【第2回】サンダーバードプロジェクトが成功したわけビッグデータ時代を勝ち抜くマーケティングコミュニケーション(1/3 ページ)

前回はマーケティング活動におけるデータ活用を論じました。今回は、それを具現化した大手企業の事例を紹介します。

» 2011年11月25日 08時00分 公開
[折舘洋志,ビルコム株式会社]

 第1回では、マーケティングコミュニケーションにおけるデータ活用の概念について考えました。今回は、実際のプロジェクト事例を基に、現場におけるデータを用いたマーケティング施策についてお伝えしていきます。

Case Study:協和発酵キリン「THUNDERBIRDS Lab.」

 協和発酵キリンは、2008年10月に協和発酵工業とキリンファーマが合併して誕生した製薬会社です。新会社設立に伴い、新しい会社名の認知度やブランド力の向上を図ることが課題になっていました。

 2010年は「社名認知」及び、協和発酵キリンが製薬会社であるという「業態認知」の向上を目的としたプロジェクトに取り組みました。そして2011年に手掛けたのが、より具体的な同社の強みである「抗体医薬」の認知率向上、そして「抗体医薬といえば協和発酵キリン」という想起率の向上を目的とした「THUNDERBIRDS Lab.」プロジェクトです。

 「抗体医薬」は医療専門用語で、まだ一般の人には馴染みがありません。その言葉に対して同社がターゲットとしている40〜50代のビジネスパーソンの興味喚起を図るため、60年代に人気を博したテレビ番組「サンダーバード」のキャラクターを活用、「楽しみながら抗体医薬を学ぶ」というコンセプトの下にプロジェクトを展開しました。

 このプロジェクトでは、ウェブサイト(オウンドメディア)を中心として、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア、各種Webサイトへの広告出稿・PRによる記事掲載(サードパーティメディア)を横断的に活用したトリプルメディア戦略を敷き、幅広くリーチを図っていきました。さらに、施策実行中にはデータ分析で得られたファクトを基に、細かなPDCAを実現しながら、コミュニケーションプランの最適化を図っていました。

 その結果、「抗体医薬」の認知率向上、「抗体医薬といえば協和発酵キリン」という想起率の向上という当初の目的を達成することができたのです。

 以下では、本プロジェクトにおける具体的な取り組みについて見ていきます。

「THUNDERBIRDS Lab.」のサイト

トリプルメディア戦略とは

 本プロジェクトの肝となるトリプルメディア戦略とは、(1)広告・PRによる記事掲載などを中心とした「サードパーティメディア(Third Party Media)」で広くこの施策の認知〜集客を図り、(2)「ソーシャルメディア(Social Media)」で消費者との結びつきを深め(ファン化・評判形成)、(3)自社サイトのような「オウンドメディア(Owned Media)」で企業が伝えたいメッセージを伝えていく、という考え方です。成功に向けては各メディアの役割や予算の配分がポイントとなります。

 今回は、予算が限られている中で最大限の効果を図るために、オウンドメディアやソーシャルメディアの活性化を重視し、主にデジタル領域でのプランニングを採用することになりました。

 この施策では、抗体医薬について楽しく学べる場としてオフィシャルサイトを開設。また、オフィシャルサイトへの誘導およびサンダーバードに対するエンゲージメント構築を図る場として、ソーシャルメディア(FacebookページとTwitter、YouTube)を活用しました。オフィシャルサイトへの誘導を目的に、PRによる記事掲載や補足的なWebメディアへの広告出稿も行いました。

 トリプルメディアを活用する上では、それぞれのメディアがどのような機能を果たしているのかを定量的に把握して、PDCAを回していく必要があります。そこで、私たちはまず具体的な指標を設定・分類し、指標の構造化を図りました。具体的には、最終指標(KGI)に「抗体医薬」の認知率と「抗体医薬といえば協和発酵キリン」と想起率を設定し、さらに、PDCAをまわすために必要な中間指標(KPI)にはオフィシャルサイトのユニークユーザー(UU)数、各メディアからのトラフィック流入数、各メディアにおける消費者とのエンゲージメント率などを設定しました。

トリプルメディア戦略の概要 トリプルメディア戦略の概要
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