験を実現していくためには「エクスペリエンスオーケストレーション」が重要になる。ここで言うエクスペリエンスには、カスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験)のみならずエンプロイーエクスペリエンス(EX:従業員体験)も含まれる。顧客サービス部門の担当者(エージェント)は、顧客に関するさまざまなデータに触れ、文脈を理解しているからだ。

 「われわれのプラットフォームはAIを活用して全ての体験をオーケストレートする。また、CRMなどとのシステムと統合することによって、さらにさまざまな知識、ノウハウを活用し、パーソナルな顧客体験を提供できる。コンスタントにイノベーションを進める上ではクラウドへの移行も非常に重要だ」(ベイツ氏)

 AIを活用したプラットフォームをクラウドネイティブで、かつさまざまな機能(CX、ワークフォースエンゲージメント、アナリティクスなど)をオールインワンで提供するのが「Genesys Cloud CX」だ。Genesys Cloud CXの利用者数は100万を超え、2024年度の第2四半期(2023年5月1日〜7月31日)の売上高は前年同期比50%増と、成長を続けている。

 日本市場においてもGenesys Cloud CXに対する需要は高まっている。日本市場における2024年度第2四半期クラウド収益は前年比35%増、ビジネスサービス(BPOを含む)からの年間売上高の成長率が250%以上、金融サービスにおいては200%以上、小売サービスでは、125%以上の成長率だ。

日本での投資も拡大

オリヴィエ・ジューヴ氏

 さらなる市場拡大に向けて、Genesysは日本での投資を強化している。一つが事業継続および西日本全域の企業に低遅延のサポートを提供する目的でGenesys Cloud CXをAWS大阪リージョンに新設すること(2023年末サービス開始)。もう一つが、2023年9月に発表したSalesforceとの戦略的提携だ。ジューヴ氏によると、日本でGenesys Cloud CXを利用する企業の22%はSalesforceを併用している。Genesys Cloud CXと「Salesforce Service Cloud」を統合した顧客体験と顧客関係管理ソリューション「CX Cloud from Genesys and Salesforce」により、企業はより高度なCRMを実現できるようになる。

 また、AI活用の領域でも日本独自の取り組みを予定している。グローバルでは2023年6月に生成AIの提供を発表しており、これによりGenesys Cloud CXで大規模言語モデル(LLM)を利用してテキストの自動要約機能などが使えるようになっている。これを日本語化して、2023年第3四半期中に提供する予定だ。第4四半期にはチャットのコンテンツや検索結果を基に顧客への質問に対する回答候補を提示する機能を、2024年第1四半期には感情・共感分析や会話記録の自動要約、音声エージェントなどの機能をβ版としてリリースする。

パンデミック後のCXトレンド

 COVID-19の影響で対面の顧客接点が失われる中で、コンタクトセンターのニーズは高まった。また、BCP(事業継続)の観点から、コンタクトセンターのクラウド移行も進んだ。効率的なルーティングやオペレーターの在宅勤務実現などのメリットに関心を寄せた企業も少なくないだろう。しかし、世の中は徐々にパンデミック以前の日常を取り戻しつつある。その影響についてベイツ氏は以下のように答えた。

 「コロナ禍においてインタラクションの方法には大きな変化があった。確かに、小売業などでは従来のような対面の活動が戻ってきてはいるが、パーソナル化はますます加速している。また、BCPの観点からクラウドへの移行が加速されたが、やってみるとこちらの方がいいんじゃないかということも多かったはず」

 柔軟性、イノベーション、機能性といった観点から、新たなトレンドはこれからも続いていくというのだ。また、ジューヴ氏も、「エージェントの在宅勤務が広がる中で仕事の質を維持することが求められ、CXとEXの両方を管理できるプラットフォームの必要性が高まった」と付け加え、コロナ禍で芽生えたExperience as a Serviceへのニーズが消えることはないことを強調した。

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