フリマアプリの普及で中古品の二次流通が活発になると新品が売れなくなると思われがちですが、メルカリの調査によると決してそうではないということです。
経済産業省が取りまとめた「電子商取引に関する市場調査」結果によれば2018年におけるフリマアプリの市場規模は6392億円(前年比32.2%増)。二次流通が急拡大する中で一次流通の縮小、つまり新品が売れなくなるのではないかと心配する声が聞こえてきます。
しかし、むしろフリマアプリ利用は新品の消費を喚起することもあるのではのではないかという仮説の下、メルカリは国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師の山口真一氏と共同で、全国の15〜69歳男女2万人に「フリマアプリ利用による新品商品への消費喚起効果」の実態に関する調査を実施しました。
本稿では、2019年2月13日にメルカリが開催した調査結果発表会における山口氏の解説を紹介します。
今回の調査ではまず、メルカリで取引量の多い「ファッション」「スポーツ・レジャー」「理髪料・コスメ」「家電・スマホ」「エンタメグッズ」「おもちゃ・ホビー」の6カテゴリーにおいてフリマアプリ利用者の新品購入金額の変化を調べました。
その結果、フリマアプリで「購入」を経験した人は未経験者に比べて6カテゴリー全てにおいて新品購入金額が増加する効果が見られました。ただし、フリマアプリでの購入経験がある人の新品購入金額が高いのは経済学でいう内生性問題(ファッションが好きな人は新品購入金額も、フリマアプリ購入金額も増加する)と考えられます。そこで、フリマアプリ利用者の新品購入金額に影響を及ぼす要素を「フリマアプリでの購入金額」「フリマアプリでの出品金額」「年収などの属性」「当該分野に対する好み」の4要素と解釈し、以下の分析モデルを構築。これにより選好を調整した上、操作変数法で回帰分析を行い、フリマアプリ利用者の新品購入金額の変化を推計しました。
その結果をまとめたのが以下の図です。フリマアプリで「出品」を経験している場合、6カテゴリー全てにおいて、新品購入金額が増加する効果が見られました。一方で「購入」を経験している場合、「理髪料・コスメなど」「家電・スマホなど」「おもちゃ・ホビーなど」の3カテゴリーでは新品購入金額が減少する効果も見られました。
上の結果を基に1年間分の新品商品の消費喚起効果を推計(※)すると年間484億円になりました。
※推計の計算式:{(各カテゴリーの購入経験者一人当たりの新品購入金額の月別変化量×カテゴリー別フリマアプリ購入経験者率×日本のネットユーザー数)+(各カテゴリーの出品経験者一人当たりの新品購入金額の月別変化量×カテゴリー別フリマアプリ出品経験者率×日本のネットユーザー数)}×12=フリマアプリ利用による新品商品の消費喚起効果(年間)
この結果を踏まえ、調査対象2万人中フリマアプリ利用者1500人へ意識調査を実施したところ、実際に6カテゴリー中5カテゴリーで「新品購入金額が増えた」と感じている人が多いことも分かりました。
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