クックパッドの「脱広告モデル」に向けた新事業 食関連中小企業のバリューチェーン全体をデータ活用で支援する「クックパッド・アライアンス」事業責任者に聞く

クックパッドが2021年にローンチした新規事業「クックパッド・アライアンス」は何を目指すのか。B2B事業責任者に聞いた。

» 2021年09月29日 08時00分 公開
[野本纏花ITmedia]

 国内最大級のレシピサービスを一般消費者向けに提供する一方、それを核とした広告ビジネスを主軸事業として展開してきたクックパッドが、2021年8月に新規事業「クックパッド・アライアンス」を立ち上げた。ここでは、クックパッドが保有するデータやノウハウ、ネットワークをフル活用し、全国で食に関わる中小規模のメーカー課題解決を支援するという。開始時点における提携先は全国で6社だ。

 クックパッド・アライアンスが既存のビジネスと異なるポイントは、大きく分けて3つある。1つ目は、これまで付き合いのあるナショナルクライアントではなく、食品製造業の99.5%を占めるといわれる全国の中小企業をターゲットにした点。2つ目は、商品の認知拡大を主眼とする広告領域だけでなく、ニーズ調査から商品開発、チャネル選定、流通商談支援、販路開拓、ファン獲得施策まで、クライアントのバリューチェーン全体に対する支援を行う点。3つ目は、クライアントの売り上げや利益の増加分に応じて報酬を受け取るレベニューシェアモデルを採用した点だ。

中小規模の企業が抱えるさまざまな課題を解決

 例えば、栃木県佐野市で米粉などの食材やスーパーフードの加工・製造販売を行う食品メーカーでは「大手の製パン企業に米粉を卸したいが、なかなか受注につながらない」という課題を抱えていた。そこでクックパッドが調査やデータ抽出を行い「米粉を使えばパンがサクサクになる」「リベイクするなら米粉を入れた方がおいしくなる」「今の消費者はモチモチよりサクサクを求めている」といったエビデンスを集め、プレゼン資料の作成を支援するだけでなく、商談にも同行する。

 支援方法はクライアント各社の課題によって、大きく変わる。小売店の棚を取りに行く場合には、POPやパッケージも製作する。商品の共同開発によって「Supported by クックパッド」の表記を付けた什器を作ることもある。新商品の共同開発によって「クックパッド共同開発」のロゴをつけて販売することもある。クックパッドが擁するモニターを使ってA/Bテストを事前に実施することも可能だ。他にも、利益率の高い商品であればECモールへの出店計画を立てたり、逆に利益率の低い商品であればクライアントの自社ECサイトを構築して誘導施策も提案したりするなど、まさに全方位で、支援先のビジネス成長に貢献できることは何でもするスタンスだ。

ビッグデータでバリューチェーン全体を支援

コロナ禍で見えた内食ビッグデータの真価

北井朋恵氏。2019年にクックパッドに入社し、2020年9月から同社のJapan執行役員として、マーケティングサポート領域のB2B事業を統括する

 クックパッド・アライアンスが生まれた背景には、長引くコロナ禍によってもたらされた、ユーザーの料理に対するニーズの急速な変化と多様化がある。

 2020年4月、コロナ禍に伴う初めての緊急事態宣言が発令された当初、一般消費者の多くは突如として「お昼ごはん」に悩まされることになった。飲食店の多くが営業できなくなる一方、在宅勤務へのシフトもあって、内食ニーズが大幅に拡大した。手軽に作れるランチメニューを求める人々はクックパッドで検索を始めた。

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