企業文化は「第2の製品」。自らが求める価値と行動指針を「カルチャーコード」として定義するHubSpot の考え方を日本法人のキーパーソンに聞いた。
長期化するコロナ禍で、多くの企業がテレワークを実施している。職場は画面の中にしか存在せず、同じチームのメンバーと会う機会は激減した。中には、入社以来一度も出社したことがないという人さえいるようだ。
そうした中、社員が自社で働く理由を再認識することは、当の社員はもちろん、企業にとっても切実な課題だ。昨今「パーパス」や「企業理念」といったキーワードを耳にする機会が増えた理由の一つには、おそらくそうしたこともあるのだろう。実際、老舗商社が企業理念を改訂したり、理念浸透のプロジェクトを進める製造業など、日本でも多くの企業が、自社のあるべき姿を社員と共有しようと試みている。しかし、言うは易し行うは難しである。きれいごとを並べるだけでは企業文化は育たない。
HubSpotはクラウド型CRM プラットフォームを軸に企業のマーケティング、セールス、カスタマーサービス支援するソフトウェアとサービスを世界120カ国で展開している。2006年の創業から15年を経た現在、有料版の顧客数は12万社以上に上り、時価総額は約3兆円。押しも押されもせぬグローバル企業に成長した。
そんなHubSpotが強みの一つとして掲げるのが、ユニークな企業文化だ。同社は、自らが求める価値と行動指針を「カルチャーコード」として定義してスライド資料にまとめ、社内共有している。カルチャーコードは頻繁に見直されるが2020年末に大きな改訂があり、日本語版も9月に最新版を発表した。これを受け今回、日本法人のHubSpot Japanでシニアマーケティングディレクターを務める伊佐裕也氏に、HubSpotが大切にする企業文化とカルチャーコードについての考えを聞いた。
複数の人が集まり、共に生きていく上では共有すべき価値観や信条といったものが必要になる。それは自然と生まれてくる部分もあるが、ただ何となく成り行きまかせにしてよいものでもない。企業が活動を持続し、成長を遂げるためにはどういうカルチャーを持ちたいのかを、主体的に示すことが重要になってくる――。伊佐氏は、HubSpotがカルチャーコードを明文化する理由をそのように説明する。
カルチャーコードはHubSpotにとって、同社が顧客に販売しているCRMプラットフォームと並ぶ「もう1つの製品」と位置付けられる。ただし、顧客ではなく社員向け。「HEART」で表される5つの資質を備えた社員に4つの行動指針「SOUL」を示している。HEARTとSOULはそれぞれ、以下の頭文字を集めたものだ。
カルチャーコードは社員にとっての道しるべとなるものだ。細かくルールを定めるのではなく、大きな指針だけを示すことで、社員はいますべきことを自分の頭で考えるようになる。顧客を最優先に行動すること、自主性を持つこと、隠しごとをしないことなど、当たり前のことのようにも思えるが、伊佐氏は「その当たり前をきちんと言語化することこそが、企業文化の定着にとって極めて重要」と話す(以下、発言は全て同)。
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