エイベックスがデータドリブン組織になるためにやった現場主導の取り組みとは?文化は変えられる(1/2 ページ)

サイロ化を乗り越えデータ活用を全社で進めるために。

» 2019年05月28日 08時00分 公開
[冨永裕子ITmedia マーケティング]

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 音楽事業やアニメ事業を中心にエンターテインメントビジネスを幅広く手掛けるエイベックス。同社は2017年4月に事業を横断するアナリティクスチームを立ち上げ、データ分析プラットフォーム「Domo」を導入し、全社的なデータドリブン組織への変革を進めている。そのリーダーを務めるのが山田真一氏(新事業推進本部デジタルクリエイティヴグループ ゼネラルマネージャー)だ。

 本稿ではDomoが2019年5月21日に開催した記者説明会で山田氏が語った、データ分析を組織内に広げるための取り組みについて紹介する。

エイベックスの山田真一氏

データのサイロ化という課題

 チームが発足する前、データ分析に関してエイベックスが抱えていた課題は、複数の事業を展開しているが故の、データのサイロ化にあった。

 同社の場合、事業ごとに多種多様なデータを持っていたものの、事業を横断したデータの共有ができず、異なる形式のデータが乱立していた。各グループはそれぞれ異なるBIツールを利用していたためUI(ユーザーインタフェース)もばらばら。データを統合的に見る分析を行いたくてもできない状態にあった。

 さらに各担当者が個別にMicrosoft Excelで可視化を行っていたため、同じような作業に多くの人的リソースを浪費している状態でもあった。山田氏は「多くのデータがあるにもかかわらず、その価値を十分に生かせていなかった」と当時を振り返る。

 新しいデータ分析環境を整備する必要性を感じた同社は、2017年12月からDomoの導入を開始する。Domo導入の決め手はさまざまなデータソースに接続するコネクターの数が豊富であることと、美しいビジュアルにあったという。

 一方で、事業横断型の分析を行いやすくするための専任組織として、マーケターやエンジニアなど、さまざまなスキルを持つ人材を集めたアナリティクスチームも立ち上げた。チームとして目指しているのはデータドリブンの文化を社内へ浸透させること。そのために重視したのが現場主導である。

データ活用のモチベーション向上を支えた組織内のファン作り

 同社の場合、チームと経営との距離は近く、迅速な意思決定は比較的容易だという。とはいえトップダウンで「Domoを使ってください」というスタンスでは、現場に無視される可能性もある。そこで関係部門の理解を得るところから着手し、事業データを組み合わせるとどのようなことが分かるのかを試験的に示し、使ってもらえるような提案をするアプローチで現場に働きかけた。ところが、この試みは失敗に終わる。Domoの有効性は認めてもらえたものの、事業部視点では単なるサンプルデータの可視化にすぎず、実際の活用イメージを描くことが難しかったのだ。

 そこで方針を変え、現場のキーパーソンにDomoのファンになってもらい、そのファンを増やすことに注力することにした。現場には課題意識を持った人たちが多い。データドリブンにも意欲的だ。そうした人たちを地道に探し、ファン化するのだ。サポートも、ファンになってくれた人たちが自身の所属部門に対してDomoの活用を提案できるように方向性を改めた。

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