購買プロセスが複雑な法人向け商材≒BtoBの会社ではマーケティングは軽視されがちだという筆者。ではBtoB領域のマーケティング部門はどのように活動をするべきか。本稿では営業部門との関係を解説します。
マーケティングと一口にいっても、商材が個人向けか法人向けかで、活動が大きく変わります。個人向けで販売プロセスが比較的単純な商材、例えば歯磨き粉やシャンプーはCMが当たって一躍人気商品になる、なんていうことがあります。「芸能人は歯が命 」というキャッチコピーで有名なCMを覚えている人もいるでしょう。お笑いタレントがたくさん出演するネット広告で一躍ヒットしたシャンプーもあります。
しかし、販売プロセスが複雑な商材、特に法人向けの商材では、「広告で一発大ヒット」というのはなかなか望めません。法人向け商材のマーケティング活動は、個人向けのマーケティング活動より複雑で費用対効果を計測しにくいため、営業や生産部門と比べて軽視されがちな領域です。法人商材の営業は、お客さまと会って商材を納得していただき、見積もり書、請求書を提出する、という人的販売が最終的な勝負となります。法人向け≒BtoBのマーケティング活動は、営業部門のために存在するのです。つまりBtoBのマーケティングで一番大事なことは営業と「ニギって」おくことです。
ニギっておくとはどういう意味か。勘違いしないでほしいのですが、マーケティング部は営業部の従属的な存在になれ、という意味ではありません。マーケティング部にどのような働きをしてほしいか、どの商材で売り上げを立てたいか、という営業部の希望を理解し、目標を実現するために戦略的なシナリオを描くことです。つまり「営業とマーケティングがお互いに利益を得られるような関係を築くこと(≒ニギる)」が重要なのです。
具体的に説明しましょう。例えば営業の売り上げのうち、どの程度が明示的にマーケティング活動のおかげなのかを数字で測れるようにしましょう。もちろん、直接販売と間接販売の両方があり、どういう経緯で商材が売れたのか、分からない会社が多いと思います。その場合、間接販売をマネージしている営業担当者がいるはずなので、担当者とマーケティング部が「ニギって」おくことで、マーケティング活動が営業部をどの程度助けているのか、今期は前期よりマーケティングの成果は上がっているのかどうかが、測れるようになります。
営業が忙しくて電話を受けられないで困っているのなら、マーケティング部は電話がなるべく鳴らないよう、顧客の問い合わせをWebフォームに誘導すべきです。また、営業部が積極的に問い合わせの電話に応対したいようなら、Webの分かりやすい位置に電話番号を載せるとよいでしょう。その際もなるべくマーケティング部が担当した仕事かどうか、成果を測りやすくします。例えば、マーケティング部経由の問い合わせは件名をパターン化しておき、案件数のログを残して成果を測れるようにします。営業部が動きやすく、訪問先に困らないように環境を整えるのが重要です。
また、マーケティング担当者は「販促に有効な顧客成功事例取材のアポ取りを営業部がした場合、評価の対象として認めてもらえるようにする」など、営業がマーケティングを助けやすくする環境を作ることも重要です。マーケティング部は最終的に売り上げを立ててくれる営業部に感謝し、営業上の希望やフィードバックをもらい(苦情やリクエストには成功のヒントが隠れています)、競合に勝つためのポイントをつかみ、営業部が動きやすい環境作りに貢献する。このサイクルが回るようになれば、企業のマーケティング機能は改善されていくことでしょう。
BtoBの領域でマーケティング部は時に営業部の協力がうまく得られず、社内で戦っているような錯覚に陥ることもあるかもしれませんが、それは間違いです。営業部とマーケティング部は同じ船に乗る運命共同体なのですから。
※この記事はITmedia オルタナティブブログ「坂本英樹の繋いで稼ぐBtoBマーケティング」の原稿を一部修正したものです。
坂本英樹(さかもとひでき) 基盤系の外資ソフトウェア会社でネットマーケティングを担当。リード獲得の実務と裏方に日々奮闘中。案件を営業に「繋ぐ」、売り上げに結び付けて「稼ぐ」という意識(日本のマーケティングではまだまだ足りない)や活動を普及させ、さらにはマーケティングで「測れて報われる」ことを目指している。
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