クエやサンマの梅酒も試す!? 発想を広げたことが成長のカギ――中野BC・中野幸治さん(後編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(4/6 ページ)

» 2010年11月12日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

研究所での技術の蓄積がカギ

 さて、イノベーティブな経営陣と、理念を体現した社員たちによる非連続・現状否定型の経営が行われたとしても、「果たして市場規模が2倍になる間に売り上げが25倍になるということが可能なのだろうか」と思われる人も多いだろう。

 その疑問を解消する鍵は、中野BCの食品化学研究所(リサーチセンター)にあるようだ。ビジネスにおいては、市場のニーズやウォンツをキャッチしてから商品化するまでの経営速度が決め手になるのは言うまでもないが、中野BCの強さの一端はまさにここにある。すなわち、研究所における技術の蓄積があるからこそ、すぐに市場のニーズやウォンツに対応できるのである。

食品化学研究所

 経営理念で「手の届きそうな夢を持ち 技術・研究・開発で世界に通じるニッチトップのモノづくりを目指す」とうたわれているように、中野BCの中核能力は“技術研究開発力”である。それは前編で見たように、社員杜氏第1号が食品化学研究所の研究員(我藤伸樹氏)だったことにも現れているだろう。

 さらに、経営理念で言う「世界に通じるニッチトップ」とは、「中野BCならではの(=独自の)、他社とは明らかに異なる(=異質な)、そして今まで存在しなかった(=新規の)」商品開発でトップに立つということである。

 少し具体的に掘り下げてみよう。例えば、市場のニーズやウォンツをキャッチすることに成功して、「次はこういう柑橘類がブームになりそうだ!」と分かったとしよう。しかし、その柑橘類を使った梅酒を、自社の商品化のポリシーに合ったレベルで、しかもタイムリーに商品化できるかどうかとなると、それはまったく別の問題になる。中野さんは言う。

 「口に入れた瞬間に、(柑橘類であれ何であれ、梅酒に入れる)素材の味わいが広がったとしても、最後には必ず梅の香りが立ち上がるような、独自でほかにはない技術を弊社では開発しています。また、梅酒を飲むと、どんな素材と合わせたものであれ、しばしば甘ったるく感じますし、甘い後味が残りがちですが、弊社ではそうならないような技術開発をしています」

 どんな素材と合わせようとも、短い期間で中野BCが求めるレベルの梅酒にすることが技術的に可能になっているようだ。同社では社員の10%が研究員で、産官学で日夜研究に励んでおり、これはその成果の一端なのだという。

 こうしたしっかりとした技術基盤があったからこそ、この5年間だけでも毎年4種類、合計20種類の新しいカクテル梅酒を商品として世に出し、成功させることができたのだろう。

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