採用広報におけるnote活用事例note活用で企業の「想い」を広げる【第2回】

noteを活用して採用広報で成果を得た2社の事例を解説します。

» 2023年08月30日 06時00分 公開
[北村類希コムニコ]

 コムニコ北村です。今回はnoteでnote pro事業部長を務める半田氏と共に、採用広報の目的でnoteを活用する際に意識しておきたい点や、noteの法人向け高機能プラン「note pro」(※)を導入することでどんなポイントが成果につながったのか、カミナシとNECネッツエスアイの2社の運用事例を紹介しつつ、解説します(以下、文中敬称略)。

note pro:法人向けの高機能プラン。デザインカスタマイズや分析機能などさまざまな機能を利用することができ、カスタマーサクセスチームによる運用サポートを受けることが可能になる。

noteの半田氏(左)と著者(右)

採用広報は日々の地道な積み重ねがカギ

半田美幸さん 半田美幸
はんだ・みゆき note note pro事業部長。新卒でWeb制作会社に入社後、LIFULLにてプランナー、マーケティング、組織マネジメントを担当。社団法人21世紀学び研究所を立ち上げ、事務局長就任。企業のリーダーシップ開発、組織コンサルティングに取り組む。2020年にnoteに入社。事業開発を経て、法人向け高機能プランnote proの事業責任者に就任。

北村 広報を目的としてnoteの活用を始める企業は、どのような課題をお持ちの方が多いのでしょうか。実は僕、「採用広報」という言葉にあまりなじみがなかったんですよね。noteに携わるようになってからようやく聞くようになったイメージです。

半田 大きく2通りあります。まず1つは「採用の応募者数を増やしたい」という課題です。大手の企業でないと、限られた予算の中で、なかなか自社の事を知ってもらう機会が少ないのが現状です。あとは、採用条件面以外のアピールポイントを知ってもらう機会が少なく、応募者の数を集めるのに苦戦することが多い。2つ目は、「自社の魅力が伝わりづらい」ことです。選考過程に進んでも、入社意向が高まらず、途中で離脱してしまうという悩みをお持ちの採用担当者も多いです。こういった課題を解消する目的で、採用広報にnoteを活用されていると思います。

北村 採用広報の目的でnoteを活用する時、noteさんとして、どんな方法が成果につながりやすいかなど、運用にあたって意識した方がいいことはありますでしょうか?

半田 そうですね。採用広報に関しては、例えば一つの記事がバズって効果が出るという流れはあまり無く、日々の地道な積み重ね、記事のストックがポイントになるかと思います。並行して、職種やバックグラウンドなど、採用候補者に親和性が高い情報を届けられるか、という点が採用広報には大切でしょうね。これには、人事・採用担当者の裁量も関わってくると思います。「この候補者にはこの記事が合っている、あの候補者にはあの記事が合っている」というところを見極めて、良いタイミングで記事を紹介することが重要かなと。

北村 各企業、さまざまな業種の募集があると思うのですが、例えば営業、エンジニア、マーケターなど、各ポジションにおいて、どんな社員が働いているのか、どんなビジョンを持って働いているのか、などの情報が、幅広く多くストックできていることが重要ということですね。

カミナシは内定承諾率が大幅アップ

北村 では具体的な企業事例を、ここからは紹介していきたいと思います。まずはカミナシについてです。同社はnoteを活用する際、どのような課題をお持ちだったのでしょうか?

半田 カミナシさんは、スタートアップ企業なので、やはり認知度に課題をお持ちでした。また、「ミッションドリブン」な会社なので、自社の想いに共感する仲間を増やしたいという考えもあったようで、仲間を増やしていくにあたり、情報発信の必要性は認識されていたですが、発信する場所がなく、イチからCMS(コンテンツ管理システム)を構築して発信場所をつくるリソースもなかったということも、当初の課題としてありました。

北村 カミナシさんの場合、noteを活用し始めたときから、note proを契約されているそうですね。note proを導入する一番の決め手は何でしたか?

