世界的な新型コロナ感染拡大によるロックダウンと休校は、子どもたちの行動にも大きな影響をもたらしています。オンライン教育が進化する米国では、学校と家庭をスクールコミュニティーアプリがつないでいます。
アプリマネジメントソリューションを提供する英国Airnow傘下のAirnow Data(旧Prioridata)のスマートフォンアプリ市場分析データを使い、世界のアプリの動向をさまざまな切り口から探ります(執筆者の所属するインターアローズはAirnowの国内マネジメント企業です)。
通常、MAUやDAUはアプリに実装された測定用SDKを使い、モバイルアプリユーザーをパネルとして推定値を出しますが、 Airnow DataはAirnow傘下企業およびデータパートナーとの提携により150万社のデベロッパーとパブリシャーデータ、さらに35億台のトラッキング対象デバイスとビッグデータから算出しています。
UNESCO(国際連合教育科学文化機関)の調査によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による感染拡大を受けて2020年4月には195カ国が全面休校、世界中の学生・生徒・児童の90%に相当する16億人が自宅学習を余儀なくされました。日本の学校は2020年6月から再開しましたが、2020年8月2日時点で米国やインドなど106カ国では全面休校が続いています。
従来の教育環境の世界的停止は、学習の遅れやセイフティーネット(給食の提供や心身の健康保全)の喪失、教育格差ど深刻な影響を招いています。
それが故に今、「Edtech」と呼ばれる分野が大きく発展しています。つまり教育テクノロジー(EducationとTechnologyの造語)です。オンライン教育は既に20年以上の歴史がありますが、昨今のコロナ禍を受けて世界的に導入が急増しています。また、学生や教職者、保護者からのフィードバックにより、さらに多くのサービスが生まれそれぞれ改善を続けています。
今や「Eラーニング」という呼称はやや古いものとなり、オンラインとオフラインを掛け合わせた「ブレンド型学習」や「反転授業(オンライン授業と対面習熟チェック)」といった新たなスタイルも生まれています。
世界のオンライン教育の核となっているのが、環境を問わずアクセスが可能なモバイル端末で利用する教育アプリです。今号では、Edtechが進化する米国の教育アプリのトレンドをご紹介します。
9月からの学校再開に対する是非が沸騰している米国はEdtech先進国でありながら、コロナ禍が新たな教育格差を生む懸念があります。2020年4月4日付の「USA Today」の記事(外部リンク/英語)によると、都会の低所得者層からアラスカの過疎地域住民に至るまで、アメリカ人の半数近く(1億6300人)の自宅にはハイスピードインターネット接続環境がありません。オンライン学習に参加しづらい子どもが多く存在し、政府やGoogleなどが無料のWi-FiアクセスやPCの提供を急いでいますが、いまだ追い付いていません。無料Wi-Fiスポット求めて毛布持参でキャンプして授業に参加、あるいは公共駐車場で宿題する子ども達までいるようです。この点においても、何時でも何処でもアクセス可能なモバイル端末の教育アプリは重要であり、利用数の拡大が続いているのです。
新年度を目前にして、米国で最もダウンロードされる教育アプリはスクールコミュニティー(学校連絡)アプリの「Remind」です。教師と生徒、保護者、クラス、学校間での連絡事項の共有やコメント、写真、動画、ファイル、提出物、調査票などを一元化するアプリです。既読・未読が分かるのでメッセージの受信確認も容易です。また、多様性ある米国らしく、表示・翻訳言語を70カ国語から選ぶことができます。たとえ英語が苦手な移民保護者であっても、緊密に教育へ参加できます。
第4位の「Canvas Student」と第5位の「ClassDojo」も同様のスクールコミュニティーアプリです。「Canvas Student」は選択教科や成績の管理をカスタマイズできるので、ハイスクール学生に最適です。また、「ClassDojo」は主に低学年向けで、教師が励ましやコメントなどを子どもへ送信して楽しくクラスのつながりを実現することができます。
上記いずれのアプリも、2020年導入数の急激な上昇カーブは2回起きています。米国でロックダウンが始まった3月と、新学年直前の8月です。
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