「CIAM」について今マーケターが知っておくべきこと快適な顧客体験を阻む「ログインの壁」

デジタル顧客体験の質を左右するのはパーソナライゼーション。だが、その実践を阻害する意外な要素がある。それが「ログインの壁」だ。

» 2022年06月21日 08時00分 公開
[冨永裕子ITmedia]

 ECサイトやモバイルアプリ、B2Bの各種SaaSを利用する際、必ず求められるのが本人確認のためのユーザーIDとパスワードの組み合わせだ。利用サービスの数が増えるほど、その組み合わせの数は増えていく。ユーザーは面倒になってついパスワードを使い回しがちだが、それを容認することはセキュリティの観点から好ましくない。かといって、複雑なプロセスを放置すれば、それはそれでユーザーにストレスを与えてしまう。「ログインの壁」をどう乗り越えるかは、快適で安全な顧客体験を追求する上で無視できない課題だ。

3つの摩擦が顧客体験を損なう

 一般的にセキュリティ対策の基本とされるのは、サービスごとに強度の高いパスワードを使うことだ。しかし、昨今においては、一人のユーザーがビジネス活動と日常生活を合わせて数十種類のサービスを使っていることが珍しくない。個別にIDとパスワードの組み合わせを設定し、全てを忘れずにいるのは困難だ。利用の度にログインを迫られる負担も大きい。ユーザーにそこまでの負担を強いてセキュリティ対策を講じることが本当に正しいことなのか。

 この疑問と悩みを解決するのがIAM(アイデンティティーおよびアクセス管理)製品だ。IAMは、適切なユーザーが適切なタイミングで適切なデジタルリソースにアクセスできるようにするもので、大きく2つに分類できる。1つが社内向けのサービスを対象とするWIAM(Workforce Identity and Access Management)、もう1つが顧客向けのサービスを対象とするCIAM(Customer Identify and Access Management)。顧客体験の観点からマーケターが注目すべきはCIAMの方だ。

 IAMベンダーのOktaでAPAC担当CIAMリードを務めるリチャード・マー氏は、「デジタルの顧客接点を通じて提供する体験が摩擦(フリクション)を伴うものになり、顧客エンゲージメントの構築と維持を阻害している。企業がパーソナライゼーションへの投資から最大の効果を得るまでには、3つの大きな障壁を取り除く必要がある」と語る。具体的にはどのような摩擦があるのか、どうすれば解決できるのか。順に見ていこう。

Okta APAC担当CIAMリード リチャード・マー氏

一度に多くの情報を集めなくて済むようにする

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