成長著しい写真/動画共有サービス「Instagram」。マーケティングに活用するには何が重要か。ソーシャルメディア研究の第一人者が解説。
今、勢いのあるソーシャルメディアといえば、米Facebook傘下の写真・動画のソーシャルネットワーキングサービス「Instagram(インスタグラム)」が真っ先に挙げられるでしょう。
2015年9月、Instagramの全世界における月間アクティブ利用者数が4億人に達したとの発表がありました。Instagramのサービス開始はちょうど5年前の2010年10月6日。日本でもすっかり定着している米Twitterの「Twitter(ツイッター)」でさえ、9年たってやっと3億200万人(2015年第1四半期の発表)ということを考えれば、スタートから5年で4億人という数字は驚異的です。また、注目すべきは直近の勢い。Instagramの3億人突破の発表は2014年12月ですから、わずか9カ月で1億人も利用者が増えたことになります。
伸び悩みが伝えられるTwitterと急成長するInstagram。勢いの差が生まれる要因はいろいろあると思いますが、1つ確実に言えるのは、利用者のネット上におけるコミュニケーション手段がテキストから視覚的なものに移りつつあるということでしょう。テキストが主で、写真がそれを補足する形から、写真や動画が主で、テキストがそれを補足する形、いわゆる「ビジュアルコミュニケーション」の時代がやってきたのです。
ビジュアルコミュニケーションというと何やら難しそうですが、実はもう既に日常的なものになっています。「Facebook」を使っている人であればピンとくると思いますが、ニュースフィードに並ぶ友達やFacebookページの投稿が写真だらけになっているのではないでしょうか。
例えば、ラーメン屋さんに入って、注文したラーメンを食べる前にスマートフォンで写真を撮ってその場でFacebookに投稿する。それを見た友達から「おいしそう」「どこの店?」「○○ラーメンね、先日私も食べたよ」などコメントが入り、ラーメンをすすりながらそれに応えるといった風景はごく当たり前になりました。
写真は文字よりもはるかに情報量が多く、インパクトも強く、会話のネタとして盛り上がりやすいのです。ここ数年のスマホとSNSの急激な普及によってビジュアルコミュニケーションは一気に加速しました。Instagramでは1日に8000万枚の写真が投稿されています。ちなみにFacebookでは、1日3億5000万枚もの写真が投稿されています。
高画質のカメラを内蔵したスマートフォンを常時持ち歩く人が増え、心に響くものがあればすぐ写真に撮って共有するという習慣が根付いた結果、写真の役割も変わってきました。かつては自分や家族の特別なイベントを記録するためのものだった写真は、今では自分の感情や状況を人と共有するコミュニケーションの道具として使われるようになったのです。
Instagramが人気を博している理由は、このような写真を取り巻く環境の変化をいち早くとらえたところにあります。Instagram以前にも写真共有サービスはありましたが、ほとんどが写真の保管場所としての機能に重きを置いており、「容量○ギガまで無料」といったところを強調していました。利用形態もモバイルよりPC Web版が中心で、どちらかというとカメラファンが好むサービスだったといえます。
一方、Instagramはモバイルに特化したサービスです。最大の特徴は「フィルタ」と呼ばれる写真編集機能。単に写真を共有するところから一歩進んで、色調や明るさを補正したり、トリミングして一部を拡大したり、気分次第でレトロやモノクロなどテイストを変えたりして投稿できるところが人気のポイントなのです。
あらかじめセットアップされた加工パターンが用意されているので、利用者はその中から好みのものを選ぶだけでよく、カメラや写真加工の知識は要りません。先ほどのラーメンの例でいえば、撮った写真を加工して、普通のラーメンもシズル感漂う特別な一品にすることができます。そして、そのプロセスにほんの数十秒しかからないので、コミュニケーションを邪魔されることもありません。
Facebookとの違いがこの部分です。Facebookで投稿する写真は既につながっている友達との会話のネタですので、必ずしもカッコよく加工する必要はありません。しかし、Instagramはコミュニケーションツールであると同時に自己表現のツールでもあります。利用者のクリエイティブ心を刺激して、表現力を発揮する場なのです。
また、投稿の際にハッシュタグ(キーワードの頭に#をつけて検索をしやすくするためのタグ)を使えば世界中の人に見てもらうことも可能です。ラーメンの写真であれば「#ramen」のタグをつければ、同じタグを使う世界中のラーメン好きな人の目にとまり、「いいね!」をもらったり、コメントされたり、フォローされることもあります。ちなみに「#ramen」のタグはこの原稿の執筆時点で198万件の投稿があります。実は私も先日このタグでラーメン写真を投稿したところ、すぐに見知らぬ5人の外国人からいいね!が付き、米国の方から「Amazing!(すばらしい)」とコメントされ、3人からフォローされました。
言葉がベースのSNSではなかなかワールドワイドに交流とはいきませんが、使用言語を問わずに世界中の人と交流することができるのもInstagramの魅力です。
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