半田 noteの活用に関しては、すぐに、構築コストもなく始められますし、メンテナンスも特に必要がない点。note proを契約してくださった決め手としては、自社ブランディングのため、トップページや導線作りなどのデザインカスタマイズができるというのが大きかったようです。

カミナシのnoteアカウント(https://note.kaminashi.jp/

北村 それで運用を始めた結果、内定承諾率が大幅に上がったと。採用担当者が、採用候補者に色々なnoteの記事を届けるなど、地道な努力の積み重ねが功を奏して、このような定量的成果につながったというところでしょうか。

半田 そうですね。あとは、採用候補者によっては、面接前に面接官のnoteの記事を読んでくるという方もいます。note proであれば、別アカウントの記事を自社アカウントのトップページに表示する「マガジンリツイート」という機能を使うことができます。社員が個人アカウントで公開した記事を、自社アカウントから見つけることが可能です。候補者は、面接官の名前を事前に聞いたら、その方の名前を検索して、記事を読んで、どういう方と面接をするのかを把握した状態で面接にのぞむことができます。そうすると面接官にとっては、面接前からすでに自己紹介ができており、アイスブレイクのきっかけもつかみやすいので、とても話を進めやすいといった事例もあります。候補者は、会社の事、仕事の事をある程度理解したうえで面接に来るので、理解が進むということもあるようです。私自身の実体験になるのですが、「半田さんのnoteを読んで、note社の入社を決めました!」という方が当社にいまして。

北村 えー、すごい!

半田 本当にすごくうれしくて。実際に、note proを契約いただいているお客様から同様の事例を伺うことも多いんですよ。

北村 面接相手のことが事前にわかるって、面接においては重要そうですね。

半田 かなり大きいと思います。

北村 カミナシさんがまさに、「マガジンリツイート」を活用されている良い事例ということですね。

半田 おっしゃる通りです。企業アカウントのトップページから、社員の記事にアクセスし、そこから先は、一人の社員の働き方や、業務内容、仕事への想いなどを記事で読むことができます。「誰が」執筆者で、「どんな人」なのか、が分かりやすくなっています。こうすることで、採用候補者の方が、自分と近い職種の人の状況など、noteのページから情報収集することができます。例えばカミナシさんは、できるだけ多くの社員がnote記事を書くという文化が根付いていらっしゃるので、豊富なコンテンツを用意できているのだと思います。

北村 あらためて考えると、社員が持ち回りのような形で投稿するって、すごいことですよね。

カミナシのアカウント上にはさまざまな社員の名前が挙がっている

半田 もちろん、どこまでやるかは企業次第で、ここまでの運用に持って行くのは、それなりに手を掛けないといけないかなと思います。そもそも、まずは各社員が個人でnoteアカウントを作成しないといけないハードルがありますね。スピード感や管理のしやすさを考えると、「●●●社note編集部」というかたちで1つアカウントをつくり、編集部が取りまとめて運用するのも良いです。

北村 採用候補者が、応募する企業の社員一人ひとりの仕事内容や働き方、ビジョンを知ることができるのは、確かに内定承諾率に良い影響が出そうです。

NECネッツエスアイは新卒採用のエントリー数が前年比162%に

北村 NECネッツエスアイは社員数が連結で7500人程と、大きい企業様ゆえに、当初は社員同士のコミュニケーションを活性化させるというインナーブランディングの目的で始められたそうですね。社内の情報発信を社外にもオープンにすることで副次的に採用の成果につながって、新卒採用のエントリー数が前年比162%と大幅に上がり、採用選考への参加人数も増えたとのことで。半田さんが、NECネッツエスアイさんのコンテンツや運用方法で、気になったものはありますか?

