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» 2019年01月17日 11時40分 公開

イノベーター列伝:研究開発の原点は、未来の理想像を描き、そこから逆算すること――マクロミル 原 申氏 (1/2)

新市場の創造を目指す挑戦者を紹介します。

[BRAND PRESS]
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(このコンテンツはBRAND PRESS連載「イノベーター列伝」からの転載です)

 市場の常識を変えるような華々しいプロダクトやサービスが日々メディアに取り上げられる今日。その裏では、無数の挑戦や試行錯誤があったはずです。「イノベーター列伝」では、既存市場の競争軸を変える挑戦、新しい習慣を根付かせるような試み、新たなカテゴリーの創出に取り組む「イノベーター」のストーリーに迫ります。今回は、インターネットを活用したリサーチやマーケティングなどのサービスで業績を伸ばしているマクロミル。同社のイノベーションをけん引するR&D本部では、AIやニューロ技術を活用した最先端のマーケティング手法を研究開発しています。その陣頭指揮を執るR&D本部長、原申氏に、短期的な収益に結び付きにくい「研究開発」という分野をビジネスとして継続させていく手法について聞きました。

イノベーション精神と「強迫観念」

 学生時代はほとんど勉強をしていなかったのですが、マーケティングには面白さを感じて比較的深くのめり込んでいました。就職について考えたとき、流通業ならマーケティングの結果がダイレクトで見える・体感できると思い、百貨店に入社しました。その中でも忙しい売場なら、新人でも最初からある程度裁量を持って大きな仕事ができるのではないかというのもあって、最も過酷だといわれていた1階の婦人雑貨売場への配属を希望しました。そこは百貨店自身がマーチャンダイジングからバイイングまで全て決めていた、いわゆる「平場(ひらば)」といわれる自主編集売場だっ

たんですが、年に10件以上催事があったり、取扱いアイテム点数も多かったのでとにかく忙しい毎日でした。同期入社の仲間は「そんなに仕事をやらされてキツくない?」って感じだったんですが、自分の裁量でいろいろなことを経験できたので楽しかったですし、とても勉強になりました。

原申
マクロミル執行役員R&D本部長。新卒で百貨店に入社後、2005年にマクロミルに入社。 営業、企画、人事などの部門を経て、複数の新規事業や新規サービスの立ち上げとそのグロースに従事。 現在は同社執行役員 R&D本部長とセンタン代表取締役副社長を兼任。

 もともと予想していたことではあったんですが、百貨店はやはり旧態依然としていてスピード感がない。周りの先輩と話していても、刺激を受けることが多くはありませんでした。それでも、さまざまな経験をさせてもらったおかげでビジネスの面白さに開眼し、将来は自分の好きな仲間たちと好きな環境で仕事をしたいと思うようになりました。すぐに起業することも考えたんですが、今まで事業を創りそれを大きく成長させる経験がまったくなかったので、まずは事業を創造・拡大する経験が必要ではないか。それなら、これから大きく成長しそうな会社に入って、自ら事業を興して拡大していくプロセスを実際に体感するのがいいのではないかと考えました。その条件に合致していて興味関心の高いマーケティング分野に位置する会社であるマクロミルに転職しました。

 今も変わりませんが、当時からマクロミルは個人の思いを大事するというスタンスで、できるかできないかより、どれだけやりたいかという「意思」を重視してくれる社風でした。最初は営業職で入社し、その後は営業企画や人事部など2〜3年くらいで複数の部署を経験して、その間に企業の買収・統合プロジェクトに入ったり、子会社でtoC(消費者)向けのスマートフォンアプリを開発したりするなど新規事業に自ら手を挙げてチャレンジをしていました。その後デジタルマーケティングの新しい事業を開発・運営している本社部門に戻り、そこから複数の事業をまとめる形でビジネスデベロップメント本部を創設しました。

 さまざまな事業を開発・運営していく中で、短期的に売上をメークする視点と中長期的に事業を開発する視点が往々にしてバッティングしてしまうことに気が付きました。時間とお金をある程度投資しないと、一定規模の新規事業は育ちません。しかし、既存の事業も同じ部門でマネジメントしていると、どうしてもそこでの数値目標の達成が優先されてしまい、中長期視点での研究開発や事業開発が進まない事態に陥ってしまいます。そこで研究開発・事業開発に特化する部門を作るべきだという意見を周囲に語り続けて、約2年越しでR&D本部の立ち上げに至りました。これまでいろいろな経験を積ませてもらいましたが、自分の幅を広げて変化し続けていないと不安という強迫観念みたいなものを常に感じています。世の中が常に変化している中で、これまでと同じことをやっていたら視野の狭い人間になってしまうのではという危機感を常に強く持っています。

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