ビッグデータで顧客の「気持ち」をつかむニッセン(2/2 ページ)

» 2012年03月15日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 最初のステップで取り組んだのは、アドホック分析システムのレスポンス向上だった。ユーザー数がマーケティング部門を中心に100人を超えるSASベースのアドホック分析システムでは、パフォーマンスの低下が大きな課題となっていた。SASのスキルやスクリプトなど、ニッセンでは膨大な資産を築いており、「SASの良さはそのままに、パフォーマンスを改善したかった」と横手氏。選択肢がそれほど多くない中、横手氏はTeradataの内部でSASを動かす「SAS In-Database」テクノロジーを検証した。

 Teradataの強みは、一度に大量の分析クエリが発生してもそれらを並列処理し、パフォーマンスを維持できるところにある。しかも、SAS In-Databaseテクノロジーのおかげで分析するデータを移動させる必要はなく、Teradataデータベース内で抽出・分析できる。実際のデータを使ったテストでは、10時間以上を要した分析も数分で完了するという劇的な改善結果が得られ、昨年11月からアドホック分析システムを皮切りに新システムに移行、ほかのコンタクト管理システムや定型予測分析システムも順次、SASとTeradataの組み合わせに移行していく予定だ。

 「飛躍的な改善によって分析を繰り返し、精度も向上できる」と横手氏は期待する。

新たな情報としてビッグデータを活用へ

 次のステップとしてニッセンが検討を始めたのが、ソーシャルメディアへの書き込みから顧客の気持ちを理解し、より効果的なマーケティング施策を立案していくことだ。ソーシャルメディアへの積極的な取り組みが知られている同社だが、いよいよその分析を視野に入れ始めた。

 Teradataでは、いわゆるソーシャルメディアのビッグデータを取り込む「SNSコネクタ」を提供している。Facebook APIなどを利用していったんはデータをTeradataに格納、これを野村総合研究所のテキストマイニングツール、「TRUE TELLER」で価値ある情報に変換するほか、Teradataが昨年買収によって手に入れたAster Dataの非構造化データ分析技術も活用していくという。

 横手氏は「これまでは、顧客の購買履歴のように構造化された、リレーショナルデータベースに格納できるデータしか分析対象にしてこなかったが、経営やユーザー部門から要求があれば、非構造化データも分析対象にできるようシステムを整えていきたい」と話すが、「日本語にはあいまいさがある」とマイニングの難しさも指摘する。

 第3のステップは、それまでの取り組みの総仕上げとなる。それぞれの分析システムを集約し、非構造化データという新しい情報も取り込む情報基盤の構築だが、「あくまでもユーザー部門のビジネスプランありき。IT主導では成功はおぼつかない」と横手氏は話す。

 全社員がデータにアクセスし、分析できる全社規模のデータウェアハウス構築は、さまざまな効果が期待できる。非構造化データを含む包括的なデータを分析できるだけでなく、ほかの社員や部署が行った既存の分析結果を活用することで分析の生産性が向上、さらに分析結果に基づく施策の効果なども活用してより効果的な施策を立案できる。

 この第3ステップでニッセンが目指すのも、情報や知見だけでなく、プロセスやノウハウも共有し、それによって顧客対応に一貫性を持たせることだ。ダイレクトメールや電子メールのアウトバウンド情報とコールセンターやWebサイトのインバウンド情報を連携できれば、例えば、Webサイトにアクセスしてきた顧客に電子メールできめ細かくフォローすることもできるだろう。

 さらにこれまでは主として顧客の購買データを分析対象にしてきたが、今後は「ニッセンに対する気持ち」もつかみ、ワン・ツー・ワンのマーケティングに反映できるようにしていきたいという。

 「カタログの印象と違い、返品を申し出た顧客に類似した商品をレコメンドし続けるのは顧客満足度を損なう。ビッグデータの分析からニッセンに対する顧客の支持や気持ちをつかむことで初めてワン・ツー・ワンの顧客対応が実現できる。これが目標だ」と横手氏は話す。

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