インタビュー
» 2019年10月15日 07時00分 公開

デジタルシフトはゴールでなくスタートにすぎない:「GAFA」を脅威と言う前に正しく理解する――オプトホールディング鉢嶺 登氏インタビュー (1/2)

『GAFAに克つデジタルシフト』(日本経済新聞出版社)を上梓したオプトホールディング代表取締役社長グループCEOの鉢嶺 登氏に話を聞いた。

[指田昌夫,ITmedia マーケティング]

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 大手インターネット広告代理店オプトの創業者で現在はオプトホールディング代表取締役社長グループCEOを務める鉢嶺 登氏が『GAFAに克つデジタルシフト』(日本経済新聞出版社)と題した書籍を出版した。この本に込めた思い、世にあふれるGAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)脅威論との違いを中心に、日本企業がデジタルシフトを成功させる条件を聞いた。

オプトホールディング代表取締役社長グループCEOを務める鉢嶺 登氏

GAFAに「勝つ」でなく「克つ」

――最初に、この本をなぜ書かれたのかを、あらためてお聞かせください。

鉢嶺 オプトはインターネット広告の事業を通じて、大手企業とのつながりがあります。どの企業の経営者と会っても、デジタルシフトの必要性は認識しています。ですが、実際に効果的な手を打てているところは多くありません。

 その一方で、われわれはベンチャー投資事業をしています。勢いのある日本の新興企業のビジネスモデルを、投資家として評価する立場でもあります。彼らは、いわゆるGAFAが突き進む破壊的なイノベーションを肌で感じ、自らもデジタルネイティブな企業として新規ビジネスを興そうと試行錯誤を繰り返しています。

 われわれの元には、この両方の情報がどんどん入ってきます。そこで、大企業のトップやマネジャークラスの方の悩みを少しでも解消して前進できるヒントになればと思い、この本を書きました。今デジタルが社会に起こしていることを正しく伝え、自社をデジタルシフトすることが生き残る唯一の手段であることを理解してもらいたいのです。

 ただし、GAFAとはデジタル化の事象であって、例えば個別にグーグルにだけ勝つことを目標にしても、全然意味がありません。これから先、GAFAに続く新しいプラットフォーマーも登場するでしょう。GAFAに「勝つ」ではなく「克つ」というタイトルにしているのは、「GAFAという事象を正しく理解し、自ら(自社)を変革する」という思いを込めているからです。

『GAFAに克つデジタルシフト』(日本経済新聞出版社)

――GAFA、中国のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)など、デジタル時代の急成長企業を従来の企業はどう理解すればいいのでしょうか。

鉢嶺 典型的な例として、Amazonについて考えてみましょう。ちょっと驚くのは、今でも日本の一部の経営者は、「AmazonはEC(ネット通販)の会社でしょ」という理解だということです。ITmedia マーケティングの読者の方ならそのようなことはないと思いますが、Amazonは今や全ての顧客接点を押さえつつありますし、ビジネスインフラであるAWS(Amazon Web Services)の勢いも止まりません。

 はっと気が付いたら、もう何をするにもAmazonにお金を払わなければビジネスが1ミリも動かないという事態になるかもしれません。アパレルでも家電でも、今もしAmazonが日本市場を本気で獲ると宣言したら、対抗できる日本の流通企業はほとんどないのではないでしょうか。

――そうならないように、今のうちにデジタル時代に生き残るための対策をしなければいけないと。

鉢嶺 ただ、理解しておくべきなのは、日本企業がAmazonをはじめとするGAFA、BATと同じ土俵で戦おうとしても、そもそも勝ち目はないだろうということです。GAFAは米国の企業で世界の「英語圏」市場の10億人を相手にビジネスを拡大してきました。BATは、中国市場単独で10億人超です。つまり、作った商品やサービスを即座に10億人市場に向けて放つことができます。彼らのデジタルビジネスが破壊的であることの本質は、まさにここにあります。

 一方、多くの日本企業は、まず日本市場での成功を目指すことに何の疑問も持ちません。そうすると市場は1億人です。GAFA、BATの10分の1の規模しかありません。結果的に研究開発にかけられるお金もコンテンツの制作にかけられるお金も、市場規模に比例して、日本は彼らの10分の1です。10億人の市場でもまれ直ちに改善ができる企業と、その10分の1のスケールで動く日本企業とでは、残念ながら最初から勝負はついていると言わざるを得ません。

――それでは、日本企業はいずれGAFAやBATに全て飲み込まれてしまうということでしょうか。

鉢嶺 飲み込まれないためには、プラットフォーマーとは違う方向性を出す必要があります。ただし、何で戦うにせよ、前提としてデジタルシフトを実行しなければいけません。ところが主に経営者の問題で、デジタルシフトに失敗する企業が続出しています。

 これにはいろいろ問題があるのですが、まず、トップがデジタルのことを理解できていないことが最大の問題です。デジタルの本質を知らないし、知ろうとしない。これでは他のことをどんなに頑張ってもうまくいきません。

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