脳科学の知見を応用し、顧客の本音を探る手法として注目される「ニューロマーケティング」。その概要を分かりやすく解説する。
「顧客を知る」ための方法として多くの企業で採用されているアンケートやグループインタビュー。これら従来の方法では聞くことができない消費者の本音に迫る新たな手法として「ニューロマーケティング」が注目されつつあります。その概要と実際の活用事例を紹介していきます。
顧客に合った適切なコミュニケーションを展開するために、企業は、「顧客を知る」さまざまな活動を行っています。例えば、消費者アンケートや自社会員を集めたインタビューなどがそれに当たります。
しかし、「調査をして企画を立案、実行したものの、思ったほど成果が上がらなかった……」というセリフはマーケターであれば誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
今、こうした既存手法だけではなかなか見えてこなかった消費者の本音を探るアプローチが注目されています。脳科学を活用したマーケティングであるニューロマーケティングもその1つです。
脳科学では「人は理由づけの前に、感じている」と考えます。意思決定プロセスは、自分の考えを明確に「言葉」で表現する前に始まっているというわけです。
人間は、「感じたこと」を第3者に伝える手段として、言葉を用いますが、それは完璧な情報伝達手段ではありません。言葉には大きな弱点があります。
例えば、「おいしい」「普通」「かっこいい」の定義が人それぞれ違うように、話し手も聞き手も、各々が持つ言葉のイメージを想像しながらコミュニケーションを展開しています。収集した言葉が同じであっても、その感情の定義と基準が人それぞれ異なっているのです。
さらに、あふれる思いを限られた言葉に帰結させて情報伝達するしか術がない(つまり、心情を表す言葉の選択肢が少ない)ので、話し手と聞き手の間で相互に読み間違いが起こったとしても、不思議ではありません。
「考えて言葉にした反応(タテマエ)」を拾う調査がアンケートやインタビューだとすれば、言葉にする前の感情(本音)を直接体に問うのがニューロマーケティングといえます。
ニューロマーケティングとは、脳科学の知識をマーケティングに応用して「人の行動の理由」を理解しようとするアプローチの総称です。さまざまなセンシングデバイスを使って、脳活動を中心とした身体状況を測定し、分析します。
当然のことではありますが、脳は24時間動き続けています。企業での施策に活用するために脳波を測るとなると、その調査は被験者にとっては「非日常」になります。ですから、非日常環境での調査がもたらすバイアス(意図していない影響)を考慮する必要があります。そのため、最近のニューロマーケティングではより日常的な環境で評価ができて機動性の良いEEG(Electroencephalograph脳波計)というデバイスが多く用いられます。このEEGは脳(表皮)から生じる電流を取得しています。下の図は取得されたローデータの一例です。
取得したローデータから「覚醒度」「感情値」の2軸を算出して、刺激に対する脳反応を理解するのが現在のニューロマーケティングの主流です。
感情値 | ポジティブ/ネガティブ |
---|---|
覚醒度 | 集中している/集中していない |
その他 | 聴覚刺激/視覚刺激 |
ただ、その脳波の解釈は、データを読み解く脳科学者の知見に依存する点には注意する必要があります。読む人が変われば解釈も異なる場合があるのです。それくらい脳波の解釈は難しいということでもあり、「ニューロマーケティングに独自で取り組んでみたものの、途中で頓挫してしまった」という企業が多いのも理解できます。
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