半田 NECネッツエスアイさんは、すでに知名度が高い企業だと思います。コーポレートサイトもしっかり作り込まれていて、会社からの情報発信も細かくされている。そこにプラスアルファとしてnote proを契約することで、コーポレートサイトでは伝えきれない社員の近況や、社内で行われたことをかなりスピーディーに記事にするというサイクルが回っている点が素晴らしいなと拝見しています。すごくよく活用してくださっていると思います。

NECネッツエスアイのnoteアカウント(https://note.nesic.co.jp/

北村 なるほど。NECネッツエスアイさんもそうですが、「採用広報」を目的としている企業の中には、本来クローズドである社内報を外部にオープンにする「オープン社内報」を公開する場としてnoteを活用している企業もいますよね。実際、当社コムニコも、「at comnico(https://note.comnico.jp/)」というnoteのアカウントを運用していて、「オープン社内報」の連載場所としても活用しています。この「オープン社内報」って言葉、以前からあったでしょうか?

半田 いいえ、正直私もnoteに入社して初めて知りました。おそらくですが、noteを使っているいち企業が「オープン社内報」をやり始めて成功しており、一気に広まったんだと思います。この「オープン社内報」という言葉が、今世の中にどれだけ知られているかは分かりませんが、一部の企業にとっては、一般的な用語になりつつあるようです。noteが、そこに貢献できていれば嬉しいです。

NECネッツエスアイのオープン社内報。noteのトップページの中でも目につきやすい場所に置かれている

まずは社員をコアファンに、そこからファンの輪が広がる

北村 「オープン社内報」が、どういう意味合いで使われているのかが、気になっています。オープンにしているからには、何か理由があると思っています。今までの社内報は、社員に自社の取り組みを知ってもらって一緒に盛り上げようと促したり、インナーブランディングの役割がメインであると認識していました。それを、noteを活用してオープンにしていくというやり方に変わった。これはつまり、社内報というものの役割が変わったのでしょうか。

半田 もともと社内報の目的は、社員のモチベーションやエンゲージメントを高めるためだったと思うんです。ただ、果たして本当に、これを社内に閉じる必要性があるのか?という問いが発生したのかなと。現在は、企業に透明性の高さが求められる時代です。社外秘の情報に当たらないもので、良い取り組みならば、外部に発信しても良いのではという考えに変わったのではないでしょうか。note社は、お客様である企業に対して、「企業のファンを増やすには、まず自社の社員をファンにすることから始めてください」とお伝えしています。輪の内側にコアファンである社員がいて、その社員が「いいね!」と言っていることが優良顧客やファンに伝わる。そこから外側にいる潜在顧客に伝わるということを、同心円状の輪を用いて説明しています。ですので、「オープン社内報」も、会社のことを一番知っている社員がコアファンであって、そこから顧客や採用候補者に広がっていくと考えています。

コアファンを中心に“共感”が生まれ、ファンが増える(出典:note)

北村 社内報をオープンにすることで、誰もが見られるようになることはもちろん、採用候補者は応募する会社の雰囲気がわかるようになる。また自社の社員は、会社の考え方や想いをより理解することができ、社内コミュニケーションの活性化にも寄与する。オープンにする分、慎重にならないといけない部分はあると思いますが、得られる効果は大きそうです。


 次回は、B2Bブランディングの目的におけるnoteの活用について、企業の事例を交えながら引き続きnoteの半田氏と共に解説します。

この連載について

今、多くの企業がオウンドメディア運用に活用している「note」。noteは、2014年4月にサービスが開始され、2023年5月末時点で会員数は663万人に達している。当連載では、SNSマーケティングの総合代理店であるコムニコが、複数社の好事例の紹介も交えながら、企業が有効にnoteを活用する方法を解説する。


執筆者紹介

北村類希

北村類希さん

きたむら・るいき コムニコ ビジネスデベロップメント局 マーケティングチーム エバンジェリスト。2016年にコムニコへ入社。SNSコンサルタントとして大手飲料メーカー、食品メーカー、金融、地方自治体など、数多くの企業のSNSマーケティング支援に従事。 現在はエバンジェリストとして、社内外を問わずSNSマーケティングに関するセミナーや勉強会などに多数登壇。コムニコで培った知見を生かして一般社団法人SNSエキスパート協会の認定講師としても活動しており、SNSの正しい知識を持つ人材育成に注力する。